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28.荒れ果てた小さな村で
しおりを挟む翌日からリンネはリースハルトと温室に通い、塗り薬や咳止め、解熱剤など一般的な薬を調合し続けた。
大量の薬を作るので、力仕事はリースハルトが担当してくれており、リンネは調合に力を注ぐ日々に充実感を得ていた。
取り敢えず、まとまった量の薬と消毒薬が確保出来たので、リースハルトに連れられて、ガルディアン公爵家の領地となる小さなアグラス村を訪問することにした。
初めての配布を自分の目で確かめたいという、リンネの想いを叶える為だ。
リンネやリースハルト、護衛騎士の総勢八人が村に着くと、村長のヤンソンが出迎えてくれた。
ヤンソンの話では、村は貧しく薬を手に入れることは、とても難しい状況だと言う。
「新たに領主となったリースハルト・ガルディアンと、妻のリンネだ。リンネは薬師でもある。」
「領主様、奥様、こんな辺鄙な村に、わざわざおいでくださいまして、ありがとうございます。
今、村では腹痛を伴う熱病が流行っておりまして、大変助かります。」
リンネは少し考え、荷物の箱からいくつかの薬瓶と粉薬を取り出した。
「特に熱が高い人には、ヒキオコシを煎じた薬瓶をティースプーン一杯、症状が比較的軽めの人には、カモミールやセージをブレンドした粉薬を飲ませてください。
胃腸の炎症からの高熱や体調不良だと考えられますので。
あと食事前は必ずきれいな水で手をよく洗い、消毒薬で殺菌する習慣を身に付けさせてください。
大体の菌は手を通して口から体内に入ります。
手に付く菌は膨大な量なので、清潔にすることが一番大切です。
薬は飽く迄も事後対策、手の消毒は事前対策です。」
「なるほど…しかし、消毒薬を常備することも難しく…」
「今回は持参した物を置いていくが、今後はガルディアン公爵家から支給しよう。」
「ありがとうございます!早速、皆に薬と消毒薬を配布いたします!!」
ヤンソンに着いて行き、リンネとリースハルトや騎士達も配布作業を手伝うことにした。
護衛騎士達は、リースハルトが選んだ貧しい生まれの者達で、自身の境遇と重ねているのか、意欲的に手伝ってくれた。
「ひと通り、回れました。領主様、奥様、ありがとうございます。」
「二日程滞在するので、患者の容態が急変したら声を掛けてくれ。」
リースハルトは、騎士達に野営の準備を指示し、リンネと村を見て回ることにした。
そこは、荒れ果てた農地の閑散とした領地だった。
「リースハルト様…皆さんこんな場所で…」
「ああ…これは酷いな…土壌から考えないと農作物も無理だろう…」
リンネは記憶を辿り、昔本で読んだことを思い出した。
「さらし粉…」
「ん?さらし粉?」
「はい!土壌の浄化にも手の消毒にも有効です。」
「なるほど。これはシルヴェスタ殿下に相談し、安価で購入出来るようにしよう。
こういった価格調整は、陛下より殿下の方がお詳しいからな。」
「大量に入手出来れば、濃度を調整して使い分けが出来ますね。
私、思うんです。本来なら薬師は活躍しなくてもいいって。
薬師は病気になってからの役目ですから、皆さんが健康なら必要ないんです。」
遠くの荒地を見つめながら話すリンネの瞳に、リースハルトは静かな情熱を感じていた。
(リンネとなら何でも叶えられそうだな。)
リースハルトは、高鳴る鼓動と期待に胸を震わせていた。
ーーーーーーー
3連休が終わりますので、明日からは1日1話・毎朝6時更新となります
よろしくお願い申し上げますm(_ _)m
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