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51.皇命
「陛下、内乱が起こる可能性は?」
リースハルトの問いにザカリー陛下は首を振る。
「帝国内でジルフリードの影響力は微々たるものだ。寧ろ、穏やかに見えるシルヴェスタの方が人気があると見ていい。
だからこそ、ジルフリードはグレシャム国と手を組んだのだ、キーサ・フェルディナンド公爵夫人を介して。」
「あの女と…」
「大方、この帝国を乗っ取ったら、息子の能力も顧みず、ウィリアムやロナウドを重鎮に据えようとでもしたのだろう。
アンジェリーナ王女の王配となってもいいかもしれんしな。
子種位は使えるだろう。」
「陛下、殺ってしまいますか?」
自分の母や祖母を殺したと思われるキーサの名前が出ても冷静なリースハルトは、陛下の目を真っ直ぐに見た。
「それが一番手っ取り早いが、そうするには明確な証拠が足りない。
それに、結婚したリースハルトには、もう汚れ仕事はさせたくないんだ。」
「陛下のお気持ちは嬉しいですが、別に汚れませんよ?」
「んっ!?汚れ…?」
リンネは何故今汚れの話が出るのか、疑問だった。
それに気付いたザカリー陛下は、リンネに説明してくれた。
「リンネ、汚れないと言っている意味は、リースハルトは血を流さずに敵を始末するからだ。」
「っ!?申し訳ありません。益々意味が分からないです…」
「喩えば、斬られたら普通血が出るであろう?だが、リースハルトの戦い方は血が出ないのだ。」
「ーーっ!?」
「剣で一突き、心臓をだ。」
リンネはその言葉で全てを察した。
人は心臓が動いていれば血が流れる。
しかし、心臓が止まれば血液を押し出すポンプの役割をする物がなくなる。
だから、血が流れないのだ。
「リースハルトと、第二騎士団時代の者達が集まれば、正直グレシャムの王城は別の意味で無血開城となるだろう。
しかし、先程も話した通り、そうするには明確な証拠が足りない。」
「なるほど…」
リンネとしても、無用な戦いはして欲しくない。
何か良い手立てはないだろうかと考えた時、一つの策が浮かんだ。
「陛下、もう一度、グレシャム国王陛下とアンジェリーナ王女殿下を招くことは出来ますか?
その時、フェルディナンド公爵始め、調査で怪しいと思われた貴族達も集めて。
陛下とシルヴェスタ殿下にはお手数をお掛けしますが、個別に謁見して欲しいのです。」
「リンネ、どういうことだ?」
「陛下や殿下との個別の謁見で、自白剤を飲ませます。」
リースハルトが訝しげにリンネを見たが、リンネは微笑んだ。
「自白剤か!この私の目の前で全て白状させるのだな?」
「そうです。リースハルト様に効いたのならば、他の方々にも効果はあるでしょうし、その場で捕えられます。」
「はっはっは!リンネ、それは面白い!!戦わず血も流れず、牢屋行きか。」
「陛下、それを採用なさるなら、部屋も考慮しましょう。
陛下と殿下を御前にし、後ろの扉から入室し、前の扉から退出させる出船方式です。
後ろの扉からは加勢する味方を入れさせず、前の扉には信用出来て腕の立つ騎士を据えましょう。」
「防音の効いた部屋なら、騒いでも問題ないしな。何なら、怪しいと判断した瞬間に飲ませる筋肉弛緩剤もリンネに調合してもらうか。」
ザカリー陛下とリースハルトが悪い顔で笑うと、リンネは少し不安になるが、このままだと国との戦争も辞さないだろうと思うと、致し方ないことにも思えた。
「リンネ、リースハルトと三ヶ月で自白剤と筋肉弛緩剤を調合してくれ。これは皇命だ。予算は気にせんでよい。」
「承知いたしました。」
リンネは深々とお辞儀をし、リースハルトと応接間を出た。
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