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【アレクシス編】 妻の『一番』で『最愛』になった夫 〜やけっぱちで結婚したのに妻がこんなに可愛いなんて聞いてません〜
5.その気持ちの名前
しおりを挟む欲望のままに抱いた初夜以降、俺は毎日のようにフィリーネを抱いた。
恥ずかしそうに身を捩るフィリーネが、だんだんと快感を拾い集め変わっていく姿を見るのが不思議であり、悦びだったりもした。
会話は少なかったかもしれないし、気の利いた言葉は言えなかったが、フィリーネは全身で応えてくれていた。
そして日中は、公爵家の執務を真面目に取り組んで、質問攻めにあう。
とにかく公爵家の役に立ちたいという意気込みに、俺は驚いていた。
「アレクシス様、この書類は初めて見ますが…」
「ああ、これは予算計画書と実績の数値を照らし合わせて、大きな差異があったら教えて欲しい。」
「大きな差異の基準は?」
「一割超えたら教えて?」
ただの令嬢とは思えない、なかなか良い視点で話が出来ることにも感心した。
地頭が良いのか、的外れな質問はしないし、同じことを何度も聞いて来ないのが好ましい。
フィリーネと執務にあたるようになり、大きく変わったのは、十時と三時にティータイムが出来たことだ。
「アレクシス様!クッキー焼きました!!」
「早起きしたと思ったら、そんなことしてたのか!?」
「はい!これならアレクシス様も食べてくださるので。はい、あーんして?」
「あーん」
気付けば、あーんしている俺。
こんなことが日々続けば、口も開けるようになるし、甘い物も好きになる。
俺の周りをチョロチョロと纏わり付く、可愛い仔犬のようなフィリーネ。
心地良いあたたかい空気で俺を包む。
胸の中がざわざわして、熱くなる。
こんな気持ち、今まで俺は知らなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その気持ちに名が付いたのは、友人のマクレガーの誕生パーティの時だ。
ソフィアと別れて廃人同様だった俺は、いつの間にか招待状すら来なくなった。
家柄や顔だけが目当てなのか、周りには令嬢達で溢れていた頃もあるが、笑わない、ダンスもしない、そもそも会話が成り立たない俺に、近付く女など居なくなって当たり前だった。
しかし、これからはそうもいかないだろうし、リハビリ程度には丁度いいとフィリーネと参加した。
友人の誕生パーティとはいえ、貴族の集まりだ。
当然、ひそひそと人の噂に上る。
そんな中、ユアン・ベーキン侯爵令息が話し掛けてきた。
「アレクシス殿、女性の好みが随分と変わりましたね?ソフィア様のような可憐な方から…ぷぷっ!」
嫌な笑みを浮かべ、舐めるようにフィリーネを見つめる。
俺は怒りを抑えられず、ユアンに向かって一歩踏み出そうとした瞬間、フィリーネが前に出た。
「アレクシス様の妻のフィリーネと申します。以後、お見知り置きを!あと、アレクシス様の好みではなく、ワタクシがアレクシス様を望んで結婚していただいたのでございます。そこは訂正させていただきますわ!!」
小さなフィリーネが堂々と言い放つと、パーティ会場には大きな歓声と拍手が鳴り響いた。
「ユアン、帰ってくれない?一応呼んだけど、俺の親友や夫人に失礼なことを言うような人間には、誕生日など祝って欲しくないし、今後も関わらないで欲しい!さあ、ユアンはお帰りだ、摘み出せ!!」
「いや、待ってくれ!謝る!!だから、今後の取り引きはっ…」
マクレガーは冷たい目で護衛に指示を出し、ユアンは引き摺られながら会場から姿を消した。
「アレクシス、フィリーネ夫人、すまない。」
「マクレガー様、お誕生日おめでとうございます!」
頭を下げるマクレガーに、フィリーネは何事もなかったように微笑んだ。
それがきっかけとなり、フィリーネの周りには友人達が集まり、引き篭もりの俺を遂に外に連れ出した勇者のように賛辞した。
少し引いて見ていた俺に、マクレガーは言った。
「素敵な女性じゃないか。羨ましいよ。」
「そうだな。俺には勿体ない位の妻だ。」
マクレガーは俺の肩を抱いて、良かったなと笑った。
もう認めよう、この気持ちを。
日々感じるあたたかさと安らぎ。
閨での熱い衝動と充足感。
フィリーネで回る日常。
妻を馬鹿にされた瞬間の沸き立つような激しい怒り。
俺、フィリーネが好きだ。
この気持ちに、恋という名前が付いた日だった。
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