女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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19. クラスメイトと海に行くというのは、それだけでもうイベント感がある

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「海?」

 声が漏れた。
 俺が見ていたのは、クラスのグループチャットだ。

『他のクラスの奴らも誘ってるんだけど』
『予定が合うやついたら来てほしい!笑』

 なにが笑やねん、と思いながら画面を眺める。
「行く!」「その日バイト・・・」と文字列が流れていく。
 そんな中、俺は…

『行く』

 その2文字を送信した。

 ◆ ◆ ◆

「いやぁ、まさかお前が来るとはなあ」
「おっくんも成長したねぇ」
「お前は俺の何なんだよ」

 苦笑いをしながら、島地にツッコミを入れる。
 だが実際、俺は成長したと思う。

「チケット貰ったわけでもないのに、裸の男女が密集する空間に自分から行くとはな…」

 確かに、最近は夏休み限定で短期のバイトに入っていて(倉庫管理なので人と触れることも少なく天職だ)軍資金に余裕はあるし、提示された日はバイトがなかった。
 それでも、これまでの俺ならきっと断っていただろう。
 俺も成長したということだ。…或いは、そう思い込みたいだけか。
 後者なら悲しすぎるので、考慮から外しておこう。

「そういや、他には誰か来てるかな…」

 俺はクラスを超えて集まった十数人を見回す。
 赤青緑紫と元来カラフルな日本人の髪の毛の中でも珍しい、夏の日差しをまぶしく反射する白銀の長髪はすぐに見つかった。
 というか、そこが人だかりになっていた。
 こうして見ると、やはり白宮さんが学年でも人気者だということを再実感させられる。
 ああなってしまえば、いくら少し仲が良いからって友人顔をして近づくほどの胆力は俺にはない。

「俺はパラソルとか立てる裏方作業に従事することにするよ」
「おっくん、なんかたまにヘタレだよねぇ…そんなんじゃ白宮さんをゲットできないぞ」
「白宮さんはどこぞの携帯獣じゃないんだぞ?」

 それに…ゲットなんて烏滸がましい。
 俺は、そんな立場には本来いない。
 世界がバグった状況に甘えるなんて、いつか元に戻ったときに落差を感じるだけだ。

「なに昼間っから黄昏た表情してんだか…ほら、行こうぜ。オレも手伝ってやっからよ」

 コミュ力の塊の一種であるところの浜場は、適当に男子を集めて力仕事に従事させるという技をやってのけた。

 ◆ ◆ ◆

 女子の方は白宮さんが取りまとめてくれたらしく、俺たちがパラソルやレジャーシートを設置し終わる頃にはもう浮き輪などの準備が終わっていた。
 結構素晴らしい協力プレイだと思う。

「いい感じの場所取れたねー、よかったよかった」

 既に全裸になった島地が、あたりを見渡しながら言った。

「だろ?男子が結構頑張ったんだよ。特に奥原が」
「あっ、おい!?」

 浜場の発言を咎めようとするも、時既に遅し。

「だよなー、こんだけまとまった場所取れたの奥原のおかげだよ」
「いる人に移動してくれるよう交渉するの、めちゃくちゃ上手かったよな」
「そうそう。なんか目上の人とか知らない人と接するの得意なんだなって思った」

 男子からの絶賛の嵐。嬉しい、嬉しいが恥ずかしい!
 なんかすごい海に来て浮かれてるようでなんか恥ずかしい!
 女子の集まりから、感心したようなため息が聞こえた気がした。
 と思うと、各々が顔を見合わせる。

「なるほど、それじゃあ大活躍してくれた奥原くんには…」

 島地がいたずらっぽい笑顔を浮かべて、人差し指をぴんと立てた。

「かわいい女の子たちに日焼け止めを塗ってもらう権利を贈呈しましょー!」
「なんかイベント始まったーッ!?」

 それもとびきり厄介そうなヤツが!
 どうなる、俺…!?
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