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20.謁見という食事会
しおりを挟む薬師部屋を出たリースハルトは、リンネの手を掴んでずんずん歩いて行く。
そもそも歩幅が違うので、リンネは走っているも同然だった。
しかし、リンネは何も言わず着いて行った。
今リースハルトが怒っている理由を知っている。
初めて薬師部屋を訪れる前から、きっとリンネの仕事振りを見ていたのだろうと想像出来たからだ。
そして、リンネが見抜けなかったマルガリーテの本質も見抜いていたに違いない。
本人の居ないところでは『リースハルト卿』『あいつ』と親しい関係を強調していたが、いざ本人を目の前にすると、女性らしさと仕事が出来る女をアピールし、名前すら呼べない。
裏も表もないリンネとは真逆の人だった。
どこへ向かっているのかも分からず、リンネが走り疲れてふらふらになった頃、漸くリースハルトが気付いた。
「っ!?すまない、リンネ!」
「ふあぃ、だいじょうぶれすっ!ただっ、ほはぶぁがちがいますぅ。」
「全然大丈夫じゃなかったな。すまない。昼食は皇宮で準備させたから、ゆっくり食事してから謁見としよう。」
「くぉうぐぅで、おしょくじぃー!?うわぁーーー!」
「嬉しそうだな。」
リースハルトは分かりやすいリンネに、ふっと笑い、ゆっくり歩みを進めて、客間へとリンネを誘った。
そこには、既に煌びやかな皇族が揃っていた。
ザカリー皇帝、フォンティーヌ皇后、シルヴェスタ第一皇子、ジルフリード第二皇子の四人だ。
「お待たせして申し訳ありません。リンネを連れて参りました。」
(食事って、陛下達と!?聞いてない、聞いてない、聞いてない!!!)
一斉に注目を浴びたリンネは、口から飛び出そうな心臓を元に戻すことをイメージした位だ。
しかし、皇族相手にそんなことはしていられないと、精一杯のカーテシーを披露した。
「帝国の眩い太陽、皇帝陛下と皇后陛下、並びに皇子殿下にご挨拶申し上げます。
リンネ・クリオネアでございます。」
「リンネ嬢、素晴らしいカーテシーだな。頭を上げなさい。
急にすまないな。この時間しか取れなくて無理をさせた。さあ、座りなさい。」
「はい、失礼いたします。」
ザカリー皇帝は、にこやかにリンネをソファへと導いた。
「君がリースハルトの想い人のリンネ嬢か!」
「いやぁ、やっとここまで来たかっ!お兄ちゃんは嬉しいよ!!」
「誰がお兄ちゃんなのですか…殿下達、お静かにお願いいたします。」
シルヴェスタ殿下とジルフリード殿下が嬉々としていても、リースハルトは冷静沈着仕事モードを崩さない。
「先ずは食事にしよう。リンネ嬢は牛肉が好きだとリースハルトから聞いている。好きなだけ食べるがよい。」
「あ、ありがとうございます!いただきます。」
(あれ?このお肉、フェルディナンド公爵家の別邸と同じ!?)
リンネは不思議に思いながらも、きちんと一人分を平らげた。
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