甘いの辛いのどっちにするの?

ずんだもち

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本編 第一章 過去の傷跡編

問題を作る人、巻き込まれる人、それに加担する人

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「失礼します……」

扉を開けた瞬間、猛烈な勢いで教科書が飛んできた。

 「危ない!」 

 間一髪、いっしき兄さんが僕を庇い、直撃は免れた。一体どうなってるんだ。

教室の中は、正に地獄絵図だった。クラスメイトたちが机をなぎ倒し、激しい乱闘を繰り広げている。

「今日こそ傘下に降りやがれ、覇王連合!!!」 

「てめぇらこそ帝君會の餌食になりやがれ!!!」

「な、何が起こってるの……?」

 「私、知っていますよ。この学校を支配する三大勢力のうち、二つのグループが今ここで抗争しているようです。普段から相当仲が悪いらしいですよ」 

「超迷惑じゃん。っていうか、なんでそんな情報知ってるの?」

 「私ほどにもなると下調べは欠かせません」 

 一織兄さんが、不敵な笑みを浮かべて微笑み返してくる。怖い。

「にしても、どするのこれ。教室に入れないよ」 

 一織兄さんの解説中も、目の前では怒号と拳が飛び交っている。

 「うーん、どうしましょうねぇ」

 一織兄さんが頭をひねっていた、その時だった。 ――パコォォンッ!! 僕の顔面に、誰かの履き古した上履きがクリーンヒットした。

「あっ……」 

 気まずそうに僕を見る一織兄さん。 

「ぶふっ……くっくっく……」 

 続けて、必死に笑いをこらえる二織兄さん。

プツン。 僕の中で、何かが切れる音がした。

「いい加減にしろ、このバカ! 今すぐ喧嘩をやめろーーーっ!!!」

 静まり返る教室。 面倒事は嫌いなはずなのに、怒りのあまり叫んでしまった。 だが、返ってきたのは静寂ではなく、火に油を注いだような怒号だった。

「あぁん? てめぇ、誰に口きいてんだ!」 
「新入りのくせになめてんのか!!」
 「おい見ろよ、新顔、可愛くねーか?」 
「そうじゃ! 可愛いからって容赦しないのじゃ!」

案の定、標的は僕になった。一人の男が僕の肩をガシッと掴む。 その瞬間、今まで笑いをこらえていたにしき兄さんの目が、野獣のように光った。

「俺の弟に触んじゃねぇよ!!!」

 にしき兄さんの鋭い蹴りが炸裂し、僕の肩を掴んだ男が文字通り吹き飛んだ。 

「テメェら、ふざけんじゃねぇぞ!!」 

飛びかかってきた他の仲間たちも、二織兄さんが一人で次々と蹴散らしていく。  その間、一織兄さんは僕の前に立ち、飛んでくる破片から僕をガードしていた。

「派手にやりましたねぇ」 

一織兄さんが感心したように言う。

「おいお前ら、なかなかやるな!上出来だ、俺たちのチームに入れてやるよ」 

倒されなかった方のチームが、上から目線で勧誘してきた。

「『入れてやる』? 『入ってください』の間違いだろ。まぁ、どっちにしろ入らねえけどな!」

 「あ? なめてんのか。俺たち『帝君會』を敵に回したいのかよ!」 

「ああ、そういうことだ。まとめて相手してやるよ」

二織兄さんの挑発で、帝君會?とかいうチームが全員で襲いかかってきた。しかし、二織兄さんは止まらない。たまに漏れてこちらに来る敵も、一織兄さんが何事もなかったかのように一撃でのしていく。

「どーだみしき! にぃにぃ、すげぇだろ!!」 

敵の山の上で、二織兄さんが笑顔でピースサインを送ってくる。

「でもどうしますか。みしきさん、あなたのせいでこの学校を牛耳る二大チームが敵になってしまいましたよ」

 「……え、僕のせいなの!? 絶望的なんだけど……」

「冗談ですよ、可愛いですね」

 「まぁ大丈夫だろ! 俺らがいるし!」

全然大丈夫じゃない。でも、僕を守るために戦ってくれたのは事実だ。

 「……ありがとう、兄さんたち……ほんと頼れるんだから………」

 「とーぜんだろ!!!」 

「はい、この頼り甲斐がある兄にお任せください!」 

二人は、今日一番の嬉しそうな顔で僕に笑いかけた。最後の言葉はボソッと言ったはずだったんだけど

「おっいいこと思いつーいた!いっそ俺たちが新しいチームを作るというのはどーだ?」 

「いいですね!私も自分よりな方の下につくなどまっぴら御免だと思っていましたから、総長はどうします?」 

「そんなもん、総長はみしきだろ!!」

「ええっ!? ちょっと待って、なんでそうなるの!?」

 「こんなに強い俺たちを従えてるトップが、一番ヤバい奴だって思わせられるだろ!」 

「それに、みしきさんは可愛い私たちの弟ですしね」

いっしきのことばを聞いて少しだけがっかりした自分もいた。やっぱり僕は一織兄さんにとって不完全なんだ。
でも、そんなことより、嫌だ。普通に嫌だ。目立ちたくない。

 「大丈夫です! 何かあったら頼り甲斐がある私が助けますから!」 

「……本当に? 信じていいの?」

 「そうですよ!何かあったら、にしきさんではなく、完璧なこの私にお任せください!」

「ずりぃぞ、いっしき!!!みしきこいつじゃなくて俺を頼れよ!!!」

調子に乗っている2人を置いとき、ひとまず話題を戻す

「ちなみに名前はどうするの?」 

「ここは『辛子団』だな!」 
「『糖蜜団』ですね」

二人の言葉が、同時に重なった。 一瞬で、二人の間にまた冷たい火花が散る。 

「相変わらずセンスねぇな!」 

「あなたこそセンスありませんよ?」

正直、僕からすればどっちもどっちなのだが。

 「……もう、間をとって『糖辛子団』でいいんじゃないの?」

投げやりな僕の冗談。自分でもダサいと思った。だが――。

 「いいな、それ!」

 「私たちにふさわしい素晴らしいチーム名ですね!」

なぜか、二人に大好評だった。

「いいかテメェら! 今日から俺たちは『糖辛子団』だ!!」 

 二織兄さんが、校舎中に響き渡るような声で叫んだ。

 「総長は白桃みしき!!! そしてチームメンバーは俺たちだ(私たちです)!!!よーく覚えとけ!!!」

「ちょっ……恥ずかしいからやめてよーー!!!」 

僕は顔を真っ赤にしながら、高笑いする兄さんたちの口を必死に塞いだ。

今思えばなんであの時総長になるって言っちゃったんだろ、この後総長になってしまったことで面倒ごとが降りかかることをまだ知らない。




「あいつ、すげえな、、、、」

にしきが高笑いしているときクラスの外から背の高い男がこちらを見ていたことをこの3人はまだ知らなかった。
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