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10.婚約破棄 ②
しおりを挟むポペス侯爵と夫人は、チカプリオン伯爵とは違うようだと認識し、私は今までテオナルドとジェニファにされてきたことを話すことにした。
「テオナルド様には、ちんちくりんなブスと言われ、口付けたら口が臭いという噂を流されましたわ。」
「ぶぉほっっっ!!!」
落ち着こうとしてお茶を口に含んだであろう父が、テオナルドに向かって噴射した。
「それから、体の関係を持ったら、あそこがゆるゆるで、締まりがないと。あ、念の為に申し上げておきますが、テオナルド様に体を許したことはございません。指先に触れたり、口付けすら、一度もしたこともありません。これでも、結婚には夢を抱いておりまして、憧れの初夜みたいなものも思い描いていましたので。」
ふふふと、私は笑って見せる。
「リ、リーチェがやらしてくれないからジェニファとっ!」
ポペス侯爵の眉間に深い皺が刻まれた。
「でも、それだけではないでしょう?
そちらのジェニファ様と一緒にパーティでもやらかしてくださったじゃないですか。
私のエスコートはしない、
お二人はダンスを三回続けて見せ付ける、
取り巻きの令嬢や令息達と私のドレスにワインをかけて笑い者にする、
または自分でかけておいて被害者ぶる、
安物のアクセサリーを私のバッグに潜ませて皆の前で泥棒扱いする、
勝手に転んだジェニファ様を私が突き飛ばしたことにもなっていましたよね?」
「リーチェ嬢、もう…結構です…申し訳ありません…」
ポペス侯爵は、私を制するが、まだまだ私の気は済まない。
「あら、もう宜しいのですか?ここからが嫌がらせの醍醐味ですわ!私、階段から突き落とされそうになったり、我が家の侍女が片手で裁けそうな弱々な刺客に刺されそうになったり、馬車に細工されたり、命の危険もございましたのよ?」
そこで父はティーカップをテオナルドに投げ付けた。
「お前、斬られたいのか!?今から私刑にしてやっても気が済まん!うちの娘がお前に何をしたというのだ!!潰れそうな家に資金提供したのは、お前の顔が良かっただけだ。リーチェを大切にするだけでも足りないのに、虐げ、命まで脅かすは何事だ!?」
額にティーカップが当たり、テオナルドは少し流血している。
目には涙が滲んでいた。
「申し訳ありません。私と妻は、バルコニーで大恥をかかされたとしか娘に聞いておりませんでした…娘がリーチェ嬢にこのようなことをしていたとは露程も知らず…誠に申し訳ございません。」
ポペス侯爵と夫人は、深々と頭を下げた。
そして、この場の空気を読んだチカプリオン夫人も、それに続く。
しかし、チカプリオン伯爵だけは未だに不満げな顔だ。
「確かに、まさかここまでとは…私も今知ったことには愕然としております。だが、あのパーティの夜についてだけは、バルコニーでは寒さに震えるジェニファ嬢を後ろから包み、温めていただけでは?未婚の男女ではありますが、バルコニーで話す位はよくあること…」
「そ、そうだ。あの夜は、ジェニファと話し込んでいたら、体が冷えてしまって…リーチェ嬢が急に驚かしたから、転んで有らぬ姿を曝す羽目になったんだ!!あの時の証人とかいう人物だって、今日は来ていないじゃないか!そう、リーチェの言うことは嘘なんだ!!」
必死に場を取り繕うテオナルド。
(あーあ、やっちゃったな、こいつ…)
カチャリ…
そう思った瞬間、あの人は部屋に入って来た。
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