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本編 第一章 過去の傷跡編
放課後のトイレ
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二人のド派手な「総長就任宣言」から時間が過ぎ、気づけば放課後になっていた。 幸い、授業中は平和だった。朝の騒ぎのせいでガンを飛ばしてくる生徒もいたが、同時に「あの総長か……」という畏怖の視線もあり、変な気まずさが漂っていた。
「それじゃ、アキラ。この三人組に寮案内してやれ」
成田先生が、おそらく適当に指名したのはクラスメイトのメガネの男だった。
「えっ? 僕!? いやや、いやや、あいつらとは関わりたくあらへん!!」
小声の抗議だが、僕らには丸聞こえだ。
「お前、新入生案内係だろ」
「いや、ちゃいますけど!!」
鋭い関西弁のツッコミを先生に浴びせた後、彼は諦めたようにこちらへ歩いてきた。
「……僕はアキラ。アキラ君って呼んでな、案内するからついてきて」
「おう!よろしく頼むぜ!俺たちは――」
「自己紹介はええわ! 朝、校舎中に響くデカい声で聞いてたからな!」
「ま、確かにな!」
「ですね!」
二人が「どうだ俺たちは」と言わんばかりのドヤ顔で僕を見てくる。その視線がしつこくて耐えられなくなった僕は、一旦避難することにした。
「あの、アキラ君、ちょっとトイレ行きたいんだけどいいかな?」
「ええよ。そこ曲がって右や」
ようやく一人になれた。
「……あのドヤ顔、褒めなきゃよかったかな」
後悔しながら個室に入ろうとした、その瞬間。
「――ッ!?」
背後から何者かに突き飛ばされ、個室に押し込まれた。 ドカッと便座に座らされ、逃げようとするが、ぼくの力が弱過ぎて身動きが取れない。さらに大きな手で口を塞がれた。
(朝のやつらの復讐か……!?) 最悪の想像が頭をよぎり、必死に抗う。しかし、上から見下ろす男は不敵に笑った。
「俺様は桐生コウガ! いずれこの国の頂点に君臨する男だ!つまり総理大臣になるってことだ!……俺様の圧にびびってるだろうが、提案がある!お前、俺の女になれよ!」
……は? 何を言っているんだ、この男は。
「お前、顔可愛いし、男だけどギリいける!最近作った俺様のチーム、まだ人が足りねぇんだよ!そこでよ!お前を『俺の女』にすれば、あの強ぇ双子も実質俺のモンだろ?」
自信満々に語る桐生。どうやら僕をダシにして、兄たちを仲間にしようとしているらしい。
「この学校は三つの勢力が牛耳ってる、俺もそこに食い込みてぇ!だから、大人しく俺の女になれ!」
復讐じゃなかったのは安心したが、言っていることは復讐よりタチが悪い。 僕が必死に「んーんー!」と唸ると、桐生は
「あ、わりぃ」
と手を離した。
「断る!嫌だよ!」
こんな無理矢理な感じで迫られたら誰だって嫌だっていうよ!
「そうか……なら、力ずくでやるまでだ!」
カチャカチャと音を立て、桐生がベルトを外し始めた。 その時、二織兄さんの言葉がフラッシュバックする。 『レイプなんでもありのヤバイ学校らしいぜ』
(これのことか……!!) 本気で暴れる僕を、桐生は再びねじ伏せ、耳元で囁いた。
「大人しくしろ、今わからせてやるからよ……」
絶望が襲い、爪を立てて抵抗しようとした時――僕は、桐生の背後にある「影」を見て、ふっと体の力を抜いた。
「おっ、大人しくなったな、それじゃあ……」
「――誰の許可を得て、その手で『私たちの弟』に触れているんですか?」
「ぎゃっ!!?」
次の瞬間、桐生の体がいきなり宙を舞い、壁に激突した。 ひょこっと顔を出したのは、いつもの冷徹な笑みを浮かべたいっしき兄さんだった。
「みしきさーん、大丈夫ですか?」
「うん……身体中痛いけど、なんとか」
「みしき!! もう安心しろ! にぃにぃが助けに来たからな!」
遅れて二織兄さんも個室に突っ込んできた。
「最初に気づいたのはこの私でしたけどね」
「最終的にブチのめしたのは俺だろ!」
「……お二人さん、まずは僕をここから出してくれる?」
助けてくれた二人を棒読みで褒め称えると、彼らは現金なもので、とても満たされた顔をしていた。
個室の外には、無様に転がった桐生がいた。 僕は、まだ状況が飲み込めておらず「うぅ」と呻き声をあげている彼の耳元にしゃがみ込み、冷たく告げた。
