【完結・外伝更新】 「貴様との婚約は破棄する」から始まった私達

紬あおい

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34.ウェディングドレス

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私の涙と鼻水が止まった頃、先程の侍女がビオレータ皇后の元に戻って来た。

「ドレスの準備が出来たわ。一緒に行きましょう。リーチェ、もうお鼻は大丈夫?」

「ぁい…だいじょぶです。」

「リーチェ、目が腫れて視界が悪そうだから、手を繋ぐぞ。」

クリストファーは、私の手を握り、一緒に歩き出す。
そんな私達をビオレータ皇后は優しく見ていた。

そして、衣装室に入ると、ウェディングドレスが飾られていた。

「うわぁーーー!クリストファー様、見て!!」

そのウェディングドレスは、首から胸元と手首までが銀の糸で小さな花の刺繍を施し、それ以外は上質なシルクで、ウェストから裾までが緩やかに広がった上品なドレスだった。

「この刺繍のお花は金木犀キンモクセイですか?」

「あら、リーチェ、よく分かったわね。シルヴィアの好きな花だし『初恋』という花言葉もあるの。」

「素敵…私とクリストファー様も初恋よね?」

「リ、リーチェ…ちょっ、やめろ…」

クリストファーは、片手で顔を覆っているが、首や耳が真っ赤だ。

「本当に、クリストファーはリーチェに夢中なのね。この子のこんな顔が見られるなんて。」

「私、このドレスが着たいです。シルヴィア様のドレスを着させてください!」

「もちろん!シルヴィアも喜ぶと思うわ。私からはネックレスをプレゼントしてもいいかしら?クリストファーの色が入った物を贈らせて欲しいわ。いいわよね?クリストファー。」

「はい、ありがとうございます。指輪だけは二人で考えて、俺から贈りたいので譲れませんが、結婚式は二人の母上からの品を身に付けてもらいたいと思います。リーチェも、それでいい?」

「もちろん!こんな素敵なドレスも皇后陛下からのプレゼントも嬉しいです。指輪はクリストファー様と共同作業でデザインしましょう?楽しみです!」

こうして、悩みに悩んだウェディングドレスは、クリストファーの亡き母のドレスを着ることになった。
そのドレスに込められた想いを大切にして、私達は結婚式に挑むのだ。

ビオレータ皇后の懐の深さ、シルヴィア様や陛下への愛は、私には到底真似出来ない。
こんな愛の形もあるのだと、しみじみ思う。
陛下がビオレータ皇后陛下を大切にする意味が分かった。
二人の女性から愛される陛下も、また素晴らしいお人柄と深い愛をお持ちなのだろう。

「リーチェ、俺はもっと歩み寄るべきだったんだろうな…」

クリストファーも、今更ながらビオレータ皇后の想いを知ったのだろう。
穏やかな顔をしている。

「それは、今となっては何とも言えないけど、クリストファー様も幼かったんだから仕方ないわ。でも、今気付いて良かったと思うの。これから、今の気持ちを大事にしていけばいいじゃない。私も居るし!」

「そうだな。リーチェが居たから、母上の気持ちも分かったし、陛下や兄上達とも歩み寄れたのだからな。リーチェは、俺の女神だ。」

「女神は鼻水を垂らさないわよ?」

「ぷっ、んふふっ、あははは!そりゃそうだ、あの顔っ!!」

クリストファーの笑い声が皇宮のエントランスに響く。
初めて見たであろうクリストファーの笑顔に戸惑い、周りに居た侍女達がざわめくのを背にして、私は意気揚々と皇宮を出るのだった。
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