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44.決裂
しおりを挟む「はっ!?どういうことだ?」
ベントレット国王は、さも不愉快だという表現を隠しもせずに、シルヴェスタ殿下に食い下がった。
「ディフェンバキア・セグイネ、心当たりがあるだろう?」
「っ!?」
「グレシャム国の南方に生息するらしいな。」
「…………」
シルヴェスタ殿下は、リンネから明かされた毒薬の症状に心当たりがあった。
今回は予め飲んでいたリンネの解毒剤のおかげで軽症で済んでいたが、周りで倒れた貴族達の症状が、以前、自分が倒れた時の様子と酷似していたのだ。
どんなに調べても、帝国内の物では調合不可能という結果しか得られず、調査だけは続けていた。
最も信頼出来るリースハルトにだけ打ち明けて。
そこで思い出したのは、リースハルトから聞いていた、まだ名も知らなかったリンネだった。
リースハルトの祖母の発作を一度の投薬で安定させ、傷薬を塗ったあの少女は、もしかしたら薬師の知識が膨大なものなのではないだろうかと、シルヴェスタ殿下は思っていた。
だから、ザカリー陛下に相談し、リースハルトに自白剤を許可したのだった。
毒薬や媚薬は、自分と同じ物を口にしてきたリースハルトには効かない。
では、自白剤ならと閃いたのだ。
仮に媚薬が効いて関係を持ったとしても、リースハルトの見目なら不満を漏らす令嬢は先ず居ない。
全てに於いて敏腕な筈のリースハルトが、リンネには声すら掛けられず、親しくなるのを待っていたら、定期的に起こる毒殺未遂事件に対処出来ない。
シルヴェスタ殿下には、まだ見ぬリンネが救世主に思えていたのかもしれないし、利用価値はあると踏んでいた。
「さて、何か言い逃れが出来るとでも?」
ベントレット国王とアンジェリーナ王女は、頭の中で計算しているだろうが、ザカリー陛下とシルヴェスタ殿下は一歩も譲る気はない。
「しかし、証拠はございませんわ。実行犯となる者も捕えられていませんし。言い掛かりはやめていただきたいわ。」
「ほう…王女は強気だが国王は顔が引き攣っているぞ?何れにしろ、そなたの国と婚姻を結ぶのは困難だな。今すぐでも帰国してもらおう。」
交渉は決別し、グレシャム国側は撤収することになった。
予定の二十日間を大幅に短縮した、たった数日の滞在だった。
いつも比較的穏やかなザカリー陛下とシルヴェスタ殿下は、今までにない強行な手段に出たので、リースハルトは驚いていた。
しかし、その行動の基になっていたのは、リンネの薬師という職務を超えた能力であることを誇りに思いつつも、惧れも感じていた。
「シルヴェスタ殿下、このまま引き下がる相手ではありませんよね?」
「だろうな。」
「監視を強化しますか?」
「内密に私の影を動かそう。すまないが、今は近衛騎士団も信頼出来かねる。リースハルト、そなた以外は。」
「では、俺も動きましょうか?」
「いや、今はリンネ夫人から目を離すな。味方に居れば心強いが、敵に奪われたら脅威となるかもしれない。リースハルトはリンネ夫人に付いていろ。」
「御意。」
どさくさに紛れてリンネを奪われてなるものかと、リースハルトは二人で温室や公爵邸に籠ることにした。
「リンネ、常に俺と同行だ。しばらくは俺やグラッド以外、誰も信じるな。」
「分かりました。」
リンネは真剣なリースハルトの表情に只ならぬ気配を感じ、深く頷いた。
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