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13.きっと数日間の夢
しおりを挟む「リンネ、俺とここに住まないか?」
休暇最終日の昼、食事をしながら、リースハルトは突然リンネに言った。
「うぐっ!?」
公爵家の別邸に来た日に、リンネが喜んだお肉をリースハルトがまた用意させてくれていた。
それをニコニコと頬張っていた時の爆弾発言に、リンネは喉を詰まらせた。
「リンネ!大丈夫か!!水を!」
ごくごくと水を飲み、落ち着いたところで、リンネは聞き返した。
「一緒に住むのですか?」
「そうだ。」
「何故…?」
「離れたくないから…」
リースハルトは、また口数の少ない男に戻っていた。
きっとリンネを想う気持ちも、離れ難い気持ちも本心なのだろう。
しかし、婚約も結婚もすっ飛ばして、いきなり同居というのは、リンネですら困惑する。
「リースハルト様は、世間の目はお気になさらないのですか?未婚の男女が一緒に住んだら、何を言われるか…」
リースハルトは、一瞬はっとしたが、きっぱりと言い放った。
「分かった。世間から何も言わせない状態にする。三日待ってくれ。」
「三日!?」
「そうだ。三日後の夕方、薬師部屋に迎えに行く。」
その日は、食事を済ませた後、地味な馬車でと言うリンネの希望を叶え、リースハルトは送ってくれた。
馬車の中では、リンネは疲労困憊でうとうとし、リースハルトはその寝顔を見つめ、頭を撫でていた。
そして、リンネの言った場所に馬車が停まると、リースハルトは唖然とした顔を隠せなかった。
「リンネは…ここに住んでいるのか…?」
「はい、薬師の仕事に就けたので、実家は出ております。雨風凌げて、水回りに問題がなければ、あとは寝るだけですから。」
そこは、皇宮に歩いて通える距離の一間の貸家だった。
公爵令息であるリースハルトには、外観だけでも衝撃を受けたのだろう。
しかし、クリオネア侯爵家で衣食住だけを保証されていたリンネには、自分の稼いだお金で、気兼ねなく暮らせるこの家が唯一安らげる場所だった。
仕事から戻り、自分のお金で仕入れた薬草で薬を作り、困っている人々の役に立てることがリンネの喜びだ。
「そうか…」
眉間に皺を寄せ、何か言いかける素振りをしながらも、結局何も言わずにリースハルトは帰って行った。
リンネは、馬車が見えなくなるまで見送り、暗い家へと入った。
(何か、夢のような時間だったな…お肉も美味しかったし。
リースハルト様…顔を赤くしたり、可愛かったり、ちょっと凶暴になったり、でも、優しかったなぁ。
きっとこれは、夢なのよね。
リースハルト様みたいな方が、本気で私と一緒に住みたいなんて、普通に考えたら有り得ないもの。
自白剤が切れたら、口数も少なくなったし、帰りもそうだったし。
取り敢えず、明日からまた頑張ろう。
大丈夫、今日までのことは良い想い出に出来るわ!)
この時のリンネは、リースハルトという人物を舐めていた。
リースハルトが決して普通の男ではなく、不言実行、妄執溺愛、且つ苛烈な騎士団長であることをリンネが知るのはもうすぐだ。
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