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52.リースハルトの不安
しおりを挟む皇宮から出たリースハルトとリンネは、付近に誰も居ないことを確認しながら、真っ直ぐ温室に向かった。
「陛下の言った薬の材料は、ここで揃うか?」
「はい、大丈夫だと思います。
マチンは呼吸も麻痺させて、効き目が強過ぎますから、ニチニチソウを少量だけ調合すればいいかと…
あとは、今まで通りの解毒剤も量産し、カプセル剤にすれば、万が一の時も対処出来ると思います。」
リースハルトの心配を他所に、リンネは落ち着いてきた。
それは、リースハルトがいつも傍に居るからだと、リンネは自覚している。
「さっきはいろいろ驚いて不安になりましたが、何があっても、リースハルト様がいらっしゃれば、私は怖くないですよ?」
「そうか。」
リースハルトはリンネを抱き締め、そっと口付けた。
「このようなことに巻き込んで、すまない。
陛下やシルヴェスタ殿下がここまで考えて自白剤をと言ったことまで、考えが及ばなかったし、ジルフリード殿下のことも最近怪しいと思い始めたところだった。」
「謝らないで?私は、私を見つけてくださったリースハルト様に感謝しているし、もう私達は夫婦でしょう?」
「でも、俺が怖くないか?心臓を一突きにするような男だ。」
リースハルトの不安は、そこだった。
嘗て殺戮の天使と呼ばれた自分がリンネの傍に居ていいのか。
「そうする理由があったのでしょう?私だって、リースハルト様に何かあれば猛毒も調合出来るような女です。ふふふっ!」
リンネの笑顔があまりにも鮮やかで、リースハルトは一瞬息を呑んだ。
モノクロだった自分の人生を色鮮やかにしてくれたのはリンネだった。
「俺は…ジルフリード殿下さえ斬らなくてはならないかもしれない…」
自分を救い、本当の兄のように接してくれた人でもあるジルフリード殿下を捕える日が来るとは、リースハルトは想像もしていなかった。
「斬らなくて済むように、自白していただきましょう?その後は陛下とシルヴェスタ殿下のご判断にお任せするしかないですもの。」
「そうだな…俺達はやるべきことをするしかないんだよな…」
「リースハルト様、今日は私達のお家に帰りましょう?明日から調合しますわ。」
リンネは、今夜はリースハルトを甘やかしてあげたかった。
こんなに弱いところを曝け出すリースハルトを初めて見たからだ。
「美味しい物を食べて、夜は二人で。」
リースハルトは、励ましてくれていると悟り、微笑みながらリンネを横抱きにして温室を出た。
「今夜はリンネの好きな牛肉にしよう。」
「うわっ!楽しみです!!」
「あの肉は、定期的に陛下から届くから、遠慮なく食べていいぞ。
その後は、朝まで抱き潰す!!」
「はっ!?」
歩きながら宣言するリースハルトを見上げ、リンネは期待と少しの不安を胸に抱いたのだった。
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