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16.名誉回復 ①
しおりを挟む婚約破棄の話し合いからひと月。
父が約束させた期限がやって来た。
ちょうどポペス侯爵家から夜会の招待状が届いていたので、両親とクリストファー殿下と四人で参加することにしていた。
「出先でも、リーチェについての話を耳にすることがあった。以前の醜聞と言える話は私の耳には入れないよう、噂していたのだろうが、今回はリーチェの婚約破棄に対する擁護が多かったように思う。ポペス侯爵もチカプリオン伯爵も、リーチェの名誉挽回に動いてくれていたようだ。今日の夜会が仕上げになるというメッセージだと、私は考えている。」
「私もお父様の仰る通りだと思います。」
「あとは、テオナルドとジェニファだな。テオナルドはリーチェに想いを残していそうだし、ジェニファに至っては反省しているかも疑問だ。」
「奴がリーチェに想いを残していても、もう夫は俺なので!」
(殿下、俺って言ってるぅー!しかも、夫!!)
堂々と言い切るクリストファー殿下に、私はハラハラする。
「いや、殿下は証人として同行するのは当たり前だが、まだ結婚を公表するには早くないか?それこそリーチェの不貞が疑われかねん。」
「リーチェの不貞などと言い出したら、俺が調べさせた報告書を会場にばら撒きますよ。」
「殿下、怖っ!!」
「あら、リーチェ、夫になる人は、この位じゃないといけませんわよ。お父様だって、本当は怒らせたら怖いのよ?」
母は笑うが、話し合いの場で既に父の気性は理解している。
今度何かあったら、本当に斬りそうだ。
現にタキシードの胸元がいつもより膨らんでいる。
きっと短剣を潜ませているのだろう。
決して、父は筋肉巨乳ではない。
「取り敢えず、相手の出方を見ましょう。今日ですっきり終われば、もう振り返りたくないもの。テオナルドもジェニファも、さっさと記憶から消して、忘れたいだけなの。」
「リーチェ、心配は要らないさ。皆が居るから大丈夫だ。さあ、行こうか。」
「「「はい!」」」
こうして、私達はポペス侯爵家に乗り込んで行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ポペス侯爵邸に到着すると、侯爵と夫人が丁寧に出迎えた。
「ヴァーミリアン侯爵家の皆様、クリストファー殿下、ようこそいらっしゃいました。本日はご足労いただきまして、ありがとうございます。さあ、中へどうぞ。」
「招待ありがとう。我々の期待する状況に持って行けたのかな?今日はその為だけに参ったのだ。」
「手を尽くして、リーチェお嬢様の名誉回復に努めて参ったつもりです。後程、チカプリオン伯爵令息とジェニファの婚約発表の際に、これまでの謝罪をこの場でさせていただきたく思います。ジェニファにつきましては、修道院へ送ることも考えましたが、我が家も子は一人。誠心誠意お詫びし、ポペス侯爵家の一員として、真っ当な人間として生きていくと誓わせました。どうか、これでお手打ちにしていただけないでしょうか。」
「実際に、この目で見てからにしよう。」
「もちろんです。」
父は多くを語らず、状況を見るようだ。
勿論、私もそれに異論はない。
寧ろ、クリストファー殿下の報告書をばら撒かずに済むといいなと思っていた。
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