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14.騎士団長の差し入れ
しおりを挟む昨夜、気絶するように眠ったリンネは、いつも通り、早く出勤していた。
すると、こちらもいつも通り、マルガリーテ薬師長が出勤してきた。
「薬師長、おはようございます。」
「おはよう、リンネ。この前はリースハルト卿の遣いが来て、突然リンネに三連休を取らせろって言われて驚いたわ。それで、自白剤は上手く調合出来たの?」
「はい、騎士団長様にご確認いただきました。」
「えっ…!?リースハルト卿が?」
急に目付き鋭くなったマルガリーテを見て、リンネは不自然さを感じ、リースハルトとのことは言えないと直感した。
「はい、お持ち帰りになられて、効果をご確認したと…増産が必要であれば、別途ご連絡が来るかもしれません。」
「そっ、そう、分かったわ。私も気に掛けておくわね。リンネは、三連休もしたのだから、溜まった後片付けから頼んでいいかしら?」
「お任せください!」
自分が休みだと、後片付けは山のように残っているだろうと予想していたリンネは、腕まくりをして、早速取り掛かった。
正直、リースハルトにくたくたになるまで揺さぶられたリンネには、今日は単純作業がありがたい。
しかし、作業中もリンネの頭の中は、リースハルトでいっぱいだった。
(結局、自白剤って、本当に極秘任務だったのかしら…?それに、一緒に住みたいって…それって結婚するのかな…取り敢えず、仕事しなくちゃ!!)
いろんなことが頭に浮かびながらも、下っ端薬師のリンネは、昼までに終わらせると目標を決めて、後片付けに精を出すのだった。
そして、目標を達成した昼、リンネは昼食を忘れたことに気付いた。
(朝からぼうっとしていたんだわ…まっ、昨日、お肉をいただいたし、一食抜いてもいっか!)
殆どの者が昼食で退室する中、リンネはいつも一人、ここで持参したパンを食べていた。
しかし、忘れてしまった今日は、本を読むことにした。
皇宮所有の薬草辞典は、知識の豊富なリンネにも、更なる知識を与えてくれる宝物なのだ。
コン、コン、コン
夢中で薬草辞典を読んでいると、聞き覚えのあるノックがした。
「はい!」
急いでドアを開けると、そこにはリースハルトが立っていた。
「リンネ嬢、失礼する。」
大股で入ってきた仕事モードのリースハルトは、紙に包まれた何かをリンネに突き出した。
「サンドイッチだ。」
「えっ!?」
「ぼうっと帰って行ったから、何も食べていないかもしれないと思って、買ってきた。食べろ。」
「あっ、ありがとうございます!よろしかったら、ご一緒に如何ですか?ジャスミン茶なら淹れられます。」
リースハルトは、こくりと頷き、椅子に座った。
相変わらず、打切棒だが、耳が少し赤く染まっていた。
(やっぱり優しい…)
お茶の用意が整い、紙包みを開くと、とても一人分とは思えない量のサンドイッチが入っていた。
「もしかして、最初から一緒に食べようと思ってました?」
「この時間は、リンネしかここに居ないから。」
「何故、それをご存知で!?ずっと私を見ていたからですかねぇ?」
揶揄うようにリンネが顔を覗き込むと、リースハルトは片手で顔を覆い、そっぽを向いた。
(それってビンゴじゃん!ふふ!!)
それからは、リンネはにこにこと、リースハルトは黙々とサンドイッチを食べ、リースハルトは「また夜来る」とぼそりと呟いて、薬師部屋を後にした。
そのリースハルトの広い背中に、リンネはきゅんきゅんするのだった。
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