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57. かつての自分は、お調子者だったのだ
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色とりどり(肌色がやたら多いが)の衣装を纏った視線が、俺たちに集中している。
思えば、久しく人前に出ることをやっていなかった。
当たり前だが、わりと緊張する。
まあどうせ質問に答えるだけだし…
「まず、これは何のコスプレですか?」
「ハッハッハ、我々はマッドサイエンティストだァ!日々野望を達成せんと研究に取り組んでいるッ!」
…え?
ロールプレイするんですか?
聞いてないよ?
「…すごいですね!普段はどんな研究をされていらっしゃるんですか?」
ほら、予想外過ぎて島地の質問が研究室の教授に対するインタビューになってるよ?
「え、えーっと…フハハハ!!この世界の法則すら変えてしまう偉大なる実験だ!」
「そ、そうですか…えっと、あなたはどうでしょうか?」
やべぇ、俺にもお鉢が回ってきた。
とりあえず、さっきのキャラで行くか…
「…コイツの大言壮語に惑わされるな。我々が作っているのは他愛のない薬のみだ。まったく、科学者たるもの常に冷静沈着でないといけないというのに」
「なるほどー…」
「君もこの薬を飲んでみるかい?冷静になれるぞ」
「え、遠慮しておきます…」
「ふむ、残念。ならば俺が頂こう」
俺はそう言って、赤と青を混ぜた紫色の水を口内に流し込んだ。
やはり飲めないと思っていた人が多数だったようで、観衆から驚いたような声が上がる。
「え、えぇ…あっ時間やば…、最後に一言アピールをお願いします!」
完全に俺たちのノリに飲み込まれていた島地が、慌てて司会の仕事を思い出した。
何を言うかなど全く考えていなかったので、俺は浜場のほうを向いて発言を促した。
しかし、浜場はキザったらしく人差し指を左右に振った。
「こんだけいい感じに反応させられたのはお前のお陰だよ。オレはいいから、お前からなにか言ってやれ」
「…マジかよ」
俺は少し考えて、口を開く。
「…モルモット志願者ならば、票を投じていけ。我々の研究で、最高の結果を見せてやろう」
色とりどりの試験管を掲げて、カッコつけて言ってやる。
会場からは、大きな拍手と歓声が上がった。
◆ ◆ ◆
「…で、二位か」
「あはは、不満だった?マッドサイエンティストさん」
「うるせぇやい魔女っ子」
結果、俺たちはギリギリで優勝を逃した。
まあ、一位が男キャラの高クオリティなコスプレをした女子だったことを考えると、たかだか数千円で揃えた衣装でここまでの結果を残した俺たちはよくやったものだろう。
「それで、この後はどうする?」
「この後?」
「うーん、どちらかといえば今かもしれないけど。ほら」
魔女っ子…もとい、片理さんが指した先では…
…コスプレセックスが今まさに行われようとしていた。
よく見回してみれば、他にも始めようとしている組がいるし、壁際で一人オナニーに耽る子もいる。
「コスプレって非日常だからね。みんなやりたくなっちゃうんだろうね。というわけで参加していかない?」
「…俺はパスで」
さすがに断った。
いくら慣れた俺であっても乱交パーティーは遠慮したい。
今日は見てないけど、多分白宮さんもこれが始まった時点でもう帰っているだろう。
「オレもパスで」
「あたしもパス。今日はコイツとしたい気分だから」
「おっ、いいねー。お幸せに~」
片理さんは軽く茶化して、男を見繕いにか群衆の中へと消えていった。
「よーし、今日は泊まってやっちゃいますか。オレん家、父さんも母さんも出張だし」
「いいねー、寝られなくなっても知らないよ?」
「望むところだ、明日は土曜日だからな」
家で遊ぶ約束を取り付けるように、二人はセックスの話を進める。
なんてことない、ただの日常だが――ふと、気になった。
そういえば、この二人は付き合っている。仲睦まじいし、多分うまく行っているんだろう。
この世界の性行為に、愛はそれほど関係ない。
なら、互いを好き合う者同士ならば?
「なあ、ちょっといいか…?」
「ん?どした?」
「変なお願いで悪いんだが…二人がヤッてるとこ、俺も見ていいか?」
マッドサイエンティストの役をやったからだろうか。
愛のあるセックスとは何なのかという知的好奇心が、声となって口から飛び出た。
思えば、久しく人前に出ることをやっていなかった。
当たり前だが、わりと緊張する。
まあどうせ質問に答えるだけだし…
「まず、これは何のコスプレですか?」
「ハッハッハ、我々はマッドサイエンティストだァ!日々野望を達成せんと研究に取り組んでいるッ!」
…え?
ロールプレイするんですか?
聞いてないよ?
「…すごいですね!普段はどんな研究をされていらっしゃるんですか?」
ほら、予想外過ぎて島地の質問が研究室の教授に対するインタビューになってるよ?
「え、えーっと…フハハハ!!この世界の法則すら変えてしまう偉大なる実験だ!」
「そ、そうですか…えっと、あなたはどうでしょうか?」
やべぇ、俺にもお鉢が回ってきた。
とりあえず、さっきのキャラで行くか…
「…コイツの大言壮語に惑わされるな。我々が作っているのは他愛のない薬のみだ。まったく、科学者たるもの常に冷静沈着でないといけないというのに」
「なるほどー…」
「君もこの薬を飲んでみるかい?冷静になれるぞ」
「え、遠慮しておきます…」
「ふむ、残念。ならば俺が頂こう」
俺はそう言って、赤と青を混ぜた紫色の水を口内に流し込んだ。
やはり飲めないと思っていた人が多数だったようで、観衆から驚いたような声が上がる。
「え、えぇ…あっ時間やば…、最後に一言アピールをお願いします!」
完全に俺たちのノリに飲み込まれていた島地が、慌てて司会の仕事を思い出した。
何を言うかなど全く考えていなかったので、俺は浜場のほうを向いて発言を促した。
しかし、浜場はキザったらしく人差し指を左右に振った。
「こんだけいい感じに反応させられたのはお前のお陰だよ。オレはいいから、お前からなにか言ってやれ」
「…マジかよ」
俺は少し考えて、口を開く。
「…モルモット志願者ならば、票を投じていけ。我々の研究で、最高の結果を見せてやろう」
色とりどりの試験管を掲げて、カッコつけて言ってやる。
会場からは、大きな拍手と歓声が上がった。
◆ ◆ ◆
「…で、二位か」
「あはは、不満だった?マッドサイエンティストさん」
「うるせぇやい魔女っ子」
結果、俺たちはギリギリで優勝を逃した。
まあ、一位が男キャラの高クオリティなコスプレをした女子だったことを考えると、たかだか数千円で揃えた衣装でここまでの結果を残した俺たちはよくやったものだろう。
「それで、この後はどうする?」
「この後?」
「うーん、どちらかといえば今かもしれないけど。ほら」
魔女っ子…もとい、片理さんが指した先では…
…コスプレセックスが今まさに行われようとしていた。
よく見回してみれば、他にも始めようとしている組がいるし、壁際で一人オナニーに耽る子もいる。
「コスプレって非日常だからね。みんなやりたくなっちゃうんだろうね。というわけで参加していかない?」
「…俺はパスで」
さすがに断った。
いくら慣れた俺であっても乱交パーティーは遠慮したい。
今日は見てないけど、多分白宮さんもこれが始まった時点でもう帰っているだろう。
「オレもパスで」
「あたしもパス。今日はコイツとしたい気分だから」
「おっ、いいねー。お幸せに~」
片理さんは軽く茶化して、男を見繕いにか群衆の中へと消えていった。
「よーし、今日は泊まってやっちゃいますか。オレん家、父さんも母さんも出張だし」
「いいねー、寝られなくなっても知らないよ?」
「望むところだ、明日は土曜日だからな」
家で遊ぶ約束を取り付けるように、二人はセックスの話を進める。
なんてことない、ただの日常だが――ふと、気になった。
そういえば、この二人は付き合っている。仲睦まじいし、多分うまく行っているんだろう。
この世界の性行為に、愛はそれほど関係ない。
なら、互いを好き合う者同士ならば?
「なあ、ちょっといいか…?」
「ん?どした?」
「変なお願いで悪いんだが…二人がヤッてるとこ、俺も見ていいか?」
マッドサイエンティストの役をやったからだろうか。
愛のあるセックスとは何なのかという知的好奇心が、声となって口から飛び出た。
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