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3.夫は不満みたいです
しおりを挟む甘い新婚生活とは無縁だが、ニ年もあるし、公爵邸に慣れてもらおうとキリアンの世話を焼いた。
朝は起こすところから始まり、朝食は必ず一緒に、出掛ける時の身支度の手伝い、お見送りまで、毎日徹底して行った。
夜も、寝るまでキリアンの身の回りの世話をした。
お父様の手前、キリアンも普通に接してきていたので、不仲には見えていないようだ。
しかし、ニ人きりになると無言である。
そんな生活がひと月続いたある日の夜、ニ人の寝室でキリアンは声を荒げた。
「君は何がしたいんだ?どんなに尽くしても、俺が君を愛することはないんだぞ?無駄なことはやめろ!」
「そうは言っても、キリアン様は二年ここに居なければならないのですよね?だったら普通に暮らした方がいいのではと思いまして。お父様には普通の夫婦に見えているようですし…」
「確かにそうかもしれないが、ここまで世話を焼く必要はないだろう?」
「申し訳ありません。慣れない邸で使用人に命令しづらいかと思いまして。それに、加減が分からなくて…して欲しくないことを具体的に仰っていただけましたら、明日から控えます。あと、部屋が一緒というのがご不満でしたら、今からでも別にしますか?」
キリアンは呆れた顔をした。
「もういい。好きにしてくれ。今更別の部屋も疑われるし、このままでいい。」
「はい…」
夫の世話って難しい。
足りないと怒られるならまだしも、やり過ぎだったのか。
仲良くなるって大変だ。
でも、自分だったら、見知らぬ家に来させられて、冷たく扱われたら悲しいだろう。
だから、キリアンには快適に過ごしてもらいたかったのだがら上手く伝わらない。
これでは、ただの押し付けだ。
ただ、恋とか愛じゃなくても、お父様達の前での愛想笑いではなく、キリアンの本当の笑顔を一度でもいいから見てみたいなぁと思いながらソファで寝た。
初夜の日はキリアンがソファで寝たが、体の小さい私の方がソファにぴったりサイズだったのだ。
慣れれば快適だ。
最初はキリアンも「俺が」とソファで寝ようとしたが、体が大きいので眠れないらしく、今では何も言わなくなった。
絶対に「一緒にベッドで」と言わないキリアンに不満はない。
だって、本来なら愛する人を抱いて眠っていた筈だから。
公爵邸のソファがふかふかで良かったとは思うけど、キリアンに不満を抱くのは筋違いなのだ。
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