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18.女の嫉妬
それからリンネとリースハルトは、フェルディナンド公爵家の別邸で暮らし始め、今日で四日になる。
表向きは今まで通りだが、朝も夜も一緒の馬車の為、そろそろ周りが気付き始めているようだ。
「リンネ、今日は早上がり出来るように手配するから、昼に薬師部屋に迎えに行く。」
「えっ!?何か用事でも?」
「陛下と皇子殿下に会いに行く。」
それだけ告げて、リースハルトは騎士の執務室へと向かって行った。
(そう言えば、『三日では無理だったが、可及的速やかに二人の俺との結婚を陛下に認めてもらうつもり』って言ってたけど、まさか四日じゃ無理よね。ふふふっ!)
リンネはまだ、リースハルトの不言実行には気付いていなかった。
それでも、結婚が現実味を帯びて来ていることだけは、リースハルトの行動で感じていた。
そして、自分がそれを嬉しいと思える程に、リースハルトに惹かれていることも。
「さて、お昼まで頑張りますか!」
気合いを入れて、鎮痛剤の調合をしていると、マルガリーテが出勤してきた。
しかし、いつものような溌剌とした感じではなく、不機嫌そうに見えた。
「リンネ、おはよう。今、そこでリースハルト卿に言われたのだけど、今日は早上がりなの?最近休みや早上がりが多くないかしら?」
リンネは、マルガリーテの言うことに納得がいかなかった。
リンネはこの一年以上、公休以外に休みや早上がりを取ったことがない。
寧ろ、皆の後片付けは残業代すらもらっていない。
しかし、下っ端薬師のリンネは、皇宮の薬師部屋をクビになる訳にはいかない。
だから、不満など顔に出さず、謝り倒すしかない。
「申し訳ありません。騎士団長様のご命令ですので…差し支えるようでしたら、お断りいたします。」
「まあ!驚いたわ!!名前だけでも侯爵令嬢だし、断れない訳ではないと言いたいのかしら?
いいわよ、今日は!次回から、リースハルト卿の仕事は、私を通して!!」
理不尽で不機嫌なマルガリーテに、リンネはただ頭を下げて、この時間が過ぎるのを待った。
(私が思っているよりも、薬師長はリースハルト様がお気に入りだったのかしらね。これから、こういうことがいっぱいあるんだろうなぁ。リースハルト様はイケメンだから…)
いきなり現れたリースハルトは、リンネや周りを巻き込む嵐のようだ。
やっと掴んだ平穏な暮らしと、やり甲斐のある仕事への影響を考えると、リンネは自分の選択が正しいのか分からなくなる。
しかし、リースハルト自身が過去を丸ごと受け入れ一緒に居て欲しいと、リンネに求めているのだ。
あの打切棒なのに、優しくて傷付きやすいリースハルトを、きっと自分は愛し始めている。
順番も常識もすっ飛ばしてリンネに向かってくるリースハルトを、この際、思い切り受け止めてやると、この時リンネは決意したのだった。
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