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9.婚約破棄 ①
しおりを挟むバルコニーの一件から七日。
遂に、婚約破棄の場が設けられた。
私と、テオナルド・チカプリオン伯爵令息、ジェニファ・ポペス侯爵令嬢、それにお互いの両親が応接間に集まった。
流石に、クリストファー殿下が最初から同席するのはおかしいだろうと、隣の部屋に控えてもらった。
クリストファー殿下は、少し残念そうだったが、いざという時は直ぐに行くと笑った。
話し合いの口火を切ったのは、私の父ディーゼルだ。
「チカプリオン伯爵令息、我が娘リーチェと婚約していながら、いや婚約前から、そちらのポペス侯爵令嬢と不貞関係にあったことを認めるな?」
「不貞というか…親しくしていたことは事実です。」
テオナルドは真っ白な顔で認めた。
「ならば、そちら有責の婚約破棄で良いな?」
「ちょっとお待ちください!確かに息子はポペス侯爵令嬢と親しくしていましたが、貴族の令息にはよくあることです。婚約破棄までは、如何なものかと!!」
チカプリオン伯爵は、父に喰ってかかる。
「結婚して三年、子に恵まれないのであれば、愛妾を迎える貴族も珍しくはない。しかし、結婚前から他の令嬢と関係を持つことは、チカプリオン伯爵家では当たり前なのか?このヴァーミリアン侯爵家に婿入りする分際で?我が家も舐められたものだな。」
「しかし、これは両家を繋ぐ政略結婚ではないですか!多少は大目に見ていただいても…」
喰い下がるチカプリオン伯爵を見る父の目は、冷たいどころか氷点下だ。
「先程から、チカプリオン伯爵は随分と傲慢だな。正直、そちらとの政略結婚など、我がヴァーミリアン侯爵家には何のメリットもない!」
「そ、そんな!でしたら何故!?」
「令息の顔よ?」
母が突然話に割って入る。
「はっ!?」
「だから、顔!あなたの息子って顔だけは、まあまあ良いじゃない?でも、それだけだったわ。」
「ふざけないでください!息子の将来がかかっているのです!パーティでは、バルコニーで有らぬ姿を皆に露呈し、もう既に、息子の先行きは不安だらけです!!その責任は如何なさるおつもりですか!?」
真っ赤になって叫ぶチカプリオン伯爵に、私は殆呆れた。
「全部、テオナルド様の所業ですわ。ポペス侯爵令嬢と親しくしたいからと、私への嫌がらせ、無実の罪を着せたこと、その他諸々、何一つ謝罪もありませんし。」
「息子が何を…?」
「あら、それ、今聞きます?私、記憶力は物凄く良いのですが?」
「リーチェ嬢、是非聞かせてもらえないだろうか。恥ずかしながら、私は娘がこんなことになるまで、何も知らなかった。事実が分からないままでは、謝罪も出来ない。」
真っ青なテオナルドとジェニファに対し、ポペス侯爵は冷静に受け止めたようだ。
隣の夫人も、言葉は発しないが真摯に受け止めようという姿勢が見受けられる。
何故、この両親からジェニファが生まれたのか、疑問に思う程に。
しかし、私は最後までやり切る気持ちは変えない。
それだけのことをされたのだ。
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