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33.誕生
結婚式も披露宴も全て延期し、出産を優先してきたエミリオンは、遂に陣痛が始まったヴェリティを見守ることしか出来ずにおろおろしていた。
「傍に居ては駄目だろうか…?」
「これだけはご勘弁ください。初めてのことですが、とてもお見せ出来る姿でないことは想像出来ますから。」
何度もヴェリティに交渉するも、悉く拒否され、意気消沈中だ。
「お兄様、落ち着きなさいな!そんなことでどうするの!?全く、だらしない!!」
「エミリオン、出産は命懸けなのだから、気が散るようなことがあってはならないの。
だから、あなたに出来ることは何もありません!」
グレイシアに叱られ、ファビオラにも、ぴしゃりと扇で叩かれて、エミリオンは益々いじけていた。
そんなエミリオンに寄り添うのは、やはりグラナードしか居らず、役立たずの男性陣は只管無事を祈るだけだった。
そして、陣痛から一日半、エヴァンス公爵家に産声が響き渡った。
「双子の、元気な男のお子様達です!!!」
イリスの声に、エミリオンとグラナードは手を握り合って喜んだ。
「「ヴェリティ、よくやった!」」
部屋に飛び込むと、疲れている筈のヴェリティが神々しい微笑みを浮かべている。
「ヴェリティ、大丈夫か!?」
「はい、私も赤子達も大丈夫です。抱いてあげてください。」
産湯に浸かり、真新しいお包みに包まれた赤子達は、エミリオンにそっくりな男児だった。
小さな口をぱくぱくと動かし、まるで父親に初めての挨拶をしているかのようにご機嫌な顔をしている。
「ヴェリティ、可愛いな。ありがとう、ありがとう、ヴェリティ。」
涙声のエミリオンに、ヴェリティも嬉し泣きだ。
エミリオンから赤子を受け取ったファビオラやグラナードも目に涙が滲み、グレイシアに至っては大泣きしている。
その場に集まったベンジャミンやファーガソンやクレシアを始めとする使用人達も、邸全体がこの赤子の誕生を心から祝っていた。
「ヴェリティ、名前、これでどうかな?」
さらさらと紙に書いたエミリオンは、ヴェリティに見せた。
そこには、『幸せを繋ぐ』という意味のシェノン、『絆』という意味のリアンと書いてあった。
二人併せて『幸せを繋ぐ絆』という名前は、家族に恵まれなかったヴェリティと、そんなヴェリティを丸ごと受け入れたエヴァンス公爵家にぴったりだった。
「素敵ですね。とても良い名前だと思います。」
ヴェリティは、エミリオンのセンスに感心しながら、シェノンとリアンを抱き締めた。
今までもエヴァンス公爵家の一員として尊重されてきたと思っていたヴェリティではあるが、すやすやと眠る双子達は、確かに幸せを繋ぐ絆となったのだ。
(私の家族…本当の…エミリオン様、私を家族にしてくれて、ありがとうございます。)
ヴェリティは、幸せに包まれながら、喜ぶ皆を見ていた。
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