女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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113. それでも、貫きたいもの

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「…えーと」

 美香は言い淀んだ。

「今は止められたけど、俺も多分…止められなくなることが、あると思う。もし、そこで止められずに無理やり襲ってしまったら、やっぱりまずいと思うんだ」
「…襲ってくれて、いい」

 美香は、少し下を向いて言った。

「襲っていいって…無理やりセックスするかもしれないんだぞ?俺が必ずするってわけではないけど…」
「…だから、そうしてほしいって言ってるの」

 俺の言い訳を遮って、美香はそう言った。

「いや、セックスは怖い、できないって美香言ってたじゃん?」
「うん。だから、だよ」
「だから?」

 提示された矛盾に直面して、脳内に疑問符が浮かぶ。
 その答えは、すぐに示された。だが…

「無理やりしてもらえれば、怖さもなくなるかなって…そう思ったから」
「…それはいくらなんでも」

 言いかけて、言葉を止める。
 怖い怖いと思っていたことが、いざやってみれば何でもなかったということはよくあることだ。
 そして、セックスがそこに含まれないという道理はない。
 …それでも。

「無理やり、急ぐ必要はないんじゃないか」
「総司くんはさ、それでいいの?」
「え?」

 突然問いかけられて、言葉が詰まる。

「総司くんも、私とセックスしたいって…そう、思ってくれてるんだよね?」

 頷きを一つ返す。

「総司くんはさ、優しいから『慌てなくてもいい』って言ってくれたけど…それに甘えてばかりじゃ、だめだと思うから」
「あー…なるほどな」

 甘え。
 そんな言葉が出てくるほどには、美香は俺に対して負い目を感じていたらしい。
 詰まりが取れたかのように、言いたいことがいろいろと出てくる。
 それを心の中でうまくまとめ上げて、出力する。

「なんというか、これは俺の甘え…というか、わがままなんだけどさ。初めてのセックスだから、どうせなら美香に満足してほしいと思うんだ」
「私に、満足…?」
「そう。俺の世界の話は散々したよな」

 美香がこくりと頷く。

「多くの人にとっては、セックスは恋とか愛の先にあるものなんだ。俺の価値観もそう。こっちに来て、慣れるだなんだって言ってたけど…結局、この価値観は俺には捨てられないっぽくてさ。…まあ、何回かセックスした身で言うのもおかしいかもしれないけど」
「でも、そうするために総司くんに我慢させるのは…」
「我慢じゃない。俺のわがままだ、って言っただろ」

 俺は美香に体を寄せた。
 暖房の効いた室内でも、美香の体温はどこか別の理屈で伝わっているのではないかと思うほど熱く感じる。

「じっくり慣れさせていこうよ。せっかく初めてなんだから」
「…うん」

 俺と美香の手が重なった。
 正直、納得してくれたかどうかはわからない。
 でも、今はこれでいい。
 これから、行動で示していけば良いのだから。
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