【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

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50.密通者




それから十日後、リースハルトとリンネはザカリー陛下に呼び出され、皇宮の応接間で内密に話し合いをすることになった。

「リンネ、陛下達の為に、解毒剤の予備を持って行こう。そして、しばらくアグラス村に行き、さらし粉での土地の浄化を確認し、Langue de serpent《ラング・ドゥ・セルパン》の栽培や、カプセルの製造も手掛けられるようにしよう。
カプセルの型は、皇都の卸売業者から手に入れるか?」

「私の住んでいた貸家に戻れば、カプセルの型があります。自作ですが…」

「えっ!?そんな物まで作っていたのか?」

「はい、トウモロコシを原料にして作っていました。薬師ならその辺りも自作しますよ?ていうか、私…貸家を解約してなかった…」

「それは、グラッドに任せよう。貸家の解約とリンネの荷物を持って来させればいいか?邸には部屋はたくさんあるから、取り敢えず空いた部屋に置けばいい。」

「お願いします。」

リースハルトはグラッドに指示を出し、そのままリンネとザカリー陛下との話し合いに臨んだ。

「急にすまないな。今後のことを話しておきたい。」

陛下の神妙な面持ちに、リースハルトとリンネは背筋をぴんと伸ばした。

「以前から起こっていた毒薬の事件、どうも皇室関係者が裏で手を回していたらしい。シルヴェスタの調査で、今回のグレシャム国王とアンジェリーナ王女とも繋がっていた。」

「やはり…ジルフリード殿下、ですか?」

「っ!?」

ザカリー陛下は目を伏せて頷き、リンネはリースハルトの隣で息を詰めた。

「リースハルトは勘付いていたか…」

「以前から、ジルフリード殿下は致命症になる程の毒薬は口にしておりません。
時には、その場に居ても毒薬の入った物を手に取ることすらしませんでした。
この前も護衛として傍に居ただけで、ワインを口にしていませんよね?」

「ああ、その通りだ。しかも、リースハルトに指示を出すことを理由に、リンネ夫人にも何度も接触しようとしていたようだ。
リースハルトがリンネ夫人の傍を離れないので、上手くいかなかったようだが。」

「それはリンネを攫って、解毒剤ではなく毒薬を調合させようと企んでいるということでしょうか。」

「恐らくな。だから、シルヴェスタが言っていただろう?『リンネ夫人から目を離すな。味方に居れば心強いが、敵に奪われたら脅威となるかもしれない。』と。」

「あの辺りから、俺は何となく陛下やシルヴェスタ殿下が、ジルフリード殿下を牽制している気がしていました。」

リースハルトは、闇雲に疑っていた訳ではなく、周りの気配を感じ取っていた。

「ジルフリード殿下が…どうして…?」

リンネには訳が分からなかった。
ザカリー陛下やシルヴェスタ殿下の護衛を率先して買って出るジルフリード殿下が、まさか謀叛とも言える毒殺未遂事件の首謀者だということが。

「ジルフリードは、皇太子にもなれない、近衛騎士団長にもなれない、ましてや公爵にもなれない。
一番になれないという劣等感に苛まれている。
そのくせ、誰かを押し除けてでも一番になるという気概もない。
嫉妬に苛まれた憐れな奴なのだよ。」

「あんなに快活で、行動力もあるジルフリード殿下が…」

「シルヴェスタだけでなく、リースハルトにも嫉妬していたのだよ。
虐待されていたリースハルトを見つけて護ったのに、自分が指導した筈の剣術は、あっという間に追い越され、最愛を見つけて結婚し、今では公爵となったリースハルトにも嫉妬を感じていたのだろう。」

リンネは、人から羨ましがられる程に高貴な立場にあるジルフリード殿下の闇を見た気がした。

「ジルフリードの謀叛の証拠は揃っている。
残念だが、反逆者として注視している。」

ザカリー陛下は、苦渋の決断を口にした。



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