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13.求婚
しおりを挟む応接間にクリストファー殿下と二人きりになった私は、急に恥ずかしくなってきた。
クリストファー殿下に握られた手がぬるりとしてきて、手汗が気になって仕方ない。
「リーチェ、どうした?」
(リ、リーチェって!?呼び捨て!)
動揺する私を見透かしたように、クリストファー殿下は更に強く手を握る。
「リーチェ?」
「手、手汗がっ!!」
叫んで手を振り払う私を、クリストファー殿下は抱き寄せる。
「リーチェ、手汗すら愛おしい。」
私の手を取り、手のひらをぺろりと舐める。
「ひ、ひぃぃぃっ!へ、変態!!」
身を捩れば捩る程、クリストファー殿下は距離を詰めてくる。
「殿下、ち、近いっ!てか、手のひら、舐めないでーーーっ!!」
やっと手のひらから唇を離したクリストファー殿下は、更に強く抱き締め、耳元で囁く。
「リーチェ、改めて言わせて?君が好きだ。俺と結婚してください。」
(手のひら舐めからの求婚て!?)
「はいぃぃっ!?」
「ありがとう。必ず幸せにする。」
(いやいや、良いお顔で笑ってるけど、違う、今のは承諾の『はい』じゃない!)
「リーチェ、俺のリーチェ。君は何て愛らしいんだ。奇想天外なのにナイーヴで、不思議な人だ。もう俺は、君に夢中なんだ。今直ぐ、リーチェの全てを奪ってしまいたいけど、結婚式や初夜への憧れは叶えてあげたいから、我慢するよ。その代わり、口付けてもいいか?」
真紅の瞳に熱が篭り、クリストファー殿下の本気が伝わる。
「嫌なら突き飛ばして?いいなら目を閉じて。」
近付く視線に、私は口から心臓が飛び出す勢いで緊張し、思わず目と口をぎゅっと結んだ。
「ああ、リーチェ…」
クリストファー殿下の柔らかい唇が私のそれに重なる。
ふわふわと、時に吸い付くように、ちゅっちゅと唇を伝う。
時折、んっと漏れるクリストファー殿下の声に私は昇天しそうだ。
あまりに長く唇が触れているので、恐々と目を開けると、クリストファー殿下は目を閉じて………いなかった。
「で、殿下、何で目開いてるんですか!?」
クリストファー殿下は、くつくつと笑っている。
「リーチェ、気になるの、そこ?俺、勢いで進めてしまったから、今、一世一代の大仕事位の気持ちで、改めて求婚してるんだけどなぁ。だから、リーチェの表情を一瞬でも見逃したくない。でも、俺も凄く緊張してる。ほら、心臓が破裂しそうにドキドキしてるんだぞ?」
そっと耳を当てると、クリストファー殿下も鼓動が早い。
「ほんとだ…殿下はいつも余裕があるから、もしかしたら…揶揄われているのかもって思ってました…」
「ねぇ、リーチェ、こっち見て?これが揶揄ってる男の顔に見える?さっきから顔が熱くて仕方ないんだ。」
顔を上げた先には、顔だけでなく、耳や首元まで真っ赤なクリストファー殿下が居る。
「あ…真っ赤…殿下、可愛い…」
「もう、君は!揶揄うなよ!!」
再び重なる唇は、何度も角度を変え、深い口付けとなる。
口の端から捩じ込まれた舌は、執拗に絡み、吸われる。
それは、熱くて甘くて、私の頭はくらくらし、意識がぶっ飛んだ。
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