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36.家族との再会
しおりを挟む歓迎パーティは、格式高い舞踏会形式となっていて、リンネは緊張しながらリースハルトの腕にしがみ付いていた。
「リンネ、そんなにくっ付いていたいのか?クククッ!」
「こういう場は初めてなので…リースハルト様は慣れていらっしゃるの?」
「いや、護衛としてはよく来るが、正装で参加することはあまりない。堅苦しいのは好きではないからな。」
「でも、素敵ですよ?」
「惚れ直したか?リンネが良いと言ってくれるなら、たまにはこんな格好も悪くない。
リンネも美しいぞ?深紺のドレスが似合ってる。」
仕事モードのリースハルトは微笑まないが、口の端が少し上がった。
そんな些細な変化に気付くのは、きっとリンネだけだろう。
「リースハルト様のお色ですからね。今日はお揃い!」
嬉しそうに微笑むリンネに、ついリースハルトも顔が緩む。
「あら、リンネじゃない?」
そんな時、右前方からやって来たのは、母のクリオネア侯爵夫人のアルメリヤと姉のラミリアだった。
「リンネ、薬師になったらしいけど、何故ここに居るの?」
「やだ、お母様、リンネは薬師をクビになったって聞いたわ。薬師長のマルガリーテ様に。」
くすくす馬鹿にするようにラミリアが言うと、アルメリヤ夫人も同調する。
クリオネア侯爵家に居た時と全く変わらない二人に、リンネはこの後のリースハルトが心配だった。
「んっ!?ところで、そちらはフェルディナンド卿では?何故リンネと!?」
リンネばかり見ていたラミリアとアルメリヤ夫人は、睨んでいる背の高いリースハルトに気付くのが遅れ、蛇に睨まれた蛙のようになっていた。
「そなた達は、貴族の癖に官報にすら目を通さぬのだな。クリオネア侯爵にも文書で連絡してある筈だが?まあ、こんな場でいちゃもんを付けてくるその程度の頭では、文字も読めぬのであろう。」
「えっ…?」
「私とリンネは婚姻を結び、今はガルディアン公爵と公爵夫人だ。以後、口の利き方に気を付けろ。」
「そんな…リンネが?公爵夫人……」
「ガルディアン公爵家様…?」
蛇に睨まれたり、狐に摘まれたり、二人の表情がころころ変わり、リンネはだんだん可笑しくなってきた。
「そういうことですので、失礼いたしますわ。リースハルト様、殿下の元に参りましょう。」
「ちょっと待ちなさいよ!何も言わずに、どういうことなの!?」
声を荒げるアルメリヤ夫人に、リンネは淡々と言った。
「今までだって、大して言葉を交わさずにきたのですから今更ですわ。
お父様には衣食住でお世話になりましたが、お母様やお姉様に何かしていただいたことはありません。
ですから、今まで通り、いえ今まで以上にお気になさらず。」
リースハルトはリンネの腰を抱いて歩き始めた。
アルメリヤ夫人やラミリアは呆然とその後ろ姿を見つめていたが、二人の他にもマルガリーテやアンジェリーナ王女が見ていたことを、リースハルトだけは気付いていた。
(厄介な女共だな。それに王女にべったりな騎士は、それなりに腕が立ちそうな奴らだ。)
リースハルトは警戒対象を絞り、リンネを護ることにした。
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