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第10話
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ゴオズとの戦闘後、私たちはベイクと長老が提案した宴に主役として参加していた。
というのも、事の顛末を語ったベイクは長老と和解し、そのいざこざに巻き込み、村の危機を救った私たちにお礼がしたいと言い出したので、断る理由もなく了承したのだった。
「セーサちゃんこれも食べてみて!森のキノコとテーグボアの燻製肉のソテーだよ」
「あ、ありがとうライナ」
「セーサちゃん!こっちのテーグ麦で作った山菜パスタの方が美味しいよ」
「へえ、美味しそうね。後で頂くわ」
私は村の少女たちに囲まれあれよあれよと、おもてなしを受けていた。
目線の先には、傀儡・・いやゼンが男衆にお酌を受けドンチャン騒ぎをしているのを眺めていた。
(あっちはあっちで楽しそうね・・。)
そんな羨望の眼差しで見ていると、少女たちが私をまじまじと見ていることに気づく。
「ど、どうしたの?」
「セーサちゃんの種族ってなんなの?」
戸惑っていた私にライナが目を輝かしてそんなことを訊ねる。
「え?えーと・・。」
私が魔族であることはベイクが話しており、村の子供たちは初めて見る魔族に興味津々といった様子であった。
「ハーフエルフ・・かな・・?」
と、お茶を濁して答えた私の言葉に少女たちの好奇心が爆発し、質問攻めに合う。
「その服はエルフの服なの?」
「普段は何を食べているの?」
「お肌のケアは?」
「彼氏はいるの?」
など、子供といっても女であるため、少しませた質問が多く、私はたじろぐ。
「何でセーサちゃんには、長い耳がないの?」
「ーーッ!?」
その質問で、表情が硬くなってしまった。
咄嗟に手を耳にやり、覆い隠してしまったことも良くなかったのだろう。
「えっとー・・。」
私はあからさまに出てしまったその表情を変えようとするが、上手く笑えず困惑する。
少女たちの間に気まずい雰囲気が流れる。
「あ、あのセーサちゃん・・。」
「おいお前たち、村を助けてくれたセンサザールさんを困らせるなよ。というか子供はもう寝る時間だぞ、ここからは大人の時間だ。お前たちはさっさと寝ろ」
冗談混じりにそう言いながら、ベイクが私と子供たちの間に入ってくる。ベイクの横には肩を組まれたゼンがいつもと変わらない無表情で連れてこられていた。
「はあ・・私ったら顔に出すぎ・・。」
少女たちは申し訳なさそうな顔をしながら親の元へ帰っていく。
私は申し訳なさと安堵から深いため息を吐いてしまう。
ーーーーー
「ほら、麦酒は飲めるか?」
「ベイク、気遣ってくれてありがとう。嗜む程度だけれど好きだわ」
ベイクが木樽型のジョッキを私に渡して、横に座る。その隣に傀儡が腰掛ける。
「まあ、誰だって話したくないことの一つや二つあるよな」
私が麦酒を見つめていると、ベイクがそう言い月夜を眺める。
「ベイクも隠していたしな」
私はゼンの一言に「おい!」と、慌てるベイクを見て笑みが溢れる。
「別に後ろめたい話じゃないの。ただあの子達には見せられないなと思って・・」
私はそう言い、肩まである髪を掻き分けて、耳を露出させる。
「・・・っ!?」
私の耳を見たベイクは絶句し、視線を下げた。
エルフの耳は耳介と呼ばれる外部が尖ったように張り出ているのだが、私の耳介は人と同じように丸く削られていたのだ。
「歯のようなもので喰いちぎられているな。噛み跡の凹凸が激しいから、魔物にでも襲われたのか?」
冷静に分析するゼンにシラけた顔を向けるベイク。
その二人の顔を見て私は渇いた笑いをこぼしてしまう。
「そうだったらどれほど良かったか・・。」
私は、どう話を切り出そうか悩んでいるベイクとまじまじと私の耳を見るゼンを見て、「あ~」と、言いながら伸びをする。
「別に昔のことだから気にしてないわよ。それよりもこんなしけた雰囲気じゃ麦酒が不味くなるわ!」
私のから元気を見てベイクが頭を掻いて立ち上がる。
「あ~クソッ!何て言っていいかわからないが、センサザールさんの言う通りだ。
よし!今日はぶっ倒れるまで飲んで過去のことなんて全部忘れちまおうぜ!」
ベイクが木樽型のジョッキを掲げそう宣言する。
「慰めようとして失敗したから飲むという原理がわからない」
「知るか知るか!そんな堅苦しいこと言ってないでグラスを傾けろ!ほらっ、センサザールさんも飲みましょう」
ベイクの掛け声の下、私とゼンはグラスを傾けた。
