主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

文字の大きさ
10 / 43

第10話

しおりを挟む
ゴオズとの戦闘後、私たちはベイクと長老が提案した宴に主役として参加していた。
というのも、事の顛末を語ったベイクは長老と和解し、そのいざこざに巻き込み、村の危機を救った私たちにお礼がしたいと言い出したので、断る理由もなく了承したのだった。

「セーサちゃんこれも食べてみて!森のキノコとテーグボアの燻製肉ベーコンのソテーだよ」

「あ、ありがとうライナ」

「セーサちゃん!こっちのテーグ麦で作った山菜パスタの方が美味しいよ」

「へえ、美味しそうね。後で頂くわ」

私は村の少女たちに囲まれあれよあれよと、おもてなしを受けていた。
目線の先には、傀儡・・いやゼンが男衆にお酌を受けドンチャン騒ぎをしているのを眺めていた。

(あっちはあっちで楽しそうね・・。)

そんな羨望の眼差しで見ていると、少女たちが私をまじまじと見ていることに気づく。

「ど、どうしたの?」

「セーサちゃんの種族ってなんなの?」

戸惑っていた私にライナが目を輝かしてそんなことを訊ねる。

「え?えーと・・。」

私が魔族であることはベイクが話しており、村の子供たちは初めて見る魔族に興味津々といった様子であった。

「ハーフエルフ・・かな・・?」

と、お茶を濁して答えた私の言葉に少女たちの好奇心が爆発し、質問攻めに合う。

「その服はエルフの服なの?」

「普段は何を食べているの?」

「お肌のケアは?」

「彼氏はいるの?」

など、子供といっても女であるため、少しませた質問が多く、私はたじろぐ。

「何でセーサちゃんには、長い耳がないの?」

「ーーッ!?」

その質問で、表情が硬くなってしまった。
咄嗟に手を耳にやり、覆い隠してしまったことも良くなかったのだろう。

「えっとー・・。」

私はあからさまに出てしまったその表情を変えようとするが、上手く笑えず困惑する。
少女たちの間に気まずい雰囲気が流れる。

「あ、あのセーサちゃん・・。」

「おいお前たち、村を助けてくれたセンサザールさんを困らせるなよ。というか子供はもう寝る時間だぞ、ここからは大人の時間だ。お前たちはさっさと寝ろ」

冗談混じりにそう言いながら、ベイクが私と子供たちの間に入ってくる。ベイクの横には肩を組まれたゼンがいつもと変わらない無表情で連れてこられていた。

「はあ・・私ったら顔に出すぎ・・。」

少女たちは申し訳なさそうな顔をしながら親の元へ帰っていく。
私は申し訳なさと安堵から深いため息を吐いてしまう。


ーーーーー

「ほら、麦酒は飲めるか?」

「ベイク、気遣ってくれてありがとう。嗜む程度だけれど好きだわ」

ベイクが木樽型のジョッキを私に渡して、横に座る。その隣に傀儡が腰掛ける。

「まあ、誰だって話したくないことの一つや二つあるよな」

私が麦酒を見つめていると、ベイクがそう言い月夜を眺める。

「ベイクも隠していたしな」

私はゼンの一言に「おい!」と、慌てるベイクを見て笑みが溢れる。

「別に後ろめたい話じゃないの。ただあの子達には見せられないなと思って・・」

私はそう言い、肩まである髪を掻き分けて、耳を露出させる。

「・・・っ!?」

私の耳を見たベイクは絶句し、視線を下げた。

エルフの耳は耳介と呼ばれる外部が尖ったように張り出ているのだが、私の耳介は人と同じように丸く

「歯のようなもので喰いちぎられているな。噛み跡の凹凸が激しいから、魔物にでも襲われたのか?」

冷静に分析するゼンにシラけた顔を向けるベイク。
その二人の顔を見て私は渇いた笑いをこぼしてしまう。

「そうだったらどれほど良かったか・・。」

私は、どう話を切り出そうか悩んでいるベイクとまじまじと私の耳を見るゼンを見て、「あ~」と、言いながら伸びをする。

「別に昔のことだから気にしてないわよ。それよりもこんなしけた雰囲気じゃ麦酒が不味くなるわ!」

私のから元気を見てベイクが頭を掻いて立ち上がる。

「あ~クソッ!何て言っていいかわからないが、センサザールさんの言う通りだ。
よし!今日はぶっ倒れるまで飲んで過去のことなんて全部忘れちまおうぜ!」

ベイクが木樽型のジョッキを掲げそう宣言する。

「慰めようとして失敗したから飲むという原理がわからない」

「知るか知るか!そんな堅苦しいこと言ってないでグラスを傾けろ!ほらっ、センサザールさんも飲みましょう」

ベイクの掛け声の下、私とゼンはグラスを傾けた。
この瞬間だけ、忘れたい過去が泡のように弾けたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...