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恋ってウソだろ?! 62
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今、沢村の横にいるのが彼女ではなく自分だったら、彼女と二人であれば微笑ましくさえ思われるだろうそれが、おそらく侮蔑と嘲笑に取って代わるのは火を見るより明らかだと、佐々木は思った。
ここまで強い思いを抱くとは夢にも思っていなかったのに。
そう、たかだかハロウィンの夜行きずりに会ったしかも男に。
まるでじっと見つめる佐々木の視線を感じたかのように、沢村が振り返る様子を見せたので、佐々木は慌てて目をそらした。
「俺、そろそろ帰るわ。直ちゃん、どないする?」
「…………そう? だったら、ナオも帰る」
二人は立ち上がると、藤堂や浩輔に暇を告げた。
「大丈夫? 佐々木さん。顔色が悪いけど」
甲州ワインを一本ずつ土産にと渡しながら、心配そうに藤堂が聞いた。
「え……? ちょっと飲みすぎたかな」
佐々木はまた、さっきと同じむかつきに見舞われていた。
今度はさらに、胸の痛みを伴って佐々木を襲う。
これって……要は…
嫉妬。
そして、トモを失うことの痛み。
佐々木はこっそり自分を嘲笑った。
自分でゲームオーバーにしておいて、俺ってほんま、アホやわ。
そうや、あれは沢村で、もう、トモやないのや。
佐々木は心の中で自分に言い聞かせる。
「気をつけてね。メリー・クリスマス!」
ドア口まで来て、藤堂は二人を送ってくれた。
「また、雨になってたな。寒いで、外は、きっと」
「浩輔ちゃん、タクシー、呼んでくれたみたい」
直子がエレベータのボタンを押した。
その時、少し部屋のドア口がまた賑わいだ。
「ちょっと待てよ! 佐々木さん!!」
背中に呼びかけられ、佐々木は心臓が凍りついた。
アホか! 何で今まで知らんふりしとったのに!
振り返った直子につられるように、佐々木もゆっくりと振り返らないではいられなかった。
佐々木を憎んでいるかのような形相の沢村の眼差しはしかし、必死の悲しさを湛えていた。
互いの瞳の奥を覗き込むかのように視線を重ねた二人は、瞬時に互いの思いを感じ取った。
もしも仮に佐々木が直子だったら、そのまま沢村の胸に飛び込むといったシーンが展開されていたかもしれない。
だが、佐々木は直子ではなかった。
とにかく、その場をおさめなくてはならなかった。
「メリー・クリスマス」
佐々木は言った。
踵を返そうとして、今にも走り出そうとする沢村の腕を押さえている藤堂の姿が見えた。
そのまま二人は上がってきたエレベーターに乗り込んだ。
直子は佐々木の腕にしがみつくように自分の腕をからませていた。
タクシーの中でも、直子は何も聞かず、佐々木の肩に頭を預けていた。
「気をつけてね」
永福町にある直子の家の前で直子を下ろすと、直子は手を振ってタクシーを見送った。
佐々木は微笑み、一番町の自宅に着くまでじっと目を閉じていた。
ここまで強い思いを抱くとは夢にも思っていなかったのに。
そう、たかだかハロウィンの夜行きずりに会ったしかも男に。
まるでじっと見つめる佐々木の視線を感じたかのように、沢村が振り返る様子を見せたので、佐々木は慌てて目をそらした。
「俺、そろそろ帰るわ。直ちゃん、どないする?」
「…………そう? だったら、ナオも帰る」
二人は立ち上がると、藤堂や浩輔に暇を告げた。
「大丈夫? 佐々木さん。顔色が悪いけど」
甲州ワインを一本ずつ土産にと渡しながら、心配そうに藤堂が聞いた。
「え……? ちょっと飲みすぎたかな」
佐々木はまた、さっきと同じむかつきに見舞われていた。
今度はさらに、胸の痛みを伴って佐々木を襲う。
これって……要は…
嫉妬。
そして、トモを失うことの痛み。
佐々木はこっそり自分を嘲笑った。
自分でゲームオーバーにしておいて、俺ってほんま、アホやわ。
そうや、あれは沢村で、もう、トモやないのや。
佐々木は心の中で自分に言い聞かせる。
「気をつけてね。メリー・クリスマス!」
ドア口まで来て、藤堂は二人を送ってくれた。
「また、雨になってたな。寒いで、外は、きっと」
「浩輔ちゃん、タクシー、呼んでくれたみたい」
直子がエレベータのボタンを押した。
その時、少し部屋のドア口がまた賑わいだ。
「ちょっと待てよ! 佐々木さん!!」
背中に呼びかけられ、佐々木は心臓が凍りついた。
アホか! 何で今まで知らんふりしとったのに!
振り返った直子につられるように、佐々木もゆっくりと振り返らないではいられなかった。
佐々木を憎んでいるかのような形相の沢村の眼差しはしかし、必死の悲しさを湛えていた。
互いの瞳の奥を覗き込むかのように視線を重ねた二人は、瞬時に互いの思いを感じ取った。
もしも仮に佐々木が直子だったら、そのまま沢村の胸に飛び込むといったシーンが展開されていたかもしれない。
だが、佐々木は直子ではなかった。
とにかく、その場をおさめなくてはならなかった。
「メリー・クリスマス」
佐々木は言った。
踵を返そうとして、今にも走り出そうとする沢村の腕を押さえている藤堂の姿が見えた。
そのまま二人は上がってきたエレベーターに乗り込んだ。
直子は佐々木の腕にしがみつくように自分の腕をからませていた。
タクシーの中でも、直子は何も聞かず、佐々木の肩に頭を預けていた。
「気をつけてね」
永福町にある直子の家の前で直子を下ろすと、直子は手を振ってタクシーを見送った。
佐々木は微笑み、一番町の自宅に着くまでじっと目を閉じていた。
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