【完結】 生まれ変わってもあなたと

紬あおい

文字の大きさ
10 / 16

10.女神様の失敗

しおりを挟む

女神様は、欅の木の下に座り、申し訳なさそうに話し出した。

妖精達が話した通り、アンヌマリーは不治の病ではなく、彼女が抱えるどす黒い気持ちが瘴気となっている。
発作を耐えてでも、ジェスターのそばに居たいという気持ちを抑えられないと。

それは前世からの因縁で、前世でもアンヌマリーはジェスターに恋をしていたが、私とジェスターが恋に落ち、アンヌマリーは失意の中、自害した。
恨んで恨んで、来世は絶対にジェスターを手に入れると願いながら。

女神様は、本来そういう恨みや後悔を浄化して次に送り出すのだが、完全に浄化出来ないまま、アンヌマリーは生まれ変わってしまったそうだ。

「では、私もジェスター様もアンヌマリー様も、生まれ変わって、また出会ってしまったのですね?」

「そうなの。浄化しきれなかったことと、あなた達をまた同じ時間軸に存在させてしまったこと、それが私の失敗よ。誰か1人でも欠けていたら、こうならなかったんだけど…あなたに異能を授けたのは、これを予想していたのか、していなかったのか…それも自信ないわ。」

「私、アンヌマリー様を浄化出来ますか?ジェスター様は今世はアンヌマリー様を溺愛しています。私が身を引けば、ジェスター様は幸せになりますか?」

身を引くということは、持てる力を全て使い、命の火が消えることを意味する。
前世でジェスターと幸せだったのなら、今世は諦めてもいいと、その時は思ったのだ。

「あなたが命懸けでアンヌマリーを変えたとしても、ジェスターの気持ちは?本当にあなたを愛していないと?」

「それは…分かりません。」

「アンヌマリーはね、一度天界に戻した方がいいと思うの。あの子は、今回死なせなくていい筈のジェスターの両親を殺めた。その罰は受けなければならない。」

「人を殺めることは罪だとしても、愛することは罪なのでしょうか…そこまでの愛を私は知らない…」

「そう思うのも致し方ないわね。人間は複雑な感情を持つ生き物だから。そこで、あなたに1つ頼み事があるの。次にアンヌマリーが発作を起こしたら、全力で異能を使ってみてくれないかしら?」

「命懸け、ですね、私も。」

「前世はあなたを選んだジェスターが、今世はアンヌマリーとあなたのどちらを選ぶか?そこまでは、私にも分からないのだ。試すようで申し訳ないが、あなたは、このまま何もしない自分を許せないのでしょう?」

「そうですね…やってみます。ちなみに、私が死んだら、その後はどうなりますか?」

「あなたの求める来世を一緒に考えよう。全ては叶えられないが善処するわ。」

そうして、女神様は光とともに消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

【完結】 心だけが手に入らない 〜想い人がいるあなたは、いつか私を見てくれますか?〜

紬あおい
恋愛
完璧な夫には愛する人がいる。 心は手に入らないと分かっていても、愛することをやめられない妻。 そんな二人がいつしか心を通わせ、家族となっていくお話。

【3話完結】 数多と唯一

紬あおい
恋愛
偉そうにしていた夫が実はチョロかったお話。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...