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28. 美少女は、どんな格好をしても美少女だ
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中心付近で設営されつつある櫓や、徐々に運営を始めたりする屋台を眺めていると、あっという間に30分が経過した。
「あっ、白宮さん来たって!行こう行こう」
島地に連れられ、待ち合わせ場所へと向かう。
…こうして後ろ姿を見ると、お尻が見えないだけでも結構落ち着くな。
背中だけならあれくらい開いてるドレスも元の世界にあったし。
いやでも、あれくらいの露出が逆にエロいまであるかもしれんな?
なんてとりとめのないことを考えながら歩いていたら、危うく通り過ぎるところだった。
「ボーッとしてんじゃねーよ」
「悪い悪い」
浜場に窘められ、俺は頭を掻いた。
「お待たせしました」
その声に振り向く。
そして――目を奪われた。
格好自体は島地とほとんど同じなのだが…
(…清楚だ)
そう思ってしまった。
慣れたとはいえ心まで染まったとは思っていなかったつもりだったが、それでも思ってしまった。
薄い桃色の布地の、シンプルな浴衣。
それが、白銀の長髪と日焼けを知らぬ白い肌に、見事なまでにマッチしている。
清楚、そして綺麗。
大胆に晒された胸も下腹部も脚も、それを引き立てているようにすら思える。
自分の価値観の中で矛盾しているはずのその観念が、ストンと腑に落ちるようだった。
「うわーめっちゃ綺麗!白宮さんすごい!!」
「ありがとうございます」
シンプルな島地の褒め言葉に、白宮さんはにこりと微笑んだ。
周りの男が二度見しそうだ。
「それじゃ、行きましょうか。ちょうど、設営もだいたい終わったみたいですしね」
そうして、俺たちはまた歩き始めた。
◆ ◆ ◆
夏祭りの会場は、さっきまでの準備中の雰囲気とは一転して、にぎやかに客を呼び込む声が響き渡っていた。
日も傾いてきて、だんだんと雰囲気が出来上がってきた感じがする。
俺たちはとりあえず綿あめやかき氷を買って、食べながら次はどこへ行こうかと考えていた。
まさに典型的な夏祭りの楽しみ方である。
「いやー、美味しいなぁ。綿あめなんて元はただの砂糖なはずなのに」
「シロップも、味が全部同じとは思えませんね」
「二人とも夢のない楽しみ方してるなぁ…」
揃って似たような感想を述べる俺と白宮さんに、島地が苦笑いする。
これでも結構テンションが上がっている状態なのだ。
「次はどこ行くー?」
「射的とか?」
「採用!」
島地の言葉に適当に返した反応が採用され、俺たちは島地に先導されて射的へと向かった。
「あれじゃない?」
島地の指した先には、少しばかり列を作っている屋台があった。
皆コルク銃を構えて商品を虎視眈々と狙っている。
列に並んでほどなくして、俺たちの順番が回ってきた。
「はい、弾5発ね」
最初に挑むのは島地と浜場の二人だ。
弾を込めて、構えて、撃つ。
「あっちゃー、外した」
「そりゃそんな直立姿勢じゃダメだろ。そこのテーブルに肘ついて構えるんだよ」
「どんな感じで?」
あれやこれやと浜場にアドバイスをしていく。俺も素人だし多分間違いだらけだが、さっきよりは安定するだろう。
再び、浜場が狙いを定めて小さなお菓子の箱に狙いを定める。
引き金を引くと、小気味良い音とともにコルク弾が発射され――見事に箱に当たった。
箱は中身の重さですぐには倒れなかったが、何度かゆらゆらと往復して、ついには観念したかのようにパタリと倒れた。
「よし!」
「それすごい!あたしも真似しよっと」
言うやいなや、島地もぐっと姿勢を低くして、見様見真似で銃を構え、撃った。
箱が倒れる音が連続して響く。
「……」
射的屋のおっさんが渋い顔をしてこちらを睨んできたので、俺はそっと顔を逸らした。
「あっ、白宮さん来たって!行こう行こう」
島地に連れられ、待ち合わせ場所へと向かう。
…こうして後ろ姿を見ると、お尻が見えないだけでも結構落ち着くな。
背中だけならあれくらい開いてるドレスも元の世界にあったし。
いやでも、あれくらいの露出が逆にエロいまであるかもしれんな?
