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そばにいたい 7
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「でも俺、免許取ったけど、車ないし、GWに坂本の車ちょっと乗ったくらいで全然乗ってないから、運転できっかな」
啓太が心配そうな顔で言った。
「まあまあ、乗ってみれば何とかなるもんよ」
坂本がまた適当なことを言う。
「でもさ、何かサギだよな。合宿免許の時とか」
ウーロンハイでちょっと酔った啓太は、口を尖らせた。
「学科はまー、しゃーないとしてもさ、力とか東、練習の時、まるでベテランの運転手に教えてるみたいだとか、教官に言われてたじゃん。しかもマニュアルで。俺なんか、マニュアルでやろうとしたら、一時間もたたないうちにオートマ限定にした方がいいって教官に言われてさ」
途端、ガハハハとみんなが笑う。
「確かに詐欺な気がするよな? 俺もちょっと意地になってマニュアルでやったけど、最初エンストばっかで、なのに、力とか東とか何の抵抗もなくするするって」
一人笑わなかった佑人が啓太に同調する。
「免許取りに行って、ベテランって、何ソレ」
不服そうな顔の佑人をニヤニヤ笑いながら、坂本が「まあまあ、負けず嫌いの佑人らしいよな。でもこいつらにコツとか教わって、一発合格だったんだしょ?」
「お蔭様で。けど、同じ初心者がコツって、バイク乗ってたっての差し引いても簡単に納得はできないよな」
「まあ、そう、深く考えなくても、な?」
佑人の疑問を坂本が曖昧にごまかしにかかる。
「ちぇ、合宿面白そうじゃん、教えてくれてたら俺も参加したのによ。俺は一発試験で取っちまったからな。坂本もそうだろ?」
甲本はまた別の方向から不服を言う。
「一発試験ってナニ?」
啓太が不思議そうな顔で聞いた。
「まあ教習所とか行かねーで、試験だけ受けるっつうやつ?」
「そんなことできるのかよ?」
さすがの啓太も納得がいかないらしい。
「だぁから、俺らバイク乗ってたし」
高三の夏休みに免許を取るなどという無謀をやらかしたと佑人も思っていたが、どうやら坂本にとってもそうたいしたことではなかったらしい。
佑人としても深く追求するつもりはないが。
どのみち、暖簾に腕押し、表だか裏だか影だか知らないが、加えて東山も、学校の成績などよりいろんな意味で自分や啓太よりはうまく世の中渡っている気がする。
何はともあれ合宿免許も楽しかったし、GWも奥多摩へこのメンツで釣りに出かけ、代わる代わる運転したりして、この仲間でいること自体が楽しい。
おそらく何のかの言いながら飲み会に顔を出す甲本も、そうに違いないと佑人は思う。
十一時過ぎに店を出ると、駅で東山と啓太、力と佑人、それに坂本と甲本の四人はそれぞれのホームに別れて電車を待った。
「タローのやつ、最初は車、ダメかと思ったけど、何回か乗せてたらちょっとずつ慣れてきた」
「ラッキーは仔犬の時から車慣れてるけど、違う車だとちょっと慣れさせないとダメかも」
各停が来て、力と佑人は電車に乗ってからも、犬の話に夢中になっている。
「しっかし、変われば変わるっつうか」
そんな二人をちらりと見やり、甲本が坂本にこそっと呟いた。
「ああ?」
「あの、俺様な力が、釣った女にエサはやらねー、あの力が、かいがいしく佑人っちに取り分けてやったりとか世話やいてる図なんざ、天変地異かって」
「ああ、今さら」
坂本はそんなことかとばかり、そっけない返事を返す。
「しかも、佑人はぽやっとしてるっつうか、どうもありゃ、佑人が苦手なものと食えそうなものを皿に交換してるんだぞ? あの、力が」
「だから、今さらだろーが」
内田たちとやりとりしながらしっかり佑人や力を見ていたらしい甲本に、観察眼だけは鋭いやつだと坂本は心の内で思う。
「内田とかもいたのによ、周りをはばからねー力と佑人のあのラブっぷり!」
「眼中にねーんだよ」
「誰も気がつかねーのかよ」
「俺に突っかかられても。まさかの力だからな」
「うう、やっぱ佑人恐るべし」
甲本は唸るように言い、向かいのドアの傍に立つ力と佑人にまた視線を向ける。
「なあ、あれか、女なんかより佑人の方がなんぼもイイってか?」
耳元で囁いた甲本の台詞に、坂本もニヤっと笑う。
「ま、そうなんじゃね? チクショ」
「何のチクショだよ?」
「うっせー」
電車は久我山に着いたが、佑人は降りない。
「ふーん、佑人、これから力の部屋に行くわけ」
「だから、うっせーんだよ、甲本」
やがて富士見台を告げるアナウンスがあり、ドアが開くと、坂本は甲本に「じゃな」と声をかけて佑人と力に続いて電車を降りる。
「あ、俺も。今日はうち帰るし」
甲本も坂本に続いて降りた。
「なら、もう一軒寄ってかね?」
坂本の提案に甲本が「だな」と答える。
「佑人、力、俺らここで」
