皇太子の魔法教師になったら、執着が重すぎました

mei_0101

文字の大きさ
10 / 11

第十話

しおりを挟む


 翌朝。今日はイリヤが講習に初めて参加する日だ。
 イリス・ゴルダ子爵令嬢としてはすでに何度も魔法を教えているが、イリヤはあの完璧な変身魔法で、魔力をかなり奪われているだろう。
 そのため、本気のイリヤと魔法を使うのは初めてだ。わくわくする。
 顔を洗い、身支度をしていると、簡易ポータルが光った。
「予告なしってアリなの?!」
 イリヤと私は通信石でのやり取りはしない。盗聴リスクがあるからだ。
 とはいえ、今日1時間もしたら皇宮で顔を合わせられるのに。なぜ?
 光って数分後、イリヤは身なりを完璧に整えて現れた。魔法使いが常用するローブを纏っているが、その下にはいかにも皇子様といったファーのついたジャケットに黒いシャツ、黒いスラックス姿で現れた。
 しかし、顔はムスッとしている。なんか、イリスの姿でこんな顔してる時あったな。
「俺とカフェに行かないのに、ヨアヒム・リヒターとは行くんですね?」
 急な来訪を咎める前に、先制パンチが飛んできた。
「え、ストーカー?」
「はい、もちろんストーカーです」
 気品溢れる完璧な笑顔で宣言される。完全に開き直られてしまった。
「とはいえ、本気のストーキングしたら嫌われそうなので……そこまでじゃないですよ。カフェの中のことまでは把握してません。
 この首都を飛んでる鳥って、半分くらい皇宮からの監視なんです。生活一つ一つを見ることはしていません。でも、例えば待ち合わせで頻用される時計塔周辺は情報が集まってますから、よく監視されてるんですよ。
 先生はまんまとそこに入ってきてしまったので気づきました。」
「常に首都を監視してる術者がいるってこと?すごいですね。流石帝国……」
「交代制ですけどね。皇帝は常に反乱を恐れてますから。
 その術者に金を握らせて、数人、俺が私的にマークしてもらってます。その1人がマナト先生なので。」
「ふーん……じゃあ、今後首都での行動は気をつけます」
「首都じゃなくても浮気はだめです!……そもそもヨアヒム・リヒターと何を話してたんですか?」
 浮気?パートナーにはならない、で合意した気がするが、都合よくイリヤの脳内で書き換えられたのだろうか?深掘りすると面倒なことになるため、聞かなかったことにして話を進める。
「彼はイリヤさんを警戒してたの。それでそういう話をされた。」
「先生に余計なこと吹き込んだんですね……具体的に聞いてもいいですか?」
「あなたが第四皇子を殺したと思っていて、側近もどんどん解雇したり更迭したりする暴君だと思っているみたい」
「なるほど。俺の噂の代表作2つですね。
 引っ掛かってくれてありがたいけど、講習中おびえられても困るなあ。邪魔したいわけではないですから。」
「私もそこは悩んでたんです。
 一応ヨアヒムさんには、その噂が本当だとしても、講習中はみな対等なのでよほどのことがなければ解雇や更迭なんてないと思うとは伝えましたけど、私が伝えても限界があるから。」
「うーん……とりあえずそれは俺の方で手を打ってみます。
 ……ところで、先生は噂の真相が気にならないんですか?」
 さらり、と問われたが、イリヤの目は少しおびえている。平気なフリしてるけど、まあ穏やかな噂ではないからな。
「気にはなるな。きっと噂と真相はズレてるんだろうから。そのうち、話したくなったら、言える範囲で教えて。」
「……先生は、本当に俺が第四皇子を殺していて、側近のクビも飛ばしまくる暴君だとしても、そばに置いてくれるんですか?」
 そんなに試さなくてもいいのに。
「別にいいよ。きっと、生きるために仕方なかったんでしょう。
 ……もうこの話は終わりね。」
 イリヤに正面からがばっと抱きつかれ、イリヤの頭が私の首に擦り寄せられる。
 恐る恐る、私もイリヤの背に手を回すと、もっと強い力で抱きしめられた。
「い、いたいいたい」
「す、すみません、先生!」
 イリヤが慌てて離してくれた。
「時間がある時に、聞いてくれますか?
 俺のこれまでの話」
「もちろん」
「ありがとうございます。
 ……じゃあ、ヨアヒム・リヒター対策の準備があるので、先に皇宮に戻ります。」
 さらっと皇太子の顔に戻って、皇宮に戻って行った。
 対策って、何するつもりなのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...