契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい

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11.想定内と想定外

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翌日、クライスはジュリエットに会う為、再びウィンストンを訪問するが、ジュリエットは不在だった。

「侯爵、先触れは出した筈だが何故ジュリエットは不在なのだ?」

「クライス公爵令息に会うには、ドレスがとか、うんちゃらかんちゃら申して、侍女と護衛を連れて、先程出て行ってしまいまして…」

「引き留めなかったのか?私は話をしに来たのだが?」

ウィンストン侯爵は、歯切れの悪い対応で、額には何故か汗をかいている。

「では、侯爵と話そう。」

「ジュリエットとの結婚の話でしょうか?こちらとしては、一日でも早くと願っております!」

「その話だが…白紙に戻す。所詮ジュリエットとのことは口約束で、私には既に妻が居る。ジュリエットの嫁ぎ先は、他を当たってもらいたい。」

「ーーーっ!?」

「ジュリエットの噂、両親が耳にしてな。」

噂というひと言で、ウィンストン侯爵は悟ったようだった。

「そう仰られましても!クライス公爵令息以外には、もう貰い手は見つからない!!あっ………」

「全て把握していて、私に押し付けようと?」

「あっ……い、いえ……でも、ジュリエットをお気に召してくださったのは、クライス公爵令息で……」

ウィンストン侯爵の様子を見れば、クライスは如何に自分が何も知らずに、ジュリエットに入れ上げていたかを悟り、恥ずかしくなった。

「兎に角、ジュリエットとは、手さえ触れたこともない清い関係だったので、こちらとしては慰謝料すら発生しない。
寧ろ、騙されて待たされた期間の慰謝料を請求したいくらいだ。
しかし、長年の家同士の付き合いもあるので、以降関わらないと書面にて誓約すればよしとしよう。」

「そ、それではジュリエットの嫁ぎ先がっ!」

「私を最後の砦のように言わないでくれ。侯爵の躾の結果がこれなのだろう?」

「んぐっ…しかし…」

「しかしも、お菓子もない。ジュリエットを説き伏せられない時には、イグネシアス公爵家の名に於いて、全面的に抗議する。その際は厳しいと有名な修道院行きを覚悟してもらおう。」

「………承知しました…」

ウィンストン侯爵は肩を落とし、クライスを玄関先まで見送った。
一方でクライスは、何とかこのピンチを凌げたのではないかと安堵していた。

クライスにとって、これから重要なのは、ファニアを引き止めることだからだ。
二年間の契約だったとしても、ファニアとの結婚を正式なものにしておいて良かったと、クライスは思った。

しかし、物事はクライスの思う通りにはいかないもので、ファニアは着々と公爵邸を出る準備を進めていたのだった。


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