魔法が使えない女の子

咲間 咲良

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エドガーに仕返し!

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 ※

「エマ、ちょっとこい」

 放課後、エドガーに呼び出された。ろうそくに火がついたことをすぐにでもおばあちゃんに報告したかったのに、入り口を通せんぼされたら従うしかない。

 連れていかれたのは中庭の噴水前。エドガーと数人の男の子がいる。開口一番、エドガーが叫んだ。

「魔法の授業、いったいどんな手品を使ったんだよ」

「手品? あれは魔法よ。正真正銘、わたしの魔法」

「うそつけ。エマなんかがあんなに大きな火を生み出せるもんか」

「失礼ね。自分の火がミジンコみたいに小さいからって文句を言うなんて」

「うるさい!」

 途端にエドガーが顔を真っ赤にした。気にしていたのかしら。

「だいたい、昨日言ってたとびっきりの魔法はどうなったんだよ。道具は持ってきたのか? 一日も待ってやったんだぞ」

 う、うやむやにしようと思ったのにしっかり覚えていたのね。
 エドガーがずい、と迫ってくる。

「魔法が使えるって言うなら、いますぐ見せてみろよ。なあ、おい」


 どうしよう。絶体絶命。

 左腕のリングが視界に入ったので、本の中の世界のことを話そうと思ったけれど、アレンは『だれにも言うな』と手紙をくれた。きっとなにか理由があるのよ。

「さぁ、さぁ、さぁ!」

 エドガーがぐいぐい迫ってくる。
 あぁもう、こうなったら奥の手だわ。

「見て! 噴水の水が大変なことに!」
「なに!?」

 エドガーたちが気を取られた瞬間に走り出した。こうなったら逃げるが勝ちよ。わたしの足の速さにはだれもついてこられないんだから。

「逃げたぞ!」

 すぐに気づいたエドガーが叫ぶと、目の前に手下の男子があらわれた。しまった、この展開は予想できなかったわ。
 逃げ場をなくして慌てているうちにエドガーが近づいてくる。

「なーんだ、やっぱりウソじゃないか。ウソつきエマ」

「な、なによ、いくら魔法が使えるからって、他人をいじめるなんて最低だわ」

「いくらでも言えよ。明日からおまえは『魔法ナシ』決定だ。はははー」
 大笑いするエドガーの背後で、ゆっくりと影が立ち上がった。

 え、と思って目をこらすと噴水の水が地面じゃなくて空にのぼっていく。それはまるで水の巨人。


「……アレン?」


 まちがいない。昨日見たアレンの魔法だわ。なんて迫力。

「お、おい、エドガー」

 巨人に気づいた手下の男子たちが青ざめる。でもエドガーは気づかず高笑いしてる。巨人の体がゆっくりと動いて、その手がエドガーの頭上に――。
 かわいそうだから注意してあげることにした。

「ねぇエドガー、一回息止めた方がいいかもね」

「ははは…………は?」

「目と耳もふさいでね。お先にっ!」

 一足先に息を止めてぎゅっと目を閉じた。
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