【完結】 夫の『二番目』から『唯一』になった妻 〜優しい夫が嫉妬に狂うと絶倫なんて聞いてません〜

紬あおい

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【アレクシス編】 妻の『一番』で『最愛』になった夫 〜やけっぱちで結婚したのに妻がこんなに可愛いなんて聞いてません〜

1.天国から地獄

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俺は、クレセント公爵家のアレクシス。
十九歳になったら、愛するソフィア・ダンフォード侯爵令嬢と結婚する筈だった。

ソフィアとは、俺が十八歳の時、我が家が出資している孤児院で出逢った。
父のハイナー・クレセント公爵の代理で、運営状況を確認に行った時、ボランティアで子どもの世話をしていたのがソフィアだった。

子ども達と遊ぶソフィアは、シャンパン・ゴールドを彷彿とさせる美しい髪と碧眼で、無造作に髪を束ねていた。
可憐で清らかで、彼女の周りだけあたたかな光に包まれているように見えた。

(何て美しい人なんだ…)

俺は、雷に撃たれたような衝撃を受けた。

「あのぅ、俺はアレクシス・クレセントと言います。あなたのお名前を伺っても宜しいでしょうか?」

すぐさまソフィアに話し掛けた。

「はい。私はソフィア・ダンフォードと申します。あなた様はクレセント公爵様の…」

「そうです!今日は父の代わりに参りました。何か不足している物などあれば、お申し出ください。」

「ありがとうございます。今すぐには分かりかねますので、皆さんに聞いてからご連絡差し上げますね。」

ソフィアに聞いても分からないだろうと思いつつ、何でもいいから接点が欲しかった俺は、これを機に度々ソフィアに手紙を送った。
ソフィアからも返事が来て、三回目の手紙からは日々の様子を伝える内容まで記されるようになった。

そしてある日、勇気を振り絞ってソフィアにデートを申し込んだ。
ソフィアから快諾の返事をもらった時は、天国にさえ飛んで行けそうな気持ちになった。

当日は、アクセサリーをプレゼントしたり、お洒落なレストランも予約し、食事を堪能した。
侯爵家に送る馬車の中で、気持ちを伝え、ソフィアも同じ気持ちと聞いた時、グローブを外し、そっと手を握った。
幸せだった、それだけで。

あまり贅沢を好まないソフィアとは、それ以降、カフェでお茶をしたり、街を散策したり、ほのぼのとした付き合いを続けていた。

「俺が十九歳になったら結婚してくれませんか?」

思いきってしたプロポーズを、ソフィアは顔を赤らめて承諾してくれた。

親同士も反対せず、一年待たずともソフィアは俺のものだと安心していた。
相変わらず、素手で手を繋ぐだけでも、俺の心は満たされた。
ソフィアを穢したくない、妻になれば、あんなこと、こんなこと。
ソフィアが大切だから、欲情なんて今は要らない、そう思っていた。

それから半年後、俺は地獄を見ることになった。
ソフィアが、視察に来ていたセルジュ第二皇子に見染められて、そのひと月後には、皇子妃候補になったのだ。

皇族からの申し出は皇命だ。
たかだか侯爵家が断われる筈もなく、公爵家からも異議は唱えられない。
申し訳ないと、ダンフォード侯爵は、涙ながらに俺に頭を下げた。
隣のソフィアは、青白い顔で俯いていた。
俺は、最後に少しでいいからソフィアと二人で話したいと願い出て、時間をもらった。

「ソフィア…おめでとう…でいいのかな…」

「ごめんなさい…アレクシス様…」

「仕方ない…ただ、ソフィアが幸せになることだけを祈っています。」

「ありがとうございます。アレクシス様も、どうかお幸せになってください。」

「最後に、その美しい手に口付けてもいいだろうか?」

「はい。」

そっと手を取り、指先に口付ける。
指先まで赤くなるソフィアに、俺は欲情したが必死に我慢した。
唇を離し顔を上げた瞬間、ソフィアは笑顔だった。

泣かないソフィアに、覚悟を感じ、俺の初恋は静かに終わった。



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