【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

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29.野営にて

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野営の準備が整い、リースハルトとリンネは騎士達と食事することにした。
干し肉を炙った物と野菜スープの簡素な食事ではあったが、一日動き回った皆には充分過ぎるメニューだった。

「奥様にこのようなお食事で申し訳ありません。」

「いえいえ、美味しくいただいています。味付けが私の好みです!お腹が満たされれば、心も満たされます。」

護衛騎士のグラッドは詫びたが、そもそも一人で荒屋あばらやに住んでいたリンネは、温かい食事だけでもご馳走だ。
リースハルトは、リンネが住んでいた貸家を思い出して、胸を痛めていた。

「グラッド、これからこういう野営の時、皆で食べる食料の質にも力を入れよう。我が妻は食いしん坊だからな。」

「ちょっ、リースハルト様!?」

「はっはっは!食いしん坊かは分かりませんが、野営に物怖じしない奥様ということは認識しました。」

リースハルトとリンネの親位の年齢のグラッドは、この新しい領主夫妻に期待をした。
本来、このような荒地に足を踏み入れる貴族など居ない。
しかし、二人は率先して行動している。

(躊躇わずに剣を振り下ろしていた苛烈な騎士団長のリースハルト卿を変えたのは、このほんわかした奥様なのだな。これから面白いことになりそうだ。)

グラッドは二人を見ながら、静かに高揚感を味わっていた。

「さあ領主様、今夜はあちらでお休みください。」

グラッドの示す方向には、キャンバステントが張ってあり、そこには簡易ベッドも準備されていた。

「ありがとう、グラッド。あなた達は?」

「私達は野営に慣れていますから大丈夫です。アランやエドワード、クリフやランダスは食事さえ与えておけば、一晩中でも辺りを巡回しますよ?」

「駄目よ!あなた達もしっかり体を休めてね?」

「我が妻は心配性か!?あまり他の男を気に掛けると…」

「奥様、私達のことはお気になさらず!まだ死にたくありません!!」

一番若そうなランダスが身震いしながら言うと、リースハルトが笑い出した。

「あはははっ、ランダスは空気を読むのが上手いな。あとは頼んだぞ。」

「「「「御意!!」」」」

リースハルトはリンネを抱えてキャンバステントへと向かった。

「あまり嫉妬させないでくれる?」

かなり真面目な顔のリースハルトに、今度はリンネが笑い出した。

「あはははっ、嫉妬なんて!リースハルト様より素敵な方は居ませんよ?
リースハルト様の部下だし、今日はたくさん働いてくださったから大切にしているのですよ?」

「分かってるが、リンネの瞳に俺以外の男が映るのは気分が良くない。」

「可愛い人ですね、リースハルト様は。」

リンネがふわりと抱き締めると、リースハルトが仕事モードを脱ぎ捨てる。

「リンネ、口付けだけ…してもいい?」

「はい。」

そっと触れる口付けを何度か交わし、リースハルトはリンネを抱き締めて眠りに就く。

(リースハルト様もお疲れだったのね。)

激しく求める夜もあれば、穏やかに眠る夜もある。
どちらもリンネには幸せな時間だ。


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