恋ってウソだろ?!

chatetlune

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恋ってウソだろ?! 61

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 何、やってんね……だらしないで、俺………。
 どうしても、沢村をまともに見ることが出来なかった。
 もし目を合わせたら、自分が何を口走るかすらわからなかった。
 とっとと帰ればええんや。
 そう思うそばから、沢村がいる空間にもう少しいたいとそう言っている自分がいた。
「これも美味しいよ、塩漬けの黒オリーブ。佐々木ちゃん好きだよね」
 直子が今度は黒オリーブを入れた器とグラスを持って戻ってきた。
「はい」
 口元にフォークに刺したオリーブの実を差し出されて、佐々木は口に入れた。
「うん、美味い」
 そんな二人のやりとりは、古巣のジャスト・エージェンシーの人間なら見慣れているいつもの光景だが、端からは仲のよいカップルと見られるだろうことなど、佐々木はあまり考えてはいなかった。
 リビングの大時計があと数分で午前零時を告げようとしていた。
「わあ、雪」
 直子が立ち上がった。
 リビングいっぱいに広がる夜景にふわふわと雪が舞っていた。
「ひとみさんからいただいたビンテージワイン、開けますね」
 しばし雪に見とれていた直子は、ボトルを開けようとしている藤堂のもとへまた佐々木を引っ張っていく。
「俺はええよ」
「だって、せっかくじゃない」
 コルクを抜いた藤堂はテイスティングをしてから、ソムリエよろしく澱を舞い上がらせないように静かに栓を抜いてグラスに注ぐ。
「熟成されたいい香りだ」
 藤堂が言った。
「ほんと、美味しい」
 ひとみもご満悦だ。
「カビくさいんじゃねーの?」
 下柳が恐る恐る口をつける。
「ヤギちゃんに飲ませてもわかんないわね~」
 ひとみはからから笑う。
「ちょっと、せっかくのクリスマスパーティにそんな仏頂面、やめてよね、高広」
 ひとみの辛らつな声が向けられたのは、いつの間に来ていたのか、青山プロダクションの工藤だった。
「せっかくのイブにお前の声なんか聞けば、仏頂面もしたくなるさ」
「何よ、それ」
「まあまあ、お二人とも。せっかくのクリスマス、楽しくいきましょう」
 二人の間に割って入った藤堂がすぐ横にあるスタンウェイの蓋をあけると、ジャズにアレンジした『ヒイラギ飾ろう』の旋律を奏で始めた。
 やがて藤堂からキョウヤにピアノの弾き手は変わり、弾き語りでホワイトクリスマスを歌い始めた頃、工藤は良太を伴って帰っていった。
「山内ひとみと工藤さんって、つき合ってるのかな。ねえ、ほら、あの二人もいい感じ?」
 直子に言われて顔を向けた先には、窓辺に佇む二人の男女のシルエットがあった。
「岡田マリオン、ここぞとばかりに沢村に接近してるし。沢村も満更じゃない感じよねぇ。美男美女ってあーゆうの、言うんだねぇ」
 感心したように直子が言った。
 その夜、佐々木は初めて沢村をまともに見た。
 二人はそれこそお似合いのカップルと誰からも言われそうな雰囲気だった。
 途端、佐々木は、さっき沢村が横に立った時の自分の感情がひどく滑稽に思えた。
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