28 / 61
28.晩餐会 ③
しおりを挟む「おい、二人の世界を作るでない。」
父のディーゼルに言われて、私は赤面する。
「ヴァーミリアン侯爵、良いではないですか。私、安心しましたわ。クリストファーの本当の母ではなくても、この子のことが心配でしたの。でも、リーチェと話すクリストファーは、本当に幸せそうで。良かったわ。」
ビオレータ皇后は、涙ぐんでいる。
「母上、すみません。
母上も兄上達も、別に嫌っていた訳でもありませんでした。
陛下もお忙しい中、母の命日は一緒に過ごしてくださいましたし。
それだけでも、嬉しかったのです。
ただ、幼い頃から近寄って来る不穏分子が多過ぎて、離宮でひっそり暮らす方が楽だったのが事実です。
命こそ狙われませんでしたが、反逆に利用されかねない状態でした。
私こそ、何も告げずに『家族』という存在を、自ら遠去けてしまっていたようです。
これからは侯爵家の一員という身分になりますが、リーチェとたまに遊びに来てもいいですか?」
「私を……母上と…呼んでくれるの…?」
「はい。母上は、私の実の母にも優しく接してくださいましたし。他のことは忘れても、あの記憶は今も鮮明に残っています。兄上達も、コンラート殿下がリーチェを虐めなければ、兄上と呼ばせてください。」
「い、虐めた訳ではない!私もお前が心配で…
顔や利権で寄って来た女ならば、排除せねばと…」
「コンラートは、素直じゃないからな。
でも、排除したいというその気持ちは本当だ。
私も、クリストファーと交流したい気持ちはあったが、周りが煩くて今一歩踏み出せなくて、すまない。」
結局は、お互いを思い遣る気持ちが、交差するタイミングを逃していただけなのだろうと、私は思った。
見た目だけでなく、心まで美しいビオレータ皇后、ちょっと捻くれてるけど弟思いのコンラート殿下、穏やかなカリスト殿下。
そんな『家族』をあたたかい目で見つめる陛下。
「クリストファー様、良かったですね、皆様のお気持ちが分かって。」
「名前で呼んでくれたの、初めてだな。」
テーブルの下で、そっと手を握ると、クリストファー殿下が耳まで赤くなる。
「ちょっ、今、そこ!?」
「うん、そこ。嬉しい。」
そんなクリストファー殿下に、一同唖然とする。
「クリストファー、そなたの嬉しいの基準がよく分からん…」
「リーチェで回るクリストファーの世界…」
陛下やカリスト殿下が呟くと、一同笑いに溢れる。
「リーチェ、今度はお茶会に招待したいわ。結婚式のお話も聞きたいし。」
「是非!」
「俺も行く!!」
「だめっ!お茶会は女性の社交よ?」
「クリストファーは、リーチェに首っ丈なのね。いいわよ、一緒にいらっしゃい。息子と嫁との初めてのお茶会もいいわね。」
「「はい!」」
こうして、晩餐会は和気藹々と終わった。
私は、最初の緊張が嘘のように楽しく過ごせたし、クリストファー殿下も笑顔だった。
私が当たり前に過ごしてきた家族との団欒。
それは、クリストファー殿下にとっては初めての機会だった。
そう思うと、私はクリストファー殿下を笑顔にする役割りを、生涯果たしてみせるぞと意気込むのだった。
890
あなたにおすすめの小説
(完)なにも死ぬことないでしょう?
青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。
悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。
若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。
『亭主、元気で留守がいい』ということを。
だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。
ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。
昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)
青空一夏
恋愛
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。
けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。
マルガレータ様は実家に帰られる際、
「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。
信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!!
でも、それは見事に裏切られて・・・・・・
ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。
エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。
元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる