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65. 文化祭っていう言葉、なんか抽象的だよな
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「…なんだよ急に」
「いや、文化祭の『文化』って範囲がデカすぎると思ってさ」
「藪から棒だな…まあでも、だから有屋祭って学校の名前がついてんだろ」
有屋祭――世間一般で言われるところの文化祭が、12月に迫っていた。
「しかし、なにも12月に入ってから文化祭やる必要もなかろうになぁ」
「一応、オープンキャンパス的なのも兼ねてるらしいよ。他の学校とは全然被らないから、集客が見込めるんだろうね」
「うわー姑息」
謂れのない疑いを学校にかけて、俺と浜場は笑いながら歩いていた。
今日から二週間、授業を午前中に短縮して文化祭の準備を放課後にやる期間となる。
…授業時間、大丈夫なんだろうか…
「しかし、奥原の案が採用されるとはなぁ」
「俺も驚いたよ」
そう、話は数日ほど前に遡る――
◆ ◆ ◆
「というわけで我々一組は、食堂権は得られませんでしたが飲食権は勝ち取りました!」
クラスはそれほど盛り上がらず、やる気のなさそうな拍手だけが響いた。
…こうなった事情については、少々説明が要る。
まず、一学年に存在する四クラスのうち、食堂をやれるのは一クラスだけである。
学年が同じフロアに存在する以上、そこにいくつも食堂を乱立させたところで互いに損だからだ。
実際、このルールができる前に食堂が乱立した結果、廃棄される食料がたくさん出てしまったらしい。
だが、何代か前の先輩は食い下がった。確か当時三年生で、来年卒業なのだから一度くらいやらせてくれ、と。
生徒の思いはわかる、しかし大量廃棄は出したくない。
結果、食料の提供は良いが食堂形式はダメという、使い所のない飲食権が誕生した。
残念ながら、結局その飲食権は使われることがないまま今に至るらしい。
当然だ、飲食物だけを提供するのはNGで、何か別のものも出さなければいけないのだから。
そんなめんどくさいこと誰もやりたがらない。
「せ、せっかくの飲食権だから、何か使える案がないかさがしてみよう?」
なんて先生も言ってるけど、大方案は出ないだろう。ぽつぽつ出る案も飲食物とは関係ないものだ。
「そ、そうだ!ブレストやってみない?その案から絞り込む感じで」
そこで、先生はブレスト…ブレインストーミングを発案した。
アイデアのクオリティに拘らず、とにかく量を出す手法だ。
俺たちは付箋を配られ、そこにアイデアを適当に記していった。
その中にあった俺のアイデア――『カジノ(プレイヤーに飲み物を出す)』が、飲食権を上手く使っているとしてたちまち祭り上げられた、という次第だ。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺たちは『CASINO H』の準備を進めていた。
命名者は俺だ。理由は『1-1』が『H』に見えたから。あとはカジノといえばイタリアな気がするので、イタリア語で『H』はなんと読むのか調べたら『アッカ』だった、という単純なものだ。
この話をして真っ先に「中二病?」とか言いやがった色葉には、いずれ乳首責めで泣くまでイカせてやろうかと思った。
まあ、もともとカジノ自体俺が考案したアイデアということもあり、すんなり受け入れられたのだが。
「で、これくらいのサイズでいいのか?」
「問題ない、このダンボールを何枚か重ねりゃ強度も確保できるだろ」
…というわけで、俺たちはホームセンターに買い出しに来ている、というわけだ。
でかいダンボールを学校まで持って帰らないといけないのはなかなかしんどい。
「ま、考案したのがお前だからな。責任取れ」
「考案するんじゃなかったわ」
そんな軽口を叩きながら、俺たちは絵の具を探しに歩を進めた。
「いや、文化祭の『文化』って範囲がデカすぎると思ってさ」
「藪から棒だな…まあでも、だから有屋祭って学校の名前がついてんだろ」
有屋祭――世間一般で言われるところの文化祭が、12月に迫っていた。
「しかし、なにも12月に入ってから文化祭やる必要もなかろうになぁ」
「一応、オープンキャンパス的なのも兼ねてるらしいよ。他の学校とは全然被らないから、集客が見込めるんだろうね」
「うわー姑息」
謂れのない疑いを学校にかけて、俺と浜場は笑いながら歩いていた。
今日から二週間、授業を午前中に短縮して文化祭の準備を放課後にやる期間となる。
…授業時間、大丈夫なんだろうか…
「しかし、奥原の案が採用されるとはなぁ」
「俺も驚いたよ」
そう、話は数日ほど前に遡る――
◆ ◆ ◆
「というわけで我々一組は、食堂権は得られませんでしたが飲食権は勝ち取りました!」
クラスはそれほど盛り上がらず、やる気のなさそうな拍手だけが響いた。
…こうなった事情については、少々説明が要る。
まず、一学年に存在する四クラスのうち、食堂をやれるのは一クラスだけである。
学年が同じフロアに存在する以上、そこにいくつも食堂を乱立させたところで互いに損だからだ。
実際、このルールができる前に食堂が乱立した結果、廃棄される食料がたくさん出てしまったらしい。
だが、何代か前の先輩は食い下がった。確か当時三年生で、来年卒業なのだから一度くらいやらせてくれ、と。
生徒の思いはわかる、しかし大量廃棄は出したくない。
結果、食料の提供は良いが食堂形式はダメという、使い所のない飲食権が誕生した。
残念ながら、結局その飲食権は使われることがないまま今に至るらしい。
当然だ、飲食物だけを提供するのはNGで、何か別のものも出さなければいけないのだから。
そんなめんどくさいこと誰もやりたがらない。
「せ、せっかくの飲食権だから、何か使える案がないかさがしてみよう?」
なんて先生も言ってるけど、大方案は出ないだろう。ぽつぽつ出る案も飲食物とは関係ないものだ。
「そ、そうだ!ブレストやってみない?その案から絞り込む感じで」
そこで、先生はブレスト…ブレインストーミングを発案した。
アイデアのクオリティに拘らず、とにかく量を出す手法だ。
俺たちは付箋を配られ、そこにアイデアを適当に記していった。
その中にあった俺のアイデア――『カジノ(プレイヤーに飲み物を出す)』が、飲食権を上手く使っているとしてたちまち祭り上げられた、という次第だ。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺たちは『CASINO H』の準備を進めていた。
命名者は俺だ。理由は『1-1』が『H』に見えたから。あとはカジノといえばイタリアな気がするので、イタリア語で『H』はなんと読むのか調べたら『アッカ』だった、という単純なものだ。
この話をして真っ先に「中二病?」とか言いやがった色葉には、いずれ乳首責めで泣くまでイカせてやろうかと思った。
まあ、もともとカジノ自体俺が考案したアイデアということもあり、すんなり受け入れられたのだが。
「で、これくらいのサイズでいいのか?」
「問題ない、このダンボールを何枚か重ねりゃ強度も確保できるだろ」
…というわけで、俺たちはホームセンターに買い出しに来ている、というわけだ。
でかいダンボールを学校まで持って帰らないといけないのはなかなかしんどい。
「ま、考案したのがお前だからな。責任取れ」
「考案するんじゃなかったわ」
そんな軽口を叩きながら、俺たちは絵の具を探しに歩を進めた。
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