主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第7話

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ベイクは生い茂る草木を手で払い除けながら歩みを進める。ベイクの手には、空の大きな麻袋を握り締めていた。
足場の悪い森のせいなのか、焦燥感からなのか分からないがベイクの息は荒く、目的地を急いでいる様であった。
自分勝手な行動だとは分かっているが、こんな危険なことを村民に知られたくもないし、させたくもない。
だからこそ、ベイクは取り引きを持ちかけられたあの日から全て独断で動いていたのだ。


ーーーーー

しばらく歩いていると、ひらけた場所に辿り着く。
人為的に森を切り開いたところだ。

「一日に二回も来るとは珍しいな」

荒砥に凹凸の激しい石包丁雑に押し当てながらそう言ったのは、身の丈三メートル越えの一ツ目鬼サイクロプスであった。
サイクロプスは、焚き火の近くにあぐらをかき陣取っており、その周りに部下と思われる小鬼ゴブリン醜鬼オークがベイクを威圧する眼光を向けていた。
ベイクは平静を装いながら、サイクロプスの前に恐る恐る近づく。
ギョロリとサイクロプスの目がベイクを見下ろし、「用件はなんだ?」と猛獣の唸り声に似た重低音でサイクロプスが聞いてくる。

「何度もここに来てしまってすみません。実は、ゴオズさんにお願いがありまして・・。」

ヘコヘコと情けなく頭を上下させ下手に出るベイクに「それで?」と、話を促しながら巨大な石包丁を研ぐ。
その不快音に耳を塞ぎながらベイクは話し始める。

「もう少しだけゴオズさんのお宝を借して頂けませんか?村のヤツら、あの量の宝じゃ村を離れようとしないんです。全員頭が固くて、魔族なら事情を話せばどうにかなると思っているようで手に負えないんですよ。だからもっと私が宝を持ち帰ると、魔族の報復を恐れて村から離れるはずです!だからどうか・・。」

「あー、そのことなんだがもう大丈夫だ」

サイクロプスのゴオズは自身の頭を掻きながらベイクの話を遮る。
ゴオズは気だるそうに石包丁を片手に、立ち上がるとその巨躯が露わになり、ベイクは固唾を飲み萎縮する。

「ど、どういうことですか?」

恐怖で身体を震わしながらベイクそう訊ねる。
その言葉を聞いたゴオズの口角が少し上がる。

「元々は、あの村を襲う動機が欲しかっただけなんだが、俺らに村を襲うことを拒否してた部隊長が死んじまってな、俺の独断で動けるようになったんだよ」

「そ、それって・・。」

怯えるベイクにゴオズは悪魔のような醜悪な笑みを浮かべ、ベイクを嘲笑う。

「お前との取り引き無しになったんだよ。今からお前の村をぶっ潰しに行くんだよ!まあ、もともと村を襲うのは決まっていだんだけどな!」

ゴオズは腹を抱えて笑う。それに呼応するように周りのゴブリンやオークもゲラゲラとベイクに向かって下卑た笑い声をあげる。

「そ、そんな、約束が違うじゃないですか!?あの村にある魔除けの石をゴオズさんに渡せば村の人たちに手を出さないってそう言っていたじゃないですか。だから安全に村のみんなを・・。」

「キャンキャンうるせえんだよガキがっ!」

「があっ!?」

サイクロプスは力任せに腕を振り下ろしベイクにぶつける。
常人のベイクは抵抗することもできずに大木に打ちつけられてしまう。

「ゴホッゴホッ・・。ど、どうして」

「お前は体のいい駒だったよ。お前一人に話を持ちかけたのも騙しやすそうだったからだよ!俺ら魔族がなんで虫ケラ同然のお前らを生かしておかなきゃなんねーんだよ!」

ゴオズは顔を歪めて笑いを堪えていた。
ベイクは下唇を噛み締め、こぼれそうになる涙を我慢する。
悔し涙なのか、痛みなのか判別はつかないが、涙で視界が霞む。

「そういえば、前も馬鹿な夫婦におんなじことを提案したことがあったな。村民全員が街に住むために必要な金銀財宝と、魔除けの石を交換するっていうヤツだったが、アイツら勘の良さだけは良かったみたいで俺の嘘を見抜きやがったんだよ・・。」

昔のことを思い出し、ゴオズは意気揚々と自慢話のように話し始める。
その話の人物を察したベイクの目が見開く。

「ま、まさか・・!?」

「そしたら俺の提案を拒否しやがって、俺が宝を盗まれて村を襲うシナリオが全部水の泡になりやがった!だからあの夫婦をくびり殺したときは最高にスカッとしたぜ!女の方は泣きながら子供の名前を呼んでいたぞ、『ベイク!ベイク』ってな・・ハハハハハ!!」

「ふ・・ふざけるな・・!?」

(コイツが俺の両親を・・・!?)

悔しさや憎悪の感情から、堪え切れずにベイクの目から涙が溢れる。怒りから身体の震えが止まらない。

「ゴオズの兄貴、コイツ泣いてますぜ!ほら見てくださいよ!」

「情けねえガキだ。この世は力が全てだ、そんなに睨んでも弱いやつは強いやつに道を譲って生きていくしかねーんだよ」

ゴオズはゴミを見るかのような蔑んだ目でベイクを見る。
ベイクはせめてもの思い出その場で膝をつき頭を地面に擦り付ける。

「お願いします・・。村はいりません、だから、せめて村のみんなの命だけは助けて下さい・・。」

奥歯を噛み締め、今にもゴオズを殴りたい感情を抑え、ベイクは懇願する。
だがゴオズの返答は・・。

「見返りは?」

「・・は?」

ゴオズの無常な一言にベイクは呆けた顔を晒してしまう。

「村のヤツらを生かして俺らのためになることはあるのか?あんな貧乏村のヤツら生かしたところで野垂れ死ぬだけだろうが!?むしろ、村のヤツらをボロ雑巾みたいにして殺した方が俺らの楽しみ、玩具になれるんだ、そっちの方が百倍マシだろ?なあお前ら!」

「あああぁぁぁああ!!」

ベイクを囲むように響く笑い声が降りかかりベイクは声を上げて泣き叫ぶ。

「まあ、そういう意味ではお前も大分楽しめたぜ。俺の手のひらで無様に踊るピエロとしてなあ!ハハハハハハ!残念、残念だなぁ、お前が村のみんなを守ろとしてやったことは全部無駄になったんだよ!」

ーーーーー

「無駄になんかなってないわよ・・。」

鬼たちの笑い声の中に凛とした声が聞こえ、静寂が生まれる。

「なんだとぉ!?・・ーーッ!」

次の瞬間、ゴオズ足元から巨大な鉱物の柱のような塊が飛び出し、巨躯であるゴオズを吹き飛ばしたのだった。

「この子のおかげで、心の底から貴方たちをぶちのめしたいと思わせてくれたわ」

ベイクの目の前に現れたのは、数時間前に出会ったばかりの女性であった。
ただ、少し違っていたのは彼女の頭から突出したサイのよう一角と、凹凸が激しい鱗の尻尾が生えていたのである。

「上司として貴方たちに再教育してあげる」

不敵に笑う彼女を纏う雰囲気は怒りに満ち溢れていた・・。
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