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【フィリーネ編】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜
1.一番と二番
しおりを挟む「やっぱさぁ、一番好きな女とは結婚出来ないよな。殆どが政略結婚だしな。」
「ああ、そうかもな。でも『君が一番』とか『愛してる』はちゃんと言った方がいいと思うぞ?妻の機嫌も良くなるし、言っているうちに、真実になるかもしれないからな。特にマクレガー、お前は無神経なところがあるからな!」
「そんなっ!失礼だぞ?」
「あはははっ!!」
夫のアレクシス・クレセント公爵とその友人のマクレガー・ユグレシア公爵の会話を聞いて、私は結婚生活でのアレクシスが全て信じられなくなった。
『君が一番』や『愛してる』は自分に言い聞かせる言葉であり、義務的な言葉だったのかと、悲しみよりも虚無感が先に来た。
ラジスト侯爵家の二女だった私、フィリーネが十七歳の時、三歳年上のアレクシスと結婚して三年。
それなりに夜の生活もあるが、子どもはまだだ。
アレクシスとマクレガーの話が腑に落ちてしまったのは、アレクシスには結婚前に婚約者が居たからだ。
相手はソフィア・ダンフォード侯爵令嬢で、セルジュ第二皇子に見染められて皇子妃になった。
皇族からの申し出を断れる筈もなく、ソフィアは結婚し、アレクシスは悲しみに暮れた。
私とは、その半年後に結婚した。
どこかのパーティで、私が「あの方素敵ね」と言ったようで、父のラジスト侯爵がその翌日に、友人だったクレセント公爵に打診したそうだ。
傷心の息子を思うクレセント公爵は、すぐにアレクシスに話し「特に異論はない」と急遽この結婚が決まった。
曖昧な記憶と軽率な発言で、私はアレクシスの妻になってしまったと、ずっと思っていた。
それでも、せっかく結婚したのだから、一から関係を築いて幸せになりたかった。
輝く銀髪と紺碧の瞳で、眉目秀麗なアレクシスにどんどん心惹かれ、気付けば私の『一番』で『最愛』になっていた。
最初は頑なだったアレクシスも、結婚して一年ほど経つと『君が一番』や『愛してる』と微笑みながら抱き締めてくれるようになった。
それが嬉しくて嬉しくて、私は幸せだった。
しかしあの日、アレクシスとマクレガーにお茶を出そうと応接室のドアの前に立った瞬間、その幸せが足元から崩れていくような気持ちになった。
手が震えてお茶は出せそうになかったので、近くに居た侍女に任せた。
その夜から体調を崩してしまい、激しい頭痛と吐き気に見舞われた私は、もう十日も寝込んでいる。
一日中うとうとしながら、時折見る夢は、微笑むアレクシスに「どうせ君は『二番目』」と言われる夢だった。
泣きながら目が覚めて、夢も現実も大差ないなと思うのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アレクシスは心配して、執務が終わると毎日傍に居てくれた。
私はそれが逆につらく苦しかった。
「そのうち治りますから、別の部屋でゆっくりお休みください。」
やんわり出て行けと言っているようなものだが、アレクシスに断られた。
「何故そんなことを?夫が妻を心配して、看病をするのは当たり前だろう?」
「私に気を遣わないでください。」
「眠りながら泣いている妻を心配するなと言うのか?君を泣かせている原因は何だ?話してごらん?」
「お気になさらないでください。私の心の問題ですから。」
「どうしても話せないのか?俺はそんなに頼りない夫なのか?」
「いいえ、あなたは私の一番で最愛の夫です。でも今は、申し訳ありませんが一人にしてください。疲れてしまいました。」
私はそのまま寝た振りをし、アレクシスは無言で部屋を出て行った。
アレクシスの顔も見られなかったので、どう思われたか分からない。
この結婚が終わるなら、それも仕方ないと思った。
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