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二人の本音
あいりの本音
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「俺が羨ましい?煽ってるの?」
ジョッキを置いて目を細める佑斗さん。獲物を見つけた鷹のように鋭いその視線から今度は私が逃れる。本音を見透かされないように頬杖をついて窓の外を眺める。雨が窓ガラスを濡らしている。
「…付き合えばさ、別れるかもしれないじゃん?でも、佑斗さんみたいに親友とか、私たちみたいに知り合いなら別れたときのダメージが少ないでしょう?それが羨ましい」
「…俺は、たとえあいつと一生の別れが来るとしても、一瞬でいいから特別な関係になりたいよ」
「特別な関係になれても、不安はたくさんありますけどね」
そう言いながら彼の整った横顔を見つめる。鼻筋が通っていてはっきりとした顔立ち。渡さんとは全く違う。
「だろうな」
「一つ、聞きたいんですけど、佑斗さんってどうして渡さんのこと好きになったんですか?」
私の本音なんてとっくに見透かしていると言いたそうな瞳を見つめながら問いかける。一瞬動きを止めたけれど、すぐにふっと表情を緩めた。
「彼女に言えって?バカなの?」
「いいじゃないですか。減るもんじゃないんだし、教えて?」
私は先程の彼の言葉を復唱する。もちろん、気づいているだろうけれど、何もいわないままゴトンとジョッキをテーブルに置く。
私がどんなに近くで見つめても、彼の瞳に私は写っていない。写れるわけがない。何年も前からあの人だけが写っているから。
そして、渡さんが出ていったうるさい扉を見つめながらポツリ言った。
「…理由なんてないよ。気付いたら好きになってたってだけ」
今度は真っ直ぐに私だけを見つめてくる。たったそれだけのことで、胸が締め付けられるように痛む。
「恋ってそんなものじゃない?」
優しい口調で言われると、少しだけ鼓動が早まったような気がしてしまう。きっとお酒が回ってきただけなのに。
「…へぇ」
「いや、自分からこの話題振っといて反応薄っ!俺、やっぱりあいりちゃんのこと嫌いだわ~」
そう言いながら「いやだいやだ」と顔の前でヒラヒラ手を振る佑斗さん。私は負けずに言い返す。
「ま、彼氏の親友に好きになられても困りますけどねっ!」
「うざいなぁ~本当に嫌いだわ!」
佑斗さんが息がかかるくらい身を乗り出して整った顔を歪める。私はびっくりしてパッと身を引き、咄嗟に目をそらしてしまう。酔いが回っている彼にとってはたいしたことではないのだろう。と、瞬時に自分の都合のいいように解釈をする。
「そんなに繰り返して言わなくていいですよ!」
「…え?もう一回言ってほしいって?何回でも言ってやるよ!」
「そんな子供みたいなことばっかり言ってるから顔が気持ち悪いし、考えも古いんですよ~」
「顔が気持ち悪いのは関係ねーよ!」
「あります~」
いつの間にか二人で声を合わせて笑っていた。
…佑斗さんとはこの距離感でちょうどいいんだよね───
ジョッキを置いて目を細める佑斗さん。獲物を見つけた鷹のように鋭いその視線から今度は私が逃れる。本音を見透かされないように頬杖をついて窓の外を眺める。雨が窓ガラスを濡らしている。
「…付き合えばさ、別れるかもしれないじゃん?でも、佑斗さんみたいに親友とか、私たちみたいに知り合いなら別れたときのダメージが少ないでしょう?それが羨ましい」
「…俺は、たとえあいつと一生の別れが来るとしても、一瞬でいいから特別な関係になりたいよ」
「特別な関係になれても、不安はたくさんありますけどね」
そう言いながら彼の整った横顔を見つめる。鼻筋が通っていてはっきりとした顔立ち。渡さんとは全く違う。
「だろうな」
「一つ、聞きたいんですけど、佑斗さんってどうして渡さんのこと好きになったんですか?」
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「彼女に言えって?バカなの?」
「いいじゃないですか。減るもんじゃないんだし、教えて?」
私は先程の彼の言葉を復唱する。もちろん、気づいているだろうけれど、何もいわないままゴトンとジョッキをテーブルに置く。
私がどんなに近くで見つめても、彼の瞳に私は写っていない。写れるわけがない。何年も前からあの人だけが写っているから。
そして、渡さんが出ていったうるさい扉を見つめながらポツリ言った。
「…理由なんてないよ。気付いたら好きになってたってだけ」
今度は真っ直ぐに私だけを見つめてくる。たったそれだけのことで、胸が締め付けられるように痛む。
「恋ってそんなものじゃない?」
優しい口調で言われると、少しだけ鼓動が早まったような気がしてしまう。きっとお酒が回ってきただけなのに。
「…へぇ」
「いや、自分からこの話題振っといて反応薄っ!俺、やっぱりあいりちゃんのこと嫌いだわ~」
そう言いながら「いやだいやだ」と顔の前でヒラヒラ手を振る佑斗さん。私は負けずに言い返す。
「ま、彼氏の親友に好きになられても困りますけどねっ!」
「うざいなぁ~本当に嫌いだわ!」
佑斗さんが息がかかるくらい身を乗り出して整った顔を歪める。私はびっくりしてパッと身を引き、咄嗟に目をそらしてしまう。酔いが回っている彼にとってはたいしたことではないのだろう。と、瞬時に自分の都合のいいように解釈をする。
「そんなに繰り返して言わなくていいですよ!」
「…え?もう一回言ってほしいって?何回でも言ってやるよ!」
「そんな子供みたいなことばっかり言ってるから顔が気持ち悪いし、考えも古いんですよ~」
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…佑斗さんとはこの距離感でちょうどいいんだよね───
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