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37.リンネの作戦
しおりを挟むその後は、意外にも大きな騒ぎはなくパーティは終わろうとしていた。
「グラッド、リンネを先に客間へ連れて行ってくれ。俺は殿下達を部屋へお連れした後に戻る。」
「承知しました。」
リンネはグラッドに連れられ、昨夜と同じ客間へと向かっていた。
その時、薬師長のマルガリーテに呼び止められた。
「リンネ、随分と出世なさったのね。まさか公爵夫人になっていたなんて驚いたわ。」
グラッドはリンネに相手にしなくていいと目で合図し、そのままリンネをエスコートしていた。
「ちょっと待ちなさい!偉くなったら元上司を無視するの!?」
マルガリーテは声を荒げながら着いて来る。
「奥様、リースハルト様と使ういつもの部屋を知られては面倒なので、その辺の部屋に一旦避難しましょう。」
小声で囁くグラッドに、リンネは従うことにし、一番近いドアを開けた。
その時、走ってきたマルガリーテにグラッド共々突き飛ばされ、部屋に押し込められた。
「あんたなんか、そこのおっさん騎士に穢されたらいいわ!」
マルガリーテは怪しげな粉袋を床に投げ付け、ドアをバタンと閉めた。
「何だ!?これはっ!!」
リンネは咄嗟に鼻や口を覆ったが、この粉が媚薬であることに気付いた。
「グラッド、すぐにこれを飲んで!!」
リンネから薬瓶を受け取ったグラッドは、躊躇わずに飲み干した。
しかし、すぐには効いてこないのか、体が熱くなるのを感じ、リンネから距離を取った。
「奥様、近寄らないでください!」
媚薬が効かないリンネは、冷静に状況を見ていた。
きっとマルガリーテはドアの外で聞き耳を立てている。
だったら、それを利用してやろうと考えた。
「グラッド、取り敢えず、ソファに座りましょう。」
テーブルを挟んで腰掛けると、リンネはグラッドに囁いた。
「媚薬でおかしくなった私達をリースハルト様に目撃させる魂胆でしょう。ちょっとお芝居に付き合ってもらいたいけど、解毒剤は効いてきたかしら?」
「はい、落ち着いてきました。では、如何致しましょう?」
リンネは悪戯っ子のように微笑んで、作戦を開始した。
しばらくして、リースハルトがリンネの待つ部屋に向かおうと歩いていたところをマルガリーテに捕まった。
「リースハルト様!」
(面倒な奴だな…リンネは大丈夫だろうか…)
「夫人なら、男性と部屋に籠っていらっしゃいますわ。ふふふっ!」
意味深な微笑みを浮かべるマルガリーテに、リースハルトは内心苛々しながらも、耳を傾ける振りをする。
「妻が、男と?」
「ええ、二人きりで。」
「案内してくれるか?」
「もちろんですわ!すぐに参りましょう!!」
嬉々として前を歩くマルガリーテに着いて行くと、部屋の中からリンネの声がした。
「ああぁん、グラッド!もう、もう、勘弁してぇーーー!!」
「いやいや、奥様、まだまだです!」
「いやん、そんなところっ!」
「ここが良いのでしょう?ほらほら!」
「あぁん、ダメ、ダメよ、そんなの!!」
マルガリーテはしたり顔でリースハルトを振り返った。
「リンネったら、やっぱり淫婦なのね!リースハルト様、あの女の正体、その目でご覧あそばせ?」
眉間に皺を寄せたリースハルトは、その部屋のドアを蹴破った。
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