113 / 164
113. それでも、貫きたいもの
しおりを挟む
「…えーと」
美香は言い淀んだ。
「今は止められたけど、俺も多分…止められなくなることが、あると思う。もし、そこで止められずに無理やり襲ってしまったら、やっぱりまずいと思うんだ」
「…襲ってくれて、いい」
美香は、少し下を向いて言った。
「襲っていいって…無理やりセックスするかもしれないんだぞ?俺が必ずするってわけではないけど…」
「…だから、そうしてほしいって言ってるの」
俺の言い訳を遮って、美香はそう言った。
「いや、セックスは怖い、できないって美香言ってたじゃん?」
「うん。だから、だよ」
「だから?」
提示された矛盾に直面して、脳内に疑問符が浮かぶ。
その答えは、すぐに示された。だが…
「無理やりしてもらえれば、怖さもなくなるかなって…そう思ったから」
「…それはいくらなんでも」
言いかけて、言葉を止める。
怖い怖いと思っていたことが、いざやってみれば何でもなかったということはよくあることだ。
そして、セックスがそこに含まれないという道理はない。
…それでも。
「無理やり、急ぐ必要はないんじゃないか」
「総司くんはさ、それでいいの?」
「え?」
突然問いかけられて、言葉が詰まる。
「総司くんも、私とセックスしたいって…そう、思ってくれてるんだよね?」
頷きを一つ返す。
「総司くんはさ、優しいから『慌てなくてもいい』って言ってくれたけど…それに甘えてばかりじゃ、だめだと思うから」
「あー…なるほどな」
甘え。
そんな言葉が出てくるほどには、美香は俺に対して負い目を感じていたらしい。
詰まりが取れたかのように、言いたいことがいろいろと出てくる。
それを心の中でうまくまとめ上げて、出力する。
「なんというか、これは俺の甘え…というか、わがままなんだけどさ。初めてのセックスだから、どうせなら美香に満足してほしいと思うんだ」
「私に、満足…?」
「そう。俺の世界の話は散々したよな」
美香がこくりと頷く。
「多くの人にとっては、セックスは恋とか愛の先にあるものなんだ。俺の価値観もそう。こっちに来て、慣れるだなんだって言ってたけど…結局、この価値観は俺には捨てられないっぽくてさ。…まあ、何回かセックスした身で言うのもおかしいかもしれないけど」
「でも、そうするために総司くんに我慢させるのは…」
「我慢じゃない。俺のわがままだ、って言っただろ」
俺は美香に体を寄せた。
暖房の効いた室内でも、美香の体温はどこか別の理屈で伝わっているのではないかと思うほど熱く感じる。
「じっくり慣れさせていこうよ。せっかく初めてなんだから」
「…うん」
俺と美香の手が重なった。
正直、納得してくれたかどうかはわからない。
でも、今はこれでいい。
これから、行動で示していけば良いのだから。
美香は言い淀んだ。
「今は止められたけど、俺も多分…止められなくなることが、あると思う。もし、そこで止められずに無理やり襲ってしまったら、やっぱりまずいと思うんだ」
「…襲ってくれて、いい」
美香は、少し下を向いて言った。
「襲っていいって…無理やりセックスするかもしれないんだぞ?俺が必ずするってわけではないけど…」
「…だから、そうしてほしいって言ってるの」
俺の言い訳を遮って、美香はそう言った。
「いや、セックスは怖い、できないって美香言ってたじゃん?」
「うん。だから、だよ」
「だから?」
提示された矛盾に直面して、脳内に疑問符が浮かぶ。
その答えは、すぐに示された。だが…
「無理やりしてもらえれば、怖さもなくなるかなって…そう思ったから」
「…それはいくらなんでも」
言いかけて、言葉を止める。
怖い怖いと思っていたことが、いざやってみれば何でもなかったということはよくあることだ。
そして、セックスがそこに含まれないという道理はない。
…それでも。
「無理やり、急ぐ必要はないんじゃないか」
「総司くんはさ、それでいいの?」
「え?」
突然問いかけられて、言葉が詰まる。
「総司くんも、私とセックスしたいって…そう、思ってくれてるんだよね?」
頷きを一つ返す。
「総司くんはさ、優しいから『慌てなくてもいい』って言ってくれたけど…それに甘えてばかりじゃ、だめだと思うから」
「あー…なるほどな」
甘え。
そんな言葉が出てくるほどには、美香は俺に対して負い目を感じていたらしい。
詰まりが取れたかのように、言いたいことがいろいろと出てくる。
それを心の中でうまくまとめ上げて、出力する。
「なんというか、これは俺の甘え…というか、わがままなんだけどさ。初めてのセックスだから、どうせなら美香に満足してほしいと思うんだ」
「私に、満足…?」
「そう。俺の世界の話は散々したよな」
美香がこくりと頷く。
「多くの人にとっては、セックスは恋とか愛の先にあるものなんだ。俺の価値観もそう。こっちに来て、慣れるだなんだって言ってたけど…結局、この価値観は俺には捨てられないっぽくてさ。…まあ、何回かセックスした身で言うのもおかしいかもしれないけど」
「でも、そうするために総司くんに我慢させるのは…」
「我慢じゃない。俺のわがままだ、って言っただろ」
俺は美香に体を寄せた。
暖房の効いた室内でも、美香の体温はどこか別の理屈で伝わっているのではないかと思うほど熱く感じる。
「じっくり慣れさせていこうよ。せっかく初めてなんだから」
「…うん」
俺と美香の手が重なった。
正直、納得してくれたかどうかはわからない。
でも、今はこれでいい。
これから、行動で示していけば良いのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる