甘いの辛いのどっちにするの?

ずんだもち

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本編 第一章 過去の傷跡編

かしら襲来!?

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目が覚めると、二人の兄に押し倒されていた。

「ちょ、ちょっと、何してるの?!」

 「何ってねぇ?」 

「わかってるくせによ」

二人はどんどん顔を近づけてくる。僕は混乱しながらも、必死に言葉で抵抗した。

「わかんないよ! とりあえずどいてよ、変態!!!」 

「ぷっ、変態だってよ。俺たちが?」 

「……あなたは、何もわかっていませんね」

一織兄さんが顔スレスレまで迫り、耳元で低く囁く。

 「同じ顔……それも兄弟に興奮するなんて、あなたこそ、変態ではありませんか?」

「うわあああ!!!」

僕は叫びながら飛び起きた。 
(……夢か)

「どうしましたか、みしきさん?」 

「んぁ……? どーしたんだ?」

一織兄さんがひょこっと顔を覗かせ、続いて眠そうな目をこすりながら二織兄さんも起きてきた。

「ご、ごめん、ちょっとびっくりする夢を見ちゃって」 

「謝ることないですよ。ちょうど朝ですし」 

「そーだぜ。にしても、大丈夫か? どんな夢見たんだよ、にぃにぃに話してみろ!」

二織兄さんがニヤニヤしながら僕のベッドに潜り込み、一織兄さんも

「私たちは心配です」

と便乗して入ってくる。夢の光景がフラッシュバックし、僕は焦ってベッドを飛び出した。

「べっ別に大丈夫だよ!」

「もしかして….えっちな夢でも見たのかよー」 

「そ、そんなわけないでしょ!」

朝から散々からかわれ、僕たちは食堂へ向かった。案内役のアキラは、二人の調の異常なかけ具合を見て、案の定絶句していた。

「あれ、体壊さへんの……?」 

「……もう、諦めてる」


朝食を終え、いつものように廊下を歩いていた――はずだった。
次の瞬間、視界がぐらりと揺れる。
気づけば、激しい人混みに飲み込まれていた。
前からも後ろからも人が押し寄せ、逃げ場がない。
声を出そうとしても、誰の耳にも届かない。
揉みくちゃにされ、足が地面を離れた感覚すらあった。
――そして。
ふっと、圧が消えた。
気づけば僕は、知らない中庭のような場所に一人立っていた。
さっきまでの騒がしさが嘘みたいに、静かだ。

「……ここ、どこ……?」
声がやけに響く。

周囲を見回しても、見覚えのある建物が一つもない。
そのときだった。

「君、大丈夫?」

背後から、柔らかい声がかかる。
振り向くと、そこに立っていたのは――
どこか猫を思わせる、不思議な雰囲気の男だった。
目だけが妙に鋭くて、こちらを観察するように細められている。

「ずいぶん汗をかいているみたいだけど……迷子かい?」

少し迷ってから、僕は正直に頷いた。
すると彼は、興味を失ったみたいに肩をすくめ、

「ふーん。頑張って」

そう言って、あっさり踵を返そうとした。

「えっ、案内してくれないんですか?」

思わず声が出た。
男は立ち止まり、振り返る。
その表情は、心底不思議そうだった。

「だって、僕にメリットないだろ?」

(……じゃあ、なんで声かけたんですか)
心の中でツッコミながらも、口には出せない。
しばらく僕を眺めていた男は、急に思い出したように言った。

「まあいいや。これは『貸し』だからね」

そう言って、歩き出す。

「おいで。君の教室ならわかるよ」
「……え?」

「君のことならね」

意味のわからない言葉だった。
けれど、他に頼れる相手もいない。
半信半疑のままついていくと――
本当に、僕たちの教室、二年A組の前に辿り着いていた。

「……着いたでしょ?」

男は満足そうに微笑む。
そして、別れ際にぽつりと言った。

「また会おうね。白桃みしき」

次の瞬間、彼は風に溶けるように、その場から消えていた。

「……え?」

しばらく、僕はその場から動けなかった。
(……なんで、僕の名前知ってるんだ?)