この瞬間だけ、忘れたい過去が泡のように弾けたのだった。
というのも、事の顛末を語ったベイクは長老と和解し、そのいざこざに巻き込み、村の危機を救った私たちにお礼がしたいと言い出したので、断る理由もなく了承したのだった。
「セーサちゃんこれも食べてみて!森のキノコとテーグボアの燻製肉のソテーだよ」
「あ、ありがとうライナ」
「セーサちゃん!こっちのテーグ麦で作った山菜パスタの方が美味しいよ」
「へえ、美味しそうね。後で頂くわ」
私は村の少女たちに囲まれあれよあれよと、おもてなしを受けていた。
目線の先には、傀儡・・いやゼンが男衆にお酌を受けドンチャン騒ぎをしているのを眺めていた。
(あっちはあっちで楽しそうね・・。)
そんな羨望の眼差しで見ていると、少女たちが私をまじまじと見ていることに気づく。
「ど、どうしたの?」
「セーサちゃんの種族ってなんなの?」
戸惑っていた私にライナが目を輝かしてそんなことを訊ねる。
「え?えーと・・。」
私が魔族であることはベイクが話しており、村の子供たちは初めて見る魔族に興味津々といった様子であった。
「ハーフエルフ・・かな・・?」
と、お茶を濁して答えた私の言葉に少女たちの好奇心が爆発し、質問攻めに合う。
「その服はエルフの服なの?」
「普段は何を食べているの?」
「お肌のケアは?」
「彼氏はいるの?」
など、子供といっても女であるため、少しませた質問が多く、私はたじろぐ。
「何でセーサちゃんには、長い耳がないの?」
「ーーッ!?」
その質問で、表情が硬くなってしまった。
咄嗟に手を耳にやり、覆い隠してしまったことも良くなかったのだろう。
「えっとー・・。」
私はあからさまに出てしまったその表情を変えようとするが、上手く笑えず困惑する。
少女たちの間に気まずい雰囲気が流れる。
「あ、あのセーサちゃん・・。」
「おいお前たち、村を助けてくれたセンサザールさんを困らせるなよ。というか子供はもう寝る時間だぞ、ここからは大人の時間だ。お前たちはさっさと寝ろ」
冗談混じりにそう言いながら、ベイクが私と子供たちの間に入ってくる。ベイクの横には肩を組まれたゼンがいつもと変わらない無表情で連れてこられていた。
「はあ・・私ったら顔に出すぎ・・。」
少女たちは申し訳なさそうな顔をしながら親の元へ帰っていく。
私は申し訳なさと安堵から深いため息を吐いてしまう。
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「ほら、麦酒は飲めるか?」
「ベイク、気遣ってくれてありがとう。嗜む程度だけれど好きだわ」
ベイクが木樽型のジョッキを私に渡して、横に座る。その隣に傀儡が腰掛ける。
「まあ、誰だって話したくないことの一つや二つあるよな」
私が麦酒を見つめていると、ベイクがそう言い月夜を眺める。
「ベイクも隠していたしな」
私はゼンの一言に「おい!」と、慌てるベイクを見て笑みが溢れる。
「別に後ろめたい話じゃないの。ただあの子達には見せられないなと思って・・」
私はそう言い、肩まである髪を掻き分けて、耳を露出させる。
「・・・っ!?」
私の耳を見たベイクは絶句し、視線を下げた。
エルフの耳は耳介と呼ばれる外部が尖ったように張り出ているのだが、私の耳介は人と同じように丸く削られていたのだ。
「歯のようなもので喰いちぎられているな。噛み跡の凹凸が激しいから、魔物にでも襲われたのか?」
冷静に分析するゼンにシラけた顔を向けるベイク。
その二人の顔を見て私は渇いた笑いをこぼしてしまう。
「そうだったらどれほど良かったか・・。」
私は、どう話を切り出そうか悩んでいるベイクとまじまじと私の耳を見るゼンを見て、「あ~」と、言いながら伸びをする。
「別に昔のことだから気にしてないわよ。それよりもこんなしけた雰囲気じゃ麦酒が不味くなるわ!」
私のから元気を見てベイクが頭を掻いて立ち上がる。
「あ~クソッ!何て言っていいかわからないが、センサザールさんの言う通りだ。
よし!今日はぶっ倒れるまで飲んで過去のことなんて全部忘れちまおうぜ!」
ベイクが木樽型のジョッキを掲げそう宣言する。
「慰めようとして失敗したから飲むという原理がわからない」
「知るか知るか!そんな堅苦しいこと言ってないでグラスを傾けろ!ほらっ、センサザールさんも飲みましょう」
ベイクの掛け声の下、私とゼンはグラスを傾けた。
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