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恋ってウソだろ?! 37
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「そういえば、高橋が『街』を気に入って買いたいって言ってるんだが」
藤堂が思い出したように悠に言った。
藤堂の言う『街』は二〇〇号の連作だが、悠はしかし途端面白くなさそうな顔をした。
「高橋って、こないだのマッチョヤローだろ? 黒いカード持ってたヤツ」
作品に見入っていた佐々木には気になるキーワードだった。
「すごいな、もういくつか売れてるんや?」
佐々木は悠を振り返った。
「去年の展覧会で、学生のうちからもうファンができてるんですよ、彼」
浩輔が自慢げに教えてくれる。
「黒いカードって? 資産家のお客さんがいてるん?」
ついそんな言葉が佐々木の口をついて出る。
「高橋さんて、河崎さんや藤堂さんの中学高校の後輩の方で、先日、フラリとやってきて、小品を買っていかれたんだけど、ブラックカード出すもんだから、悠ちゃん、イラついちゃって」
「何で? お金持ちが嫌いなん?」
悠は口を尖らせてむくれた顔を隠さない。
「それが、前に藤堂さんと一緒にケーキを買おうとしてゴールドカードを出したらしくて、ケーキなんかにそんなぴかぴかしたカードなんか使うなって怒って」
浩輔は笑いながら続ける。
「藤堂さんのことだから、ピカピカしてなきゃいいだろうってなもんで、ブラックカードに変えて、これならいいだろうって、悠ちゃんも一時は納得してたんですけど、受付の啓子さんに、ブラックカードはゴールドカードよりも上だって教えられて、悠ちゃん、藤堂さんがだましたって、しばらく口聞かなかったりで」
「まあ、カードのことなんか知らんかて、絵を描くのに関係あれへんよな」
「佐々木さんも好きなこと以外興味ないですもんね。ってか、この業界にいるくせに、芸能人とかもあんまり知らないでしょ? 気になる人しか覚えないんだもんな。テレビあんまり見ないし」
佐々木はちょっと怪訝な顔をする。
「心外やな、俺が世間知らずやて言いたいわけ? モーニング何たらとかAKBなんたらは知らないが、吉永百合やブルース・ウイルスは知ってるで。古谷さんも」
「吉永百合って、佐々木さん、いつの時代の人ですか。古谷さんとか仕事関係だったからでしょ?」
浩輔はやはり、と半分呆れた顔をする。
「佐々木さん、高橋って金持ちのボンボンで、五十嵐くんに言わせるといけ好かないやつかもしれないが、なかなか物を見る目はあるんですよ」
浩輔と佐々木の会話を聞いていたらしく、藤堂が近づいてきて口を挟んだ。
「……へえ、そうなんですか」
「もともとオヤジさんの会社でアナリストやってたのが、人間関係築くの下手ですぐやめて、何でも今度会社興すとかで。そういや、恋人に振られて日本に戻ってきたとか言ってたな」
いくつかのキーワードがトモに当てはまるような気がした佐々木は心臓がざわっと脈打つのがわかった。
藤堂が思い出したように悠に言った。
藤堂の言う『街』は二〇〇号の連作だが、悠はしかし途端面白くなさそうな顔をした。
「高橋って、こないだのマッチョヤローだろ? 黒いカード持ってたヤツ」
作品に見入っていた佐々木には気になるキーワードだった。
「すごいな、もういくつか売れてるんや?」
佐々木は悠を振り返った。
「去年の展覧会で、学生のうちからもうファンができてるんですよ、彼」
浩輔が自慢げに教えてくれる。
「黒いカードって? 資産家のお客さんがいてるん?」
ついそんな言葉が佐々木の口をついて出る。
「高橋さんて、河崎さんや藤堂さんの中学高校の後輩の方で、先日、フラリとやってきて、小品を買っていかれたんだけど、ブラックカード出すもんだから、悠ちゃん、イラついちゃって」
「何で? お金持ちが嫌いなん?」
悠は口を尖らせてむくれた顔を隠さない。
「それが、前に藤堂さんと一緒にケーキを買おうとしてゴールドカードを出したらしくて、ケーキなんかにそんなぴかぴかしたカードなんか使うなって怒って」
浩輔は笑いながら続ける。
「藤堂さんのことだから、ピカピカしてなきゃいいだろうってなもんで、ブラックカードに変えて、これならいいだろうって、悠ちゃんも一時は納得してたんですけど、受付の啓子さんに、ブラックカードはゴールドカードよりも上だって教えられて、悠ちゃん、藤堂さんがだましたって、しばらく口聞かなかったりで」
「まあ、カードのことなんか知らんかて、絵を描くのに関係あれへんよな」
「佐々木さんも好きなこと以外興味ないですもんね。ってか、この業界にいるくせに、芸能人とかもあんまり知らないでしょ? 気になる人しか覚えないんだもんな。テレビあんまり見ないし」
佐々木はちょっと怪訝な顔をする。
「心外やな、俺が世間知らずやて言いたいわけ? モーニング何たらとかAKBなんたらは知らないが、吉永百合やブルース・ウイルスは知ってるで。古谷さんも」
「吉永百合って、佐々木さん、いつの時代の人ですか。古谷さんとか仕事関係だったからでしょ?」
浩輔はやはり、と半分呆れた顔をする。
「佐々木さん、高橋って金持ちのボンボンで、五十嵐くんに言わせるといけ好かないやつかもしれないが、なかなか物を見る目はあるんですよ」
浩輔と佐々木の会話を聞いていたらしく、藤堂が近づいてきて口を挟んだ。
「……へえ、そうなんですか」
「もともとオヤジさんの会社でアナリストやってたのが、人間関係築くの下手ですぐやめて、何でも今度会社興すとかで。そういや、恋人に振られて日本に戻ってきたとか言ってたな」
いくつかのキーワードがトモに当てはまるような気がした佐々木は心臓がざわっと脈打つのがわかった。
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