【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

文字の大きさ
25 / 55

25.辞職と送別会




リンネは、一年ちょっと勤めた薬師部屋を辞めることになり、辞表を鞄に収め出勤した。
昨夜はリースハルトに抱き潰される寸前で制し、気怠さは残るも辞表をしたためた。
辞職の理由は『一身上の都合』としたので、マルガリーテからの追及は逃れられない気がしていた。

案の定、翌朝出勤してきたマルガリーテに話すと、よくもまあそんなに文句が出るなと思う位の嫌味が炸裂した。

「大体、一年やそこらで一人前の薬師になれたとでも思っているの?
流石、クリオネア侯爵令嬢ね!リースハルト卿にも依怙贔屓されて、調子に乗ってしまったのかしら?後片付けばかりしていたくせに。」

「ご迷惑をお掛けすることになり、申し訳ございません。ただ侯爵令嬢ということは、今は関係ありません。」

リンネは只管頭を下げたが、マルガリーテの怒りは収まらない。

「迷惑掛ける程の腕前だったかしら?
まあ、いいわ。皆にも話さなければいけないし、今夜はリンネの奢りで送別会にしましょう。
お世話になった先輩方にご馳走しなさい。
店は私が予約しておくわ!」

「………はい…」

理不尽だと思いながらも、リンネは承諾した。

そして、昼休み、マルガリーテはいつも通り、人一倍早く昼食に出掛け、リンネは薬師部屋に残った。
最後だと思いながら、一人で部屋を見回していると、リースハルトが昼食持参でやって来た。

「リンネ、昼飯だ。」

「ありがとうございます。でも、あまり食欲がなくて…」

元気のないリンネに気付いたリースハルトは、心配そうに顔を覗き込んだ。

「どうした?辞表は出したのか?」

「はい…今夜は私の奢りで送別会らしいです。薬師長の勢いに、断り切れませんでした…」

リースハルトはリンネに気付かれないよう、静かにブチ切れていた。

(あの糞女、調子に乗りやがって!!)

「リンネ、金は気にしないで行って来い。帰りは、店まで迎えに行くから安心しろ。」

「でも、リースハルト様もお仕事が!」

「俺の仕事は、リンネを護ることだ。だから、気にするな。」

リンネはリースハルトが来てくれるならと、内心はホッとしたのだった。



その夜、総勢十二名がリンネの送別会に集まった。

「リンネ、辞めたら無職?お嬢様は違うわねぇ!」

「リースハルト卿をどうやってたらし込んだの?貧相な体付きかと思ってたけど?あはははっ!」

マルガリーテだけでなく、先輩薬師のカタリーゼやミルフィナにも嫌味を言われ、他の薬師達も嘲笑っているようだった。
リンネは精神的に疲れ果てていた頃、リースハルトが騎士を引き連れ、五人で乗り込んできた。

「リンネの送別会と聞いてきた。なかなか良い店じゃないか。楽しんでいるか?」

リースハルトが連れて来た騎士は、眉目秀麗な侯爵家や伯爵家の令息だった。
さっぱり分からないのはリンネだけで、薬師達は浮き足だった反応をしている。

「何だ?リンネは疲れた顔をしているな。」

「ええ…ちょっと…」

「では、リンネはこれで帰ろう。アルバート、後は頼んだぞ?」

「御意!」

リースハルトはアルバート・トドメシャス侯爵令息に声を掛け、にやりと笑った。

「団長、お任せください。さあ、薬師のお嬢様方、私達と飲みましょう!!」

「「「はい!」」」

リンネに嫌味を言っていた人々とは思えない程、皆頬を染め、アルバートを始めとする騎士達を囲んだ。
しかし、唯一マルガリーテだけは、リースハルトから目を離さなかった。

「ちょっと横暴ではございません?いきなり乱入してきて、主役を連れ去るのは。」

「俺の妻を連れ帰って何が悪いのだ?文句なら陛下に言え!」

「はあっ!?妻?」

そのままリンネはリースハルトに手を引かれ、送別会を抜け出した。
もちろん代金など払わないし、置いてきた騎士達には好きなだけタダ酒を呑めと言い含めて。


感想 5

あなたにおすすめの小説

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

4月2日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。