「……『わからされた』のは、君の方だったね」
そうして僕は捨て台詞を吐き、呆然とする桐生を置き去りにして、頼もしくも厄介な兄たちと共に、トイレを後にした。
「それじゃ、アキラ。この三人組に寮案内してやれ」
成田先生が、おそらく適当に指名したのはクラスメイトのメガネの男だった。
「えっ? 僕!? いやや、いやや、あいつらとは関わりたくあらへん!!」
小声の抗議だが、僕らには丸聞こえだ。
「お前、新入生案内係だろ」
「いや、ちゃいますけど!!」
鋭い関西弁のツッコミを先生に浴びせた後、彼は諦めたようにこちらへ歩いてきた。
「……僕はアキラ。アキラ君って呼んでな、案内するからついてきて」
「おう!よろしく頼むぜ!俺たちは――」
「自己紹介はええわ! 朝、校舎中に響くデカい声で聞いてたからな!」
「ま、確かにな!」
「ですね!」
二人が「どうだ俺たちは」と言わんばかりのドヤ顔で僕を見てくる。その視線がしつこくて耐えられなくなった僕は、一旦避難することにした。
「あの、アキラ君、ちょっとトイレ行きたいんだけどいいかな?」
「ええよ。そこ曲がって右や」
ようやく一人になれた。
「……あのドヤ顔、褒めなきゃよかったかな」
後悔しながら個室に入ろうとした、その瞬間。
「――ッ!?」
背後から何者かに突き飛ばされ、個室に押し込まれた。 ドカッと便座に座らされ、逃げようとするが、ぼくの力が弱過ぎて身動きが取れない。さらに大きな手で口を塞がれた。
(朝のやつらの復讐か……!?) 最悪の想像が頭をよぎり、必死に抗う。しかし、上から見下ろす男は不敵に笑った。
「俺様は桐生コウガ! いずれこの国の頂点に君臨する男だ!つまり総理大臣になるってことだ!……俺様の圧にびびってるだろうが、提案がある!お前、俺の女になれよ!」
……は? 何を言っているんだ、この男は。
「お前、顔可愛いし、男だけどギリいける!最近作った俺様のチーム、まだ人が足りねぇんだよ!そこでよ!お前を『俺の女』にすれば、あの強ぇ双子も実質俺のモンだろ?」
自信満々に語る桐生。どうやら僕をダシにして、兄たちを仲間にしようとしているらしい。
「この学校は三つの勢力が牛耳ってる、俺もそこに食い込みてぇ!だから、大人しく俺の女になれ!」
復讐じゃなかったのは安心したが、言っていることは復讐よりタチが悪い。 僕が必死に「んーんー!」と唸ると、桐生は
「あ、わりぃ」
と手を離した。
「断る!嫌だよ!」
こんな無理矢理な感じで迫られたら誰だって嫌だっていうよ!
「そうか……なら、力ずくでやるまでだ!」
カチャカチャと音を立て、桐生がベルトを外し始めた。 その時、二織兄さんの言葉がフラッシュバックする。 『レイプなんでもありのヤバイ学校らしいぜ』
(これのことか……!!) 本気で暴れる僕を、桐生は再びねじ伏せ、耳元で囁いた。
「大人しくしろ、今わからせてやるからよ……」
絶望が襲い、爪を立てて抵抗しようとした時――僕は、桐生の背後にある「影」を見て、ふっと体の力を抜いた。
「おっ、大人しくなったな、それじゃあ……」
「――誰の許可を得て、その手で『私たちの弟』に触れているんですか?」
「ぎゃっ!!?」
次の瞬間、桐生の体がいきなり宙を舞い、壁に激突した。 ひょこっと顔を出したのは、いつもの冷徹な笑みを浮かべたいっしき兄さんだった。
「みしきさーん、大丈夫ですか?」
「うん……身体中痛いけど、なんとか」
「みしき!! もう安心しろ! にぃにぃが助けに来たからな!」
遅れて二織兄さんも個室に突っ込んできた。
「最初に気づいたのはこの私でしたけどね」
「最終的にブチのめしたのは俺だろ!」
「……お二人さん、まずは僕をここから出してくれる?」
助けてくれた二人を棒読みで褒め称えると、彼らは現金なもので、とても満たされた顔をしていた。
個室の外には、無様に転がった桐生がいた。 僕は、まだ状況が飲み込めておらず「うぅ」と呻き声をあげている彼の耳元にしゃがみ込み、冷たく告げた。
「……『わからされた』のは、君の方だったね」
そうして僕は捨て台詞を吐き、呆然とする桐生を置き去りにして、頼もしくも厄介な兄たちと共に、トイレを後にした。
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