恋ってウソだろ?!

chatetlune

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恋ってウソだろ?! 38

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「ふーん、その高橋って………」
「はい?」
「あ……いや」
 佐々木はその高橋のことを浩輔にもっと聞こうとしてやめた。
 んな偶然あるかいな。
 それにもし、トモがその高橋何某やったとして、だからどうやと?
 そうや、トモがその高橋やからというて、何も変われへん。
 失恋して、お互いをその身代わりにしてるだけや。
 特に………、トモはそんな気がする。
 好きな相手にしてやりたかったことを、俺を身代わりにやってる、おそらくそうや。
 お互いに慰めあってる、それだけや。
 トモが俺といることで、少しでも気を紛らわせるのなら、それでええやんか。
 
 

 

 
 
 
 週末までに風邪を治すはずだったのだが、箱根についた途端、案の定佐々木は熱を出して寝込んでしまった。
 車の中で、やばいかなとは思ったものの、無理に来てしまったためにかえってトモに迷惑をかけたことを、佐々木は詫びた。
「気にしないで。おばちゃんにおかゆ作ってもらったから、食べない?」
「悪い……もう少し、寝てから………」
 佐々木の知らないうちにトモは、近くの開業医に往診にきてもらっていた。
「すまん……」
「あのセンセも俺が悪ガキの頃からしょっちゅう怪我とか水疱瘡とかやって、散々世話になってる人だから、よく怒鳴りつけられたよ、昔は」
「そうなん……」
 やはり風邪をこじらせたらしく、よく寝て栄養をとるようにと言い渡して、医師は帰って行った。
 ポカリスエットとビタミン剤やいくつか薬を飲み、それにトモの看病のお陰で土曜日の朝には熱は下がった。
 風邪が移るから離れていろというのに、トモは佐々木をずっと抱きしめていた。
 子供の頃から丈夫なのが取柄だった佐々木だが、ほんのたまに熱が上がると不安要素が沸いてきて、ひどく心細くなる。
 トモの温かい腕はとても安心できて、ぐっすり眠ることができたのが大きかったのかもしれない。
 今日明日はゆっくり寝ていろというトモに甘えて、ベッドでうつらうつらしていると、傍にトモが立っていた。
「どう? 調子は」
「随分、ようなった……」
「ご飯はおばちゃんがきて作ってくれるから、ゆっくり休みなよ」
 外はまた今週も雨で肌寒い。
 トモはトレーニングウエアで、汗をかいている。
「何…してた……?」
「下でちょっとトレーニング。身体、なまるから」
 結局、トモに世話をやかせっぱなしで休みは終わり、日曜の夜、番町の家までトモは佐々木を送り届けた。
「ほんま、厄介かけてしもて……すまん……」
「いや、全然。むしろ俺は無理をしてでも佐々木さんが俺に付き合ってくれたことが嬉しかった」
「え………」
「仕事は無理をしちゃだめだよ。じゃ、また金曜に」
 本当に嬉しそうに笑って、トモは帰っていった。
 トモの言葉は、佐々木の思いを代弁しているように思われた。
 心臓の鼓動が少し激しくなる。
 何……? また熱があがるんやないやろ……
 何やら頭の中が混乱していた。
 とにかく、風邪治そう。
 佐々木はそれ以上考えるのをやめた。
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