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Tea Time 15
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「勝浩が車が欲しいとか、ゼミ合宿に行くのに車を使うとか、俺は何も聞いちゃいなかった」
「はあ?」
武人は幸也が一体何を言い出したのかと、ぽかんと眉をひそめる。
「何かってぇと、タケさんタケさんて、お前によく懐いてるし。車が必要なら俺のを使えっていうのに、先にタケさんに借りたからそっち優先とか言いやがって」
「お前、何言ってんの?」
「俺に先に言えばいいだろうが! そんでアウディのセダンなんか買えないとかなんとか、誰があいつから金取るって言ったよ!」
「おい、幸也……」
呆れ顔で武人は幸也を見た。
「そしたら、今度は俺には経済観念がないとか何とか、んなこたよくわかってるさ! なくて悪かったよ。加えて、きっと今までのしがらみとか色々があるから、勝浩にはやっぱ俺が信用できねえんだよ」
幸也はカッカきていて武人に口を挟ませない。
「とにかく!」
幸也は武人に鍵を放る。
「明日から、猫、頼む。毎日じゃなくてもいいが、たまにのぞいてやってくれ」
「それはいいが、幸也、あのな……」
「もう寝るから」
鍵を受け取ったた武人を残して幸也はたったか寝室に向かう。
「ちょ、待てよ! 幸也、何をバカな誤解をしてるか知らんが、勝っちゃんがシツコク思い続けてるのは、貴様だからな。ああ、確かに未だに志央のこと気にしてて、俺は志央にはなれないからとかなんとか言ってたさ、こないだも。あいつの根性は曲がりくねってるからな。しかも超頑固。お前、このままだと勝っちゃん、殻に籠もっちまうだけだぞ」
武人は一気に言い放つ。
「ちょっと頭冷やせよ!」
パタンと寝室のドアが閉まる。
武人は、全く、と頭を振る。
「どんなくだらねーしがらみだよ」
ぶつくさ言いながら、武人は部屋を出た。
幸也は武人が帰ったらしい音を耳にしながら、ベッドに倒れこんだ。
――――勝浩がシツコク思い続けているのは貴様だ
ああは言ったものの、武人はそれを確かめたわけじゃなかろうさ。
だが、このままでは何もかも埒が明かない。
「まあ、とにかくちょっと頭冷やしてこないとな」
ぼそりと幸也の口から独り言が漏れた。
「はあ?」
武人は幸也が一体何を言い出したのかと、ぽかんと眉をひそめる。
「何かってぇと、タケさんタケさんて、お前によく懐いてるし。車が必要なら俺のを使えっていうのに、先にタケさんに借りたからそっち優先とか言いやがって」
「お前、何言ってんの?」
「俺に先に言えばいいだろうが! そんでアウディのセダンなんか買えないとかなんとか、誰があいつから金取るって言ったよ!」
「おい、幸也……」
呆れ顔で武人は幸也を見た。
「そしたら、今度は俺には経済観念がないとか何とか、んなこたよくわかってるさ! なくて悪かったよ。加えて、きっと今までのしがらみとか色々があるから、勝浩にはやっぱ俺が信用できねえんだよ」
幸也はカッカきていて武人に口を挟ませない。
「とにかく!」
幸也は武人に鍵を放る。
「明日から、猫、頼む。毎日じゃなくてもいいが、たまにのぞいてやってくれ」
「それはいいが、幸也、あのな……」
「もう寝るから」
鍵を受け取ったた武人を残して幸也はたったか寝室に向かう。
「ちょ、待てよ! 幸也、何をバカな誤解をしてるか知らんが、勝っちゃんがシツコク思い続けてるのは、貴様だからな。ああ、確かに未だに志央のこと気にしてて、俺は志央にはなれないからとかなんとか言ってたさ、こないだも。あいつの根性は曲がりくねってるからな。しかも超頑固。お前、このままだと勝っちゃん、殻に籠もっちまうだけだぞ」
武人は一気に言い放つ。
「ちょっと頭冷やせよ!」
パタンと寝室のドアが閉まる。
武人は、全く、と頭を振る。
「どんなくだらねーしがらみだよ」
ぶつくさ言いながら、武人は部屋を出た。
幸也は武人が帰ったらしい音を耳にしながら、ベッドに倒れこんだ。
――――勝浩がシツコク思い続けているのは貴様だ
ああは言ったものの、武人はそれを確かめたわけじゃなかろうさ。
だが、このままでは何もかも埒が明かない。
「まあ、とにかくちょっと頭冷やしてこないとな」
ぼそりと幸也の口から独り言が漏れた。
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