【完結】 生まれ変わってもあなたと

紬あおい

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8.夫の温もり

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あれから私とジェスターは、寝室をともにするようになった。
私が先に寝ていることが多いが、1日の終わりに、ジェスターはするっとベッドに入って来る。
抱く時もあれば、抱かない時もある。
抱かれる時は、初めての時ほど口数は多くないが、優しい気遣いに溢れている気がする。
こうして、私とジェスターは、暗黙の了解の如く『白い結婚』ではなくなった。

『愛してる』も『好き』も言わない。
達する時に『アン』と呟いているのも、たぶん気付いていない。
だから、私も何も言わない。
私の中の『仕方ないこと』が1つ増えただけ。
幸せな時間を敢えて壊すことはない。
そばで温もりを感じられるだけでも幸せだ。
そう思う程に、私はもうジェスターを愛している。

最近気になるのは、私とジェスターが夕食をともにしたり、2人で過ごす時間にアンヌマリーの発作が起こることだ。
私の存在が負担になっているのだろうか。
もしかしたら、私は邪魔者なのだろうか。
あんなに溺愛されているのに。

アンヌマリーの症状を、異能で落ち着かせることは出来るが、その度に使っていたら、私の身が保たない。
ジェスターは無理をするなと言ってくれるけど、きっとアンヌマリーを守りたいに違いない。
どうすればいいのだろう。
自分の立ち位置が分からない。

ジェスターが私に触れる度に、私の中の想いが大きくなってくる。
叶うことのない想いなのに。
ジェスターの幸せを願うなら、きっと異能を使い切ってでもアンヌマリーを治してあげた方がいいのだろう。
優しいジェスターは、強要することはないが、私ならアンヌマリーを治せると思っている筈だ。

そろそろ妖精達も何か分かったかもしれないから、確認してみなくちゃ。
女神様には会えたのだろうか。
私自身も、この中途半端な異能の正体を是非知りたい。
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