【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

文字の大きさ
14 / 53

14.騎士団長の差し入れ

しおりを挟む


昨夜、気絶するように眠ったリンネは、いつも通り、早く出勤していた。
すると、こちらもいつも通り、マルガリーテ薬師長が出勤してきた。

「薬師長、おはようございます。」

「おはよう、リンネ。この前はリースハルト卿の遣いが来て、突然リンネに三連休を取らせろって言われて驚いたわ。それで、自白剤は上手く調合出来たの?」

「はい、騎士団長様にご確認いただきました。」

「えっ…!?リースハルト卿が?」

急に目付き鋭くなったマルガリーテを見て、リンネは不自然さを感じ、リースハルトとのことは言えないと直感した。

「はい、お持ち帰りになられて、効果をご確認したと…増産が必要であれば、別途ご連絡が来るかもしれません。」

「そっ、そう、分かったわ。私も気に掛けておくわね。リンネは、三連休もしたのだから、溜まった後片付けから頼んでいいかしら?」

「お任せください!」

自分が休みだと、後片付けは山のように残っているだろうと予想していたリンネは、腕まくりをして、早速取り掛かった。

正直、リースハルトにくたくたになるまで揺さぶられたリンネには、今日は単純作業がありがたい。

しかし、作業中もリンネの頭の中は、リースハルトでいっぱいだった。

(結局、自白剤って、本当に極秘任務だったのかしら…?それに、一緒に住みたいって…それって結婚するのかな…取り敢えず、仕事しなくちゃ!!)

いろんなことが頭に浮かびながらも、下っ端薬師のリンネは、昼までに終わらせると目標を決めて、後片付けに精を出すのだった。



そして、目標を達成した昼、リンネは昼食を忘れたことに気付いた。

(朝からぼうっとしていたんだわ…まっ、昨日、お肉をいただいたし、一食抜いてもいっか!)

殆どの者が昼食で退室する中、リンネはいつも一人、ここで持参したパンを食べていた。
しかし、忘れてしまった今日は、本を読むことにした。
皇宮所有の薬草辞典は、知識の豊富なリンネにも、更なる知識を与えてくれる宝物なのだ。

コン、コン、コン

夢中で薬草辞典を読んでいると、聞き覚えのあるノックがした。

「はい!」

急いでドアを開けると、そこにはリースハルトが立っていた。

「リンネ嬢、失礼する。」

大股で入ってきた仕事モードのリースハルトは、紙に包まれた何かをリンネに突き出した。

「サンドイッチだ。」

「えっ!?」

「ぼうっと帰って行ったから、何も食べていないかもしれないと思って、買ってきた。食べろ。」

「あっ、ありがとうございます!よろしかったら、ご一緒に如何ですか?ジャスミン茶なら淹れられます。」

リースハルトは、こくりと頷き、椅子に座った。
相変わらず、打切棒ぶっきらぼうだが、耳が少し赤く染まっていた。

(やっぱり優しい…)

お茶の用意が整い、紙包みを開くと、とても一人分とは思えない量のサンドイッチが入っていた。

「もしかして、最初から一緒に食べようと思ってました?」

「この時間は、リンネしかここに居ないから。」

「何故、それをご存知で!?ずっと私を見ていたからですかねぇ?」

揶揄うようにリンネが顔を覗き込むと、リースハルトは片手で顔を覆い、そっぽを向いた。

(それってビンゴじゃん!ふふ!!)

それからは、リンネはにこにこと、リースハルトは黙々とサンドイッチを食べ、リースハルトは「また夜来る」とぼそりと呟いて、薬師部屋を後にした。

そのリースハルトの広い背中に、リンネはきゅんきゅんするのだった。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完】皇太子殿下の夜の指南役になったら、見初められました。

112
恋愛
 皇太子に閨房術を授けよとの陛下の依頼により、マリア・ライトは王宮入りした。  齢18になるという皇太子。将来、妃を迎えるにあたって、床での作法を学びたいと、わざわざマリアを召し上げた。  マリアは30歳。関係の冷え切った旦那もいる。なぜ呼ばれたのか。それは自分が子を孕めない石女だからだと思っていたのだが───

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

処理中です...