ジジイボム

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真実

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〔ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ〕

「誰にだって大なり小なり悩みはあるもんだ。ましてや次長クラスの人間なら一挙手一投足の言動に責任を乗せられるんだ、気を使う度合いも俺らには計りしれねえよ。」
THE軍人がワインをラッパ飲みした後に言う。

〔ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ〕

「どうせだったら全部吐き出せよ、聞いてやるからさ。」
天才もTHE軍人を真似てワインをラッパ飲みし偉そうに言う。

「コラッ調子に乗らないの!いい加減にしなさい!次長申し訳ありません。」青メガネロリは天才からワインを取りあげ天才の代わりに謝罪する。

「いや・・・、いいんだ、少し顔を洗ってくるよ。」
男前が涙を拭いながら席をたつ。

その瞬間に青メガネロリがTHE軍人を殴った。

〔ゴッ〕

「呑んだのはこいつの意思だとか言ったら殺す!」
青メガネロリがTHE軍人の言葉を先読みして言う。

「えっと・・・、すいませんでした。」
THE軍人の姿が小さく見えるのにも慣れてきた。

「もう一杯だけ!」
天才がてへぺろ☆の表情でワインをせがむ。

「あんたも本気でぶっ飛ばされたいの?」
青メガネロリの殺意は本物だった。

「い、いえ、もう結構です、調子に乗ってすいませんでした。」
天才は少し酔いが冷めたようだ。

顔を洗って男前が戻って来た。
「情けない姿を見せてしまいましたね、皆さんには話しても問題なさそうなので私のことを少し話しても大丈夫ですか?」
泣いたあとで少し目が赤く、なぜかいつもより柔らかい表情で男前が男前に笑いながら問いかける。

「最初から聞いてやるって言ってんだろ?」

「もちろんです。」

天才とTHE軍人は正座しながらカッコをつけて言う。

「彼らのことはお気になさらず、どうぞお話ください。」
どうやら青メガネロリに正座を強いられているようだ。

(この女が一番酒呑んでたのになんで俺たちだけこんなこと・・・)
天才はそう思った瞬間

「何?文句あんの?」
青メガネロリが悟ったかのように強い口調で言う。

「いえ、ありません、続けてください。」
天才はそう言い、黙ることを選択した。

「えっと・・・では少し聞いてもらえるかな?危険徘徊防止法の説明はもういらないね?その危険徘徊防止法を作るきっかけになったあの事件は子供3人を含む12人が殺害されたことは公表されているが公表されていないことが少しあってね、彼の逮捕後精神鑑定を複数行った結果その犯人は実は認知症を患っていなかったのさ。」
男前が深刻な顔で言う。

「つまりボケてないまま人を殺しまくったてことか?」
天才が驚いた表情で問う。

「そういうことになるね、最初の精神鑑定では認知症の傾向はあったのだが、連日の精神鑑定に疲れたのか犯人はこう言った、
『はぁもう疲れちまったよ、ボケてるフリをすんのはよう、俺が全員ぶっ殺したんだよ』
と、それを知ったのは私が次長になってすぐ、極秘ファイルの一部の閲覧権限が付与された時だった。正確にはこの犯人はボケたフリをして看護師を襲ってそれを写真や映像に残して脅迫、金銭の要求や施設内の薬の窃盗を指示、それをまた横流し、衣食住に心配しない中で税金の負担もなく少し状況が悪化したと感じたら退院し、またボケたフリをして他の施設に入院そしてまた同様の手口で犯行に至る、そうやって犯人は入退院を繰り返していたのさ。」
男前が深刻に話を続ける。

「どうしてそんなの公表しなかったんだよ?」
天才が興奮気味に問う。

「その働いてる人達、これからその仕事に就くであろう人達を不安にしたくなかったのさ、何よりただでさえ高齢者への不安が募っていた時代で今ほどの便利さはない、そんな中で若者にこの事実が流れたら国は暴動化してしまうであろうことを危惧して政府は一部の情報を隠蔽したのさ。」
男前が深刻に答える。

「何が働いてる人達だ、結局ジジイがジジイの保身のためじゃねえかよ!」
天才がさらに興奮して言う。

「その通りだ。そしてここからは政府の人間も一部以外誰も知らない事実を教えよう。引くなら今だよ?」
男前がさらに深刻な表情で問う。

「だからもったいぶらねえでさっさっと言えって!」
「何を今さら。」
「引く気は一歩もありません!」
天才、THE軍人、青メガネロリ各々が覚悟をとばす。

「私はあの事件の生き残りだ・・・、当時もうすぐ3歳になる寝ている私を4つ上の兄が咄嗟に風呂場に隠してくれたらしい。目が覚めて風呂場から出ると血だらけの兄、リビングには血だらけの父、玄関には裸で血だらけの母の姿があったそうだ。死を理解できない幼い私はその時『ねえ遊ぼう、起きてよ』と家族の生き絶えた姿をゆすっていたらしい。まもなく警察が来て他に身内がいなかった私はその警察に養子として引き取られた。最初のころは家族がいないこと、見知らぬ地、見知らぬ環境で『お兄ちゃん』とすぐ泣いていたらしい。何より兄が好きだったんだろう・・・。養父母は私にずっと優しかった。幼い私は本当の家族のことを忘れてすっかり養父母の子として幸せな日々を送っていた。正直に幸せだった・・・。そんなある日、養父母は高齢者の飲酒運転により跳ねられて二人とも他界した。私の15の誕生日を祝う為のケーキを近くのスーパーに買いに行ってくれていたらしい。学校から帰った私はまた一人になった・・・。時間がすぎて養父の遺品を整理している時に養父の書斎の机から私宛の手紙が見つかった。成人になった時に渡すつもりだったらしい。事件のこと、養子であること、幼い時の私の様子、事細かに記されていた、そして最後の一文にはこう記してあった『それでもお前がうちに来てくれて私達は幸せだった、ありがとう息子よ』と。」
男前は数分前ほどではないがまた涙を流していた。

「・・・一人の人間に起きていい不幸じゃねえな。」
天才は正直に言う。

「そのようなことが・・・。」
THE軍人ですら言葉にできない。
 
「ひどい・・・。」
青メガネロリはと涙を浮かべていた。

「そして私はジジイの全ての犯罪を止めたくて養父と同じ警察官を志し勉強とトレーニングに明け暮れた。幸いお金は養父母の遺産があり生活には困らなかった。後は高校、大学を首席で卒業、エリート街道を駆け上がり今に至る・・・と、私の話は以上だ。そんな私が兵器を作ろうとしていることに矛盾と軽蔑を覚えるだろ?」
と男前が涙を拭いながら男前な笑顔を見せて問う。

「軽蔑なんかするか、ぶっ潰してやろうぜジジイどもをよう!」
天才がかなり興奮気味に言う。

「派手にやってやろうぜ!」
THE軍人もTHE軍人らしくなってきた。

「力量不足ではありますがお供させてください!」
青メガネロリも興奮気味に敬礼をしながら言う。

「フッ、明日からまた少し忙しくなるな。今日はここに泊まっていきたまえ。幸い部屋は多くある。」
男前はいつにも増して男前な笑顔でまた少し涙を浮かべながらそう言った。
                    続く
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