なんてとりとめのないことを考えながら歩いていたら、危うく通り過ぎるところだった。
「ボーッとしてんじゃねーよ」
「悪い悪い」
浜場に窘められ、俺は頭を掻いた。
「お待たせしました」
その声に振り向く。
そして――目を奪われた。
格好自体は島地とほとんど同じなのだが…
(…清楚だ)
そう思ってしまった。
慣れたとはいえ心まで染まったとは思っていなかったつもりだったが、それでも思ってしまった。
薄い桃色の布地の、シンプルな浴衣。
それが、白銀の長髪と日焼けを知らぬ白い肌に、見事なまでにマッチしている。
清楚、そして綺麗。
大胆に晒された胸も下腹部も脚も、それを引き立てているようにすら思える。
自分の価値観の中で矛盾しているはずのその観念が、ストンと腑に落ちるようだった。
「うわーめっちゃ綺麗!白宮さんすごい!!」
「ありがとうございます」
シンプルな島地の褒め言葉に、白宮さんはにこりと微笑んだ。
周りの男が二度見しそうだ。
「それじゃ、行きましょうか。ちょうど、設営もだいたい終わったみたいですしね」
そうして、俺たちはまた歩き始めた。
◆ ◆ ◆
夏祭りの会場は、さっきまでの準備中の雰囲気とは一転して、にぎやかに客を呼び込む声が響き渡っていた。
日も傾いてきて、だんだんと雰囲気が出来上がってきた感じがする。
俺たちはとりあえず綿あめやかき氷を買って、食べながら次はどこへ行こうかと考えていた。
まさに典型的な夏祭りの楽しみ方である。
「いやー、美味しいなぁ。綿あめなんて元はただの砂糖なはずなのに」
「シロップも、味が全部同じとは思えませんね」
「二人とも夢のない楽しみ方してるなぁ…」
揃って似たような感想を述べる俺と白宮さんに、島地が苦笑いする。
これでも結構テンションが上がっている状態なのだ。
「次はどこ行くー?」
「射的とか?」
「採用!」
島地の言葉に適当に返した反応が採用され、俺たちは島地に先導されて射的へと向かった。
「あれじゃない?」
島地の指した先には、少しばかり列を作っている屋台があった。
皆コルク銃を構えて商品を虎視眈々と狙っている。
列に並んでほどなくして、俺たちの順番が回ってきた。
「はい、弾5発ね」
最初に挑むのは島地と浜場の二人だ。
弾を込めて、構えて、撃つ。
「あっちゃー、外した」
「そりゃそんな直立姿勢じゃダメだろ。そこのテーブルに肘ついて構えるんだよ」
「どんな感じで?」
あれやこれやと浜場にアドバイスをしていく。俺も素人だし多分間違いだらけだが、さっきよりは安定するだろう。
再び、浜場が狙いを定めて小さなお菓子の箱に狙いを定める。
引き金を引くと、小気味良い音とともにコルク弾が発射され――見事に箱に当たった。
箱は中身の重さですぐには倒れなかったが、何度かゆらゆらと往復して、ついには観念したかのようにパタリと倒れた。
「よし!」
「それすごい!あたしも真似しよっと」
言うやいなや、島地もぐっと姿勢を低くして、見様見真似で銃を構え、撃った。
箱が倒れる音が連続して響く。
「……」
射的屋のおっさんが渋い顔をしてこちらを睨んできたので、俺はそっと顔を逸らした。
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