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27.晩餐会 ②
しおりを挟む「クリストファーが結婚して、家族が集う初めての顔合わせになるな。分かっているとは思うが、皇后のビオレータ、第一皇子のカリスト、第二皇子のコンラートだ。」
ミスリム陛下の紹介で、改めてじっくり観察すると、カリスト殿下やコンラート殿下は、クリストファー殿下によく似ている。
(陛下の血、濃いなあー!それに皇后陛下、綺麗な方だわ。殿下達、皆、黒髪赤眼だ。)
ビオレータ皇后陛下は、銀髪翠眼で、儚げな美しさと、凜とした気品の両方を持ち合わせた佇まいだ。
「私共ヴァーミリアン侯爵家は、私ディーゼル、
妻のエリザベス、娘のリーチェ、そして娘婿になっていただいたクリストファー殿下です。」
「義父上、もう殿下はおやめください。」
「いや、あっ、そ、そうだな。ク、クリストファー。」
ぐだぐだな自己紹介の後、陛下や皇后陛下と母は、それはそれは和やかに食事をしながら会話している。
実は母は、コミュニケーション・オバケなのだ。
そして、父もワインにほろ酔いなのか、表情が和らいできた。
私とクリストファー殿下に至っては、黙々と美味しいお料理を堪能していた。
「ヴァーミリアン侯爵令嬢、クリストファーみたいな面白味のない男と結婚て、どうなんだ?」
早食いなのか、食事を平らげたコンラート殿下が、突然声を掛けてきた。
(面白味のない男って!?どういうつもりなのかしら?でも、言い方次第で不敬罪になりかねないわね…)
私が考えを巡らせていると、クリストファー殿下がしれっと答えた。
「第二皇子殿下、ご心配なく。リーチェとは上手くやっていますから。」
「私は、ヴァーミリアン侯爵令嬢に聞いたのだが?クリストファーが率先して話すのも珍しいな。」
私は、コンラート殿下の質問の意図が掴めないまま、にこやかに言い放った。
「クリストファー殿下に面白味がなくても、私が面白いから良いのです!クリストファー殿下を笑わせられるのは、私だけですから。」
「はっ!?」
驚くコンラート殿下に、陛下が笑い出す。
「クククッ、コンラート、心配は要らぬ。ヴァーミリアン侯爵家では、クリストファーは大笑いする位に楽しく過ごしているよ。この前、こっそり見に行ったのだ。」
「そうなのか、安心したよ。」
カリスト殿下は穏やかに笑う。
(あれ?クリストファー殿下って、他の皇子殿下達と交流がなくて、『不遇の皇子』じゃなかったっけ?)
きょとんとしている私に、クリストファーは気付いたようだ。
「リーチェ、人は俺のことを『要らない子』『不遇の皇子』『冷血皇子』と好き勝手に呼ぶんだ。
でも、ここに居る家族に粗末に扱われたことはないぞ?
単に面白いことがないから、笑わなかっただけだ。」
今度は、両陛下と皇子達が驚く。
「そなたは、つまらないから笑わなかったのだと!?」
「まあ、そんなとこです。」
「「「「………………」」」」
「それに、私は庶子ですから、皇子殿下達との争い事の種にはなりたくなかったし。
そもそも皇帝の器でもないから、皇位継承権も興味がないし。
ただ私に取り入ってこようとする悪い芽は、さっさと摘んでおくに限りますからね。
だから『要らない子』とか『不遇の皇子』とか『冷血皇子』と言われても、こちらの良いように利用させてもらってました。」
陛下は、クリストファー殿下と父の顔を交互に見た。
「だから、ヴァーミリアン侯爵が、クリストファーは、私の立場も親としての気持ちも充分理解して生きてきたのだと言ったのだな。
ヴァーミリアン侯爵家の、というかリーチェの騒動あった時も、クリストファーが貴族の在り方や存続の可否まで心を砕いていて、こんな孝行息子は、なかなか居ないと。」
父は真っ直ぐに陛下を見て言う。
「そうでございますよ、陛下。うちの婿は、皇帝になる欲はありませんが『家族』を守る行動力と心意気は持ち合わせているのです。」
周りが皆、頭の回転が早いのか、なるほどといった顔をしている。
「あれ…?面白味の話から、感動の息子秘話になった…?」
思った瞬間、父が怒鳴る。
「リーチェ、お前は、また思ったことが直ぐに口から出てる!!この阿呆がっ!!!」
「あっ…ごめんなさい…」
「あはははっ、リーチェらしくていいよ!あはははははっっっ!!」
大笑いするクリストファー殿下に、両陛下と皇子達が驚き、微笑む。
「これのことか。面白いというのは。」
「素直なんだか、阿呆なんだか分からないが、確かに面白い令嬢だな。」
「クリストファーが大笑いするなんて…良い子に巡り会えて安心したわ。」
カリスト殿下、コンラート殿下だけでなく、皇后陛下まで喜んでいる。
「クリストファー殿下、寂しい子ども時代ではなかったのですね。良かったです。」
私が顔を覗き込むと、クリストファー殿下も笑う。
「まあな。高位貴族のうるさい奴らは面倒だったけど、陛下達は別に俺を無視した訳じゃない。俺が引いていただけさ。」
「これからは、私が毎日笑わせてあげます。」
「ああ、楽しみにしてるよ。」
クリストファー殿下は、にんまり笑った。
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