【完結】 他人の婚約者を夫にしてしまいました

紬あおい

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4.夫の忘れ物を届けました

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キリアンが怒ってからも、それまでと変わらない日常を過ごしていた。
あれ以来、苦情がないので、世話を焼く内容も今まで通りだ。

今朝、キリアンが出勤してから部屋に戻ると、机の上に書類があった。
大事な物だと大変なので、封筒に入れて、騎士団まで届けに行くことにした。

騎士団に行くのは、馬車の事故のお礼以来初めてだ。
しかも、今日は1人で行く。
男性が多いので、ちょっと緊張する。
取り敢えず、甘い物でも差し入れよう。
料理長がクッキーとマドレーヌはいつも常備してくれているから。

急いで騎士団に向かうと、馬車の事故の時にお世話になったゼファー卿が居た。

「ウィンストン卿、お久しぶりでございます。その節はお世話になりました。カリオン公爵家のサラです。」

「あ!キリアンの…」

「あ…はぃ…主人にこの書類を渡していただけますでしょうか?あと騎士団の皆様に差し入れです。」

おずおずと差し出す。

「キリアンに直接渡したらいいと思いますよ。ご案内します。」

あぁ嫌がるだろうな、キリアン様…
でも、ここで断るのも厄介な話になりそうな気がするので、ゼファーについて行った。

「おい!キリアン、サラ夫人がお見えだ!!」

キリアンが眉をひそめてこちらを見た。

「何の用だ?」

「あのぅ…書類をお忘れかと…あと皆さんに差し入れです。」

「あぁ、書類か…ありがとう。」

書類と差し入れを受け取り、背を向けて歩き出そうとする。

「ちょっとキリアン?冷た過ぎじゃねーの?」

「差し入れとか、気を遣っていただいて、ありがとうございます!」

「クッキーとマドレーヌじゃん!ちょうど甘い物が欲しかったところです!!」

周りが騒ぎ出す。

キリアンは知らぬ存ぜぬを貫き通すようだ。

「あっ、私急いでますので。これからも主人を宜しくお願い致します。」

挨拶だけして、騎士団を後にする。

(あれは、絶対怒ってるな。また夜は不機嫌なんだろうか。明日からは、忘れ物はない?って聞かなきゃいけないかしら。次に忘れ物を発見したら、家の者に持たせようかしら?)

マイペースなのか、気が利かないのか、自分でも分からなくなってきた。
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