「またな」
「うん、じゃあ、また」
佑人は振り返って坂本と甲本にそう返事をしたが、力はちょっと顔を向けただけだった。
啓太が心配そうな顔で言った。
「まあまあ、乗ってみれば何とかなるもんよ」
坂本がまた適当なことを言う。
「でもさ、何かサギだよな。合宿免許の時とか」
ウーロンハイでちょっと酔った啓太は、口を尖らせた。
「学科はまー、しゃーないとしてもさ、力とか東、練習の時、まるでベテランの運転手に教えてるみたいだとか、教官に言われてたじゃん。しかもマニュアルで。俺なんか、マニュアルでやろうとしたら、一時間もたたないうちにオートマ限定にした方がいいって教官に言われてさ」
途端、ガハハハとみんなが笑う。
「確かに詐欺な気がするよな? 俺もちょっと意地になってマニュアルでやったけど、最初エンストばっかで、なのに、力とか東とか何の抵抗もなくするするって」
一人笑わなかった佑人が啓太に同調する。
「免許取りに行って、ベテランって、何ソレ」
不服そうな顔の佑人をニヤニヤ笑いながら、坂本が「まあまあ、負けず嫌いの佑人らしいよな。でもこいつらにコツとか教わって、一発合格だったんだしょ?」
「お蔭様で。けど、同じ初心者がコツって、バイク乗ってたっての差し引いても簡単に納得はできないよな」
「まあ、そう、深く考えなくても、な?」
佑人の疑問を坂本が曖昧にごまかしにかかる。
「ちぇ、合宿面白そうじゃん、教えてくれてたら俺も参加したのによ。俺は一発試験で取っちまったからな。坂本もそうだろ?」
甲本はまた別の方向から不服を言う。
「一発試験ってナニ?」
啓太が不思議そうな顔で聞いた。
「まあ教習所とか行かねーで、試験だけ受けるっつうやつ?」
「そんなことできるのかよ?」
さすがの啓太も納得がいかないらしい。
「だぁから、俺らバイク乗ってたし」
高三の夏休みに免許を取るなどという無謀をやらかしたと佑人も思っていたが、どうやら坂本にとってもそうたいしたことではなかったらしい。
佑人としても深く追求するつもりはないが。
どのみち、暖簾に腕押し、表だか裏だか影だか知らないが、加えて東山も、学校の成績などよりいろんな意味で自分や啓太よりはうまく世の中渡っている気がする。
何はともあれ合宿免許も楽しかったし、GWも奥多摩へこのメンツで釣りに出かけ、代わる代わる運転したりして、この仲間でいること自体が楽しい。
おそらく何のかの言いながら飲み会に顔を出す甲本も、そうに違いないと佑人は思う。
十一時過ぎに店を出ると、駅で東山と啓太、力と佑人、それに坂本と甲本の四人はそれぞれのホームに別れて電車を待った。
「タローのやつ、最初は車、ダメかと思ったけど、何回か乗せてたらちょっとずつ慣れてきた」
「ラッキーは仔犬の時から車慣れてるけど、違う車だとちょっと慣れさせないとダメかも」
各停が来て、力と佑人は電車に乗ってからも、犬の話に夢中になっている。
「しっかし、変われば変わるっつうか」
そんな二人をちらりと見やり、甲本が坂本にこそっと呟いた。
「ああ?」
「あの、俺様な力が、釣った女にエサはやらねー、あの力が、かいがいしく佑人っちに取り分けてやったりとか世話やいてる図なんざ、天変地異かって」
「ああ、今さら」
坂本はそんなことかとばかり、そっけない返事を返す。
「しかも、佑人はぽやっとしてるっつうか、どうもありゃ、佑人が苦手なものと食えそうなものを皿に交換してるんだぞ? あの、力が」
「だから、今さらだろーが」
内田たちとやりとりしながらしっかり佑人や力を見ていたらしい甲本に、観察眼だけは鋭いやつだと坂本は心の内で思う。
「内田とかもいたのによ、周りをはばからねー力と佑人のあのラブっぷり!」
「眼中にねーんだよ」
「誰も気がつかねーのかよ」
「俺に突っかかられても。まさかの力だからな」
「うう、やっぱ佑人恐るべし」
甲本は唸るように言い、向かいのドアの傍に立つ力と佑人にまた視線を向ける。
「なあ、あれか、女なんかより佑人の方がなんぼもイイってか?」
耳元で囁いた甲本の台詞に、坂本もニヤっと笑う。
「ま、そうなんじゃね? チクショ」
「何のチクショだよ?」
「うっせー」
電車は久我山に着いたが、佑人は降りない。
「ふーん、佑人、これから力の部屋に行くわけ」
「だから、うっせーんだよ、甲本」
やがて富士見台を告げるアナウンスがあり、ドアが開くと、坂本は甲本に「じゃな」と声をかけて佑人と力に続いて電車を降りる。
「あ、俺も。今日はうち帰るし」
甲本も坂本に続いて降りた。
「なら、もう一軒寄ってかね?」
坂本の提案に甲本が「だな」と答える。
「佑人、力、俺らここで」
「またな」
「うん、じゃあ、また」
佑人は振り返って坂本と甲本にそう返事をしたが、力はちょっと顔を向けただけだった。
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