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11.婚約破棄 ③
しおりを挟む「あの夜の証人とは私のことかな?」
「「「「「「クリストファー第三皇子殿下!!!」」」」」」
チカプリオン伯爵家、ポペス侯爵家の全員が一斉に叫んだ。
「何で!?殿下だったのか、あそこに居たのは?」
「そうなの。たまたまだけど。」
慌てるテオナルドに、私はしれっと微笑む。
「チカプリオン伯爵には気の毒だが、テオナルド令息とジェニファ令嬢は、確かに体を繋げて腰を振っていたぞ?ド派手に達した場面を見せられて、私も驚いたよ。リーチェ嬢の嫌がらせや暗殺計画に加え、嘘吐き呼ばわりする私への不敬罪も追加するか?」
氷のように冷たい微笑みのクリストファー殿下に、チカプリオン伯爵も遂に認めざるを得ない。
「申し訳ございませんでした…婚約破棄を受け入れます。」
クリストファー殿下の登場で、父は何度目かの正気に戻る。
「慰謝料は、チカプリオン伯爵家とポペス侯爵家の双方に請求するということで良いですかな?」
「娘の仕出かしたことの責任は、取らせていただきます。」
ポペス侯爵は即答した。
「チカプリオン伯爵家としても、その気持ちはありますが…しかし、我が家にはそこまでの資産が…」
「チカプリオン伯爵家は、牧場をお持ちだそうだが?」
「はい。馬と羊が…あんなもので宜しいのでしょうか…?」
「無論、それだけではないが、牧場も含めての慰謝料でも構わないという話だ。」
「そうしていただけますと助かります。息子の処遇は、如何致しましょう…」
チカプリオン伯爵は、これでもまだテオナルドを守りたいのだろう。
「テオナルド様、ジェニファ様。」
私が二人に声を掛けると、びくっと体を弾ませた。
「私、まだお二人から謝罪の言葉を聞いておりませんが?それに、お二人が愛し合っているのなら、何故そう仰いませんでしたの?私、テオナルド様には全く気持ちはありませんでしたので、婚約解消という道があったのに…」
「僕はリーチェが好きだった!でも、触れることも出来なくて…だから、ジェニファと…ジェニファが最初近寄って来たんだ!」
「ちょっと、待ってよ!声を掛けてきたのは、テオナルド様よ?私のことを好きだって、愛しているって言ったじゃない!?」
「嘘だっ!ジェニファから!!」
くだらない痴話喧嘩が勃発した瞬間、私は言った。
「そういうのは、お二人でどうぞ。私は、無実の罪をチカプリオン伯爵家とポペス侯爵家の名で訂正し、慰謝料をいただけましたら、それでいいですわ。この後、お二人がご結婚なさろうと別れようと、私は一切興味がございません。」
「重ね重ね申し訳ありません。チカプリオン伯爵家としまして、慰謝料は後日お届けに参ります。我が家の財政を考慮していただき、ありがとうございます。テオナルドにつきましては、嫡男ではありませんので、ポペス侯爵家様が引き受けてくださるようでしたら、婿に出したいと思います。」
「チカプリオン伯爵、それはまた別の日に話そう。この場は謝罪を受け入れていただいたことに感謝し、リーチェ嬢の名誉の回復を先に考えなければ。ヴァーミリアン侯爵殿、この件は私に預けていただきたい。」
「承知した。ひと月だ。ひと月経ってもリーチェの名誉が回復しない時は…ポペス侯爵殿も娘を持つ父として、分かるだろう?」
「はい、娘の所業は親の責任でございます。逆の立場も理解出来ます。この程度でお許しいただけること、感謝しかございません。今この場にいらっしゃるクリストファー殿下には、本日の証人にもなっていただければと。」
「いいだろう。その言葉、忘れるな。」
クリストファー殿下は、にやりと笑った。
そして、力なく項垂れたテオナルドと、まだ不満げな顔をしていたジェニファを、その親達は引き摺って帰って行った。
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