【完結・外伝更新】 「貴様との婚約は破棄する」から始まった私達

紬あおい

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28.晩餐会 ③

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「おい、二人の世界を作るでない。」

父のディーゼルに言われて、私は赤面する。

「ヴァーミリアン侯爵、良いではないですか。私、安心しましたわ。クリストファーの本当の母ではなくても、この子のことが心配でしたの。でも、リーチェと話すクリストファーは、本当に幸せそうで。良かったわ。」

ビオレータ皇后は、涙ぐんでいる。

「母上、すみません。
母上も兄上達も、別に嫌っていた訳でもありませんでした。
陛下もお忙しい中、母の命日は一緒に過ごしてくださいましたし。
それだけでも、嬉しかったのです。
ただ、幼い頃から近寄って来る不穏分子が多過ぎて、離宮でひっそり暮らす方が楽だったのが事実です。
命こそ狙われませんでしたが、反逆に利用されかねない状態でした。
私こそ、何も告げずに『家族』という存在を、自ら遠去けてしまっていたようです。
これからは侯爵家の一員という身分になりますが、リーチェとたまに遊びに来てもいいですか?」

「私を……母上と…呼んでくれるの…?」

「はい。母上は、私の実の母にも優しく接してくださいましたし。他のことは忘れても、あの記憶は今も鮮明に残っています。兄上達も、コンラート殿下がリーチェを虐めなければ、兄上と呼ばせてください。」

「い、虐めた訳ではない!私もお前が心配で…
顔や利権で寄って来た女ならば、排除せねばと…」

「コンラートは、素直じゃないからな。
でも、排除したいというその気持ちは本当だ。
私も、クリストファーと交流したい気持ちはあったが、周りが煩くて今一歩踏み出せなくて、すまない。」

結局は、お互いを思い遣る気持ちが、交差するタイミングを逃していただけなのだろうと、私は思った。
見た目だけでなく、心まで美しいビオレータ皇后、ちょっと捻くれてるけど弟思いのコンラート殿下、穏やかなカリスト殿下。
そんな『家族』をあたたかい目で見つめる陛下。

「クリストファー様、良かったですね、皆様のお気持ちが分かって。」

「名前で呼んでくれたの、初めてだな。」

テーブルの下で、そっと手を握ると、クリストファー殿下が耳まで赤くなる。

「ちょっ、今、そこ!?」

「うん、そこ。嬉しい。」

そんなクリストファー殿下に、一同唖然とする。

「クリストファー、そなたの嬉しいの基準がよく分からん…」

「リーチェで回るクリストファーの世界…」

陛下やカリスト殿下が呟くと、一同笑いに溢れる。

「リーチェ、今度はお茶会に招待したいわ。結婚式のお話も聞きたいし。」

「是非!」

「俺も行く!!」

「だめっ!お茶会は女性の社交よ?」

「クリストファーは、リーチェに首っ丈なのね。いいわよ、一緒にいらっしゃい。息子と嫁との初めてのお茶会もいいわね。」

「「はい!」」

こうして、晩餐会は和気藹々と終わった。
私は、最初の緊張が嘘のように楽しく過ごせたし、クリストファー殿下も笑顔だった。

私が当たり前に過ごしてきた家族との団欒。
それは、クリストファー殿下にとっては初めての機会だった。
そう思うと、私はクリストファー殿下を笑顔にする役割りを、生涯果たしてみせるぞと意気込むのだった。
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