「みしきさん! 心配しました!」 

急に中から一織が飛び出し、抱きついてきた。

「一織、ずりぃぞ! 」

「あきらさんが探しに行ってくれたんですよ、私たちも行こうとしたのですが、とめられてしまって」

「まっ!無事でよかったぜ!」

再会を喜ぶのも束の間、廊下に怒声が響き渡った。

「おい!!! 糖辛子団の総長はどいつだ!!!」

現れたのは、長髪の巨大な男。昨日僕の肩を掴んできた男が、僕を指差す。

 「あいつじゃ……!」

そう言い終わると、いきなり巨大な拳が飛んできた。

「おっと、危ないですね」 

その拳を一織兄さんが片手でガードする。

「やるなテメェ……」 

一織兄さんを巨大な男が睨みつける。

「いきなり殴りかかるのではなく、まずは自己紹介をしては?」

「そんなの必要ねぇ!!」

「……まあ、貴方達は昨日の復讐に来たというところでしょうか….。」
「ですが、暑くなっているとこ申し訳ございませんが、我々の昨日の行動は立派な正当防衛です。」

一織兄さんは冷徹に解析した。
続けて一織兄さんが言う。

「それなのに話も聞かずに暴力を振るうとは……」

 「……まるで、知性のない野生動物だな」

「いえ、そこまでとは言っておりませんが….」

(あれ?なんか、様子がおかしい…)

それまで静かだった巨大な男が急に喋り出し、大声で笑い出した。

「なら、なってやるよ!!! てめえらを食い殺す野生動物になぁぁ!!!」

次の瞬間、そう叫ぶと一織兄さんに襲いかかってきた。

「まっ、待つのじゃ!かしら!今日は勧誘だけじゃと!」

「気が変わった!!!こいつは今ここで潰す!!!」

巨大な男の猛攻が来る。
一織兄さんは必死にその猛攻を必死に回避する。

「さっきの威勢はどうした!!!逃げてるだけかよてめぇはよ!!!」

(やばい、始まっちゃった!)

 「にしき兄さん、助けて!」

「男同士の一対一だ、邪魔はしねぇよ」

僕が助けを求めるがそう言って、笑うだけだった。
そして、一織兄さんが反撃の体制を取ろうとした。
(このままじゃ怪我しちゃうよ)
そう思うと、体が勝手に動いていた。

「やめて!!」

 たまらず僕は一織兄さんの身体を抱き抱えて止めた。

「みしきさん….」

「やめるのじゃ!」

それと同時に向こう側でも、肩を掴んできた男が必死に止めた。

「テメェ….殺されてぇのか!!!!」

「じゃっ…じゃって、これ以上やったら、また……!」

 その言葉に、京極の怒りが爆発した。彼は自分の仲間を殴り飛ばした。

 「テメェが弱いからこんな目に遭ってんだろうがよ!!!」

「ぎゃっ!」

「やめなよ! 自分の仲間を殴るなんてみっともない!」 

僕の叫びに、京極は標的を僕に変えた。

「口出しすんじゃねぇ!!!」

振り下ろされた拳。僕は思わず目をつむった。 だが、衝撃は来なかった。

「……これ以上やると、俺も黙ってねーぞ?」

二織兄さんが、京極の拳をガッシリと受け止めていた。その瞳には、先ほどまでの余裕はない。

 「テメェら……覚えてろよ!!!」 

京極は吐き捨て、殴り倒した仲間を放置したまま去っていった。

「大丈夫……?」 

僕が血だらけの男に手を貸したが、
手を振り払われ、彼は後を追っていった。

「ほっといてほしいのじゃ!」

そこへ、アキラが戻ってきた。

 「ちょ、何これ?! 何かあったん?!」

事情を説明すると、アキラの顔がみるみる青ざめていった。

「ええっ! あの京極に喧嘩売ってもうたん?! 」

「京極って、さっきの人?」

「そうや!覇王連合の幹部で、超武闘派の一派を束ねる怪物やぞ……!」

「なんかすごそう…」

「すごいなんてもんやあらへんで…」

どうやら僕たちは、昨日以上に厄介な怪物を怒らせてしまったようだった。

「と、とにかく意味あるかわからへんけど、先生とこ行こ!」

そう言うアキラが教室から出ようとした次の瞬間、入り口に現れた「巨大な壁」にぶつかり、派手に尻餅をついた。

「いった……! ほんま何やねん、もう……」

文句を言おうと顔を上げたアキラは、その物体を確認した途端、喉を詰まらせて硬直した。
そこに立っていたのは、ふわふわした雰囲気を纏った、鮮やかなピンク色の髪をした見上げるほど背の高い男だった。

男はしばらくの間、無言で、硬直してるアキラを見下ろしていたが、やがて視線を教室の奥へと戻し、ゆっくりと声を発した。

「みしきちゃんっているぅ